助手セバスチャン飲食店を開きたいと思っているんですが、まわりから「飲食店は儲からないぞ」って散々言われるんです。実際のところどうなんですか?



「儲からない」というより、「数字を管理しないと儲からない」という表現が正確ですね。飲食店は売上が立ちやすい反面、コストの構造が複雑で、どんぶり勘定だとあっという間に利益が消えてしまうんです。



じゃあ、どの数字を見ておけばいいんですか?



まずはFLコストという指標です。今日はここを軸に、飲食店の収益構造を数字で分解していきましょう。
飲食店の開業を考えるとき、「本当に食べていけるのか」という不安はどなたにもあると思います。実際、飲食業は開業のハードルが比較的低い一方で、廃業率が高い業種としても知られています。
とはいえ、儲かっている店が存在しないわけではありません。同じ立地・同じ業態でも、しっかり利益を残している店と赤字が続く店に分かれます。その差を生んでいるのは、料理の腕や立地だけではなく、コスト構造を数字で把握できているかどうかです。



この記事では、飲食店経営の最重要指標である「FLコスト」と「原価率」を軸に、飲食店の収益構造を分解して解説します。業態別の原価率の目安、損益分岐点の考え方、個人店の現実的な収支シミュレーションまで、具体的な数字を交えて見ていきましょう。
飲食店は本当に儲からないのか — 利益率の実態


まず結論から言うと、飲食店の営業利益率はおおむね売上の3〜8%程度というのが一般的な水準です。月商300万円の店であれば、営業利益は10万〜25万円程度ということになります。この数字だけを見ると、確かに「儲からない」という印象を受けるかもしれません。
ただし、これはあくまで平均値です。飲食業は成績のばらつきが非常に大きい業種で、営業利益率10%以上を安定して確保している個人店もあれば、売上はあるのに利益がまったく残らない店も存在します。売上規模が同じでも結果が分かれるのは、コストの配分に差があるからです。
飲食店が「儲からない」と言われる背景には、次のような構造的な理由があります。
- 食材という変動費の比率が高く、売上が伸びてもそのまま利益にならない
- 人手を要する労働集約型のビジネスで、人件費を圧縮しにくい
- 家賃・水道光熱費など、売上がゼロでも発生する固定費が重い
- 開業時の設備投資が大きく、借入金の返済が利益を圧迫する
逆に言えば、これらの数字を意識的にコントロールできれば、飲食店は十分に利益を残せる事業です。感覚ではなく指標で管理する。そのための最初の道具が、次に説明するFLコストという考え方です。
FLコストとは?飲食店の収益構造を決める最重要指標
FLコストとは、飲食店の2大コストである「Food(食材原価)」と「Labor(人件費)」を合計した金額のことです。この合計額が売上に占める割合をFL比率(FLコスト比率)と呼び、飲食店経営で最も重視される指標のひとつになっています。
計算式はシンプルです。
- FLコスト = 食材原価 + 人件費
- FL比率(%)= FLコスト ÷ 売上高 × 100
一般的な目安として、FL比率は60%以内に収めることが健全経営のラインとされています。内訳としては原価率30%・人件費率30%というバランスが基本形です。FL比率が65%を超えてくると、家賃や水道光熱費を支払った後に利益がほとんど残らない状態になりやすく、70%を超えると赤字が常態化する危険水域と考えてよいでしょう。
FLコストが重視されるのは、この2つが飲食店のコストの大半を占めるだけでなく、経営者の判断で毎月動かせるコストだからです。家賃は契約を結んだ時点で固定されてしまいますが、原価と人件費はメニュー設計・仕入れ方法・シフト編成によって日々調整できます。つまり、経営努力が最も直接的に反映される部分がFLコストなのです。
重要なのは、FL比率を「月末に集計して確認する数字」ではなく、「週単位で追いかける数字」として扱うことです。月末に60%を超えていたと気づいても、その月の結果はもう変えられません。週ごとに食材の仕入額と人件費を集計し、売上と突き合わせる習慣をつけておくと、異常があった時点で手を打てるようになります。
原価率(F)の考え方 — 業態別の目安とコントロール方法
原価率とは、売上に対する食材原価の割合です。原価率30%が一つの目安としてよく挙げられますが、これはあくまで平均的な水準であり、実際には業態によって適正値が大きく異なります。
| 業態 | 原価率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| バー・ショットバー | 20〜25%程度 | ドリンク中心で原価率が低い |
| カフェ・喫茶店 | 25〜30%程度 | ドリンクと軽食の構成比で変動 |
| 居酒屋 | 28〜33%程度 | ドリンク比率が高いほど下がる |
| ラーメン店 | 30〜35%程度 | スープ・麺の仕込みコストが影響 |
| イタリアン・洋食 | 30〜35%程度 | 食材の質を売りにすると上振れ |
| 焼肉店 | 38〜45%程度 | 食材原価は高いが客単価も高い |
| 寿司店 | 40〜50%程度 | 鮮魚の相場変動を受けやすい |
このように、焼肉店や寿司店は原価率が40%を超えることも珍しくありません。原価率が高いこと自体が問題なのではなく、原価率の高い業態では人件費率を抑える設計とセットで考える必要があるということです。焼肉店が「客が自分で焼く」スタイルで成立しているのは、調理の手間を客に委ねることで人件費を圧縮し、FL比率全体のバランスを取っているからだと考えると理解しやすいと思います。
原価率が想定より高くなる原因は、仕入れ単価そのものよりも、日々の運用にあることがほとんどです。よくあるのは次のようなケースです。
- 廃棄ロス(仕込みすぎ・食材の使い切り失敗)
- 提供量のばらつき(レシピの分量が守られていない)
- 原価率の高いメニューばかりが注文されている
- 仕入れ価格が上がったのに販売価格を据え置いている
対策として効果が大きいのは、メニュー単位ではなくメニュー構成全体で原価率を設計するという発想です。原価率の高い看板メニューを用意しつつ、ドリンクや原価率の低いサイドメニューを組み合わせて注文してもらうことで、店全体の平均原価率を目標値に収めていきます。「一品ごとに原価率30%」ではなく「店全体で30%」を目指すのがポイントです。
また、近年は食材の仕入れ価格が上昇傾向にあります。仕入れ値が変わったときは、原価率を定期的に再計算し、必要に応じて価格改定やメニュー改定を検討することが欠かせません。
あわせて読みたい:差別化を図る飲食店アイデア集|エンタメ型・体験型のヒントと関連許認可を解説
人件費率(L)の考え方 — 適正水準とシフト設計
人件費率は、売上に対する人件費の割合です。目安は30%前後で、原価率と合わせてFL比率60%以内に収まるよう調整します。人件費には従業員の給与だけでなく、社会保険料の事業主負担分・交通費・賞与なども含めて計算するのが実態に即した考え方です。
個人事業主として開業する場合、店主自身の労働をどう扱うかで数字の見え方が変わります。一般的には、事業主自身の取り分は人件費ではなく営業利益から捻出すると考えます。「自分がタダ働きすれば利益が出る」という状態は、実質的には赤字であることが多いため、開業前の事業計画では「自分の給料をいくら取るのか」を先に決めてから逆算することをおすすめします。
人件費を管理するうえで便利な指標が人時売上高(にんじうりあげだか)です。これは「売上高 ÷ 総労働時間」で計算し、従業員1人が1時間働いて生み出した売上を表します。飲食店では5,000〜6,000円程度が一つの目安とされ、この数値が低い場合は、人員が過剰か、オペレーションに無駄があるというサインになります。
なお、人件費は「削れば良い」というものではありません。過度に人員を絞ると提供スピードや接客の質が落ち、客足が遠のいて売上そのものが下がるという悪循環に陥ります。実務では、削減よりもピークタイムに人を厚く、アイドルタイムは薄くというシフト設計の最適化で対応するほうが効果的です。曜日別・時間帯別の売上データを取り、それに合わせて人を配置する仕組みを作りましょう。
また、最低賃金は近年継続して引き上げられており、2025年度の改定では全国加重平均で1,121円となりました。人件費は今後も上昇していく前提で事業計画を立てておく必要があります。当然ながら、最低賃金を下回る賃金設定は法律で禁じられています。
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
最低賃金法第4条第1項より
最低賃金額は毎年10月頃に改定され、都道府県ごとに異なります。開業予定地の最新の金額は、厚生労働省または各都道府県労働局のサイトで必ず確認してください。
FL以外に見るべきコスト — 家賃比率と損益分岐点


FLコストが管理できていても、それだけで利益が出るわけではありません。飲食店にはもう一つ重い固定費があります。それが家賃(Rent)です。
家賃比率(売上に対する家賃の割合)の目安は10%以内とされています。FLコスト60%に家賃10%を加えた指標をFLRコストと呼び、これを70%以内に収めることが利益を残すための実務的なラインです。残りの30%で水道光熱費・広告費・消耗品費・リース料・修繕費などをまかない、その残りが営業利益になります。
家賃が厄介なのは、一度契約すると簡単には変えられない点です。原価率や人件費率は運営の工夫で改善できますが、家賃比率を下げる方法は「売上を上げる」か「移転する」かしかありません。物件選びの段階で、想定売上の10%以内に家賃が収まるかを必ず検算しておきましょう。月商250万円を見込む店であれば、家賃の上限は25万円という計算になります。
もう一つ、開業前に必ず押さえておきたいのが損益分岐点売上高です。これは「利益がゼロになる売上高」、つまり最低限これだけは売らないと赤字になるというラインを示します。計算式は次のとおりです。
- 限界利益率 = 1 -(変動費 ÷ 売上高)
- 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
たとえば、固定費(家賃・正社員の人件費・リース料など)が月100万円、変動費率(食材原価+アルバイト人件費など)が40%の店の場合、限界利益率は60%です。損益分岐点売上高は「100万円 ÷ 0.6 = 約167万円」となります。この店は月商167万円を超えて初めて利益が出るということです。
この数字を把握していると、日々の判断が具体的になります。営業日数が25日なら1日あたり約6.7万円、客単価3,000円なら1日22〜23人が損益分岐点です。「今日は何人来れば黒字か」が言えるようになると、集客施策の優先順位も自然と決まってきます。
収支シミュレーション — 個人経営の飲食店の現実的な数字
ここでは、個人事業主が経営する小規模飲食店を想定して、2つのケースで収支を試算します。いずれも借入を伴う開業を前提とし、店主自身の給与は人件費に含めず、営業利益が事業主の取り分として計算しています。
ケース①:10坪・月商250万円(開業初期の個人店)
カウンター中心の小規模店で、店主+アルバイト数名で回しているモデルです。
| 項目 | 金額(月) | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,500,000円 | 100% |
| 食材原価(F) | ▲ 800,000円 | 32% |
| 人件費(L・アルバイト分) | ▲ 750,000円 | 30% |
| 家賃(R) | ▲ 250,000円 | 10% |
| 水道光熱費 | ▲ 175,000円 | 7% |
| その他経費(消耗品・広告・通信・リース等) | ▲ 250,000円 | 10% |
| 営業利益(月) | 275,000円 | 11% |
| 年間営業利益(概算) | 約330万円 | — |
| 税・社会保険等を差し引いた手取り(概算) | 年間250〜280万円程度 | — |
FL比率は62%とやや高めですが、家賃比率が10%に収まっているため利益は残っています。ただし、ここから借入金の元金返済(仮に月10万円)が出ていくため、手元に残る現金は月17万円程度です。開業初期はこの水準からスタートし、まずは損益分岐点を確実に超え続けることを目標にする段階と言えます。
ケース②:20坪・月商500万円(軌道に乗った状態)
席数を確保し、社員1名+アルバイト複数名の体制で運営しているモデルです。
| 項目 | 金額(月) | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,000,000円 | 100% |
| 食材原価(F) | ▲ 1,500,000円 | 30% |
| 人件費(L・社員+アルバイト) | ▲ 1,650,000円 | 33% |
| 家賃(R) | ▲ 450,000円 | 9% |
| 水道光熱費 | ▲ 350,000円 | 7% |
| その他経費(消耗品・広告・通信・リース等) | ▲ 450,000円 | 9% |
| 営業利益(月) | 600,000円 | 12% |
| 年間営業利益(概算) | 約720万円 | — |
| 税・社会保険等を差し引いた手取り(概算) | 年間480〜540万円程度 | — |
FL比率は63%とケース①より高いものの、売上が2倍になったことで家賃・水道光熱費といった固定費の比率が相対的に下がり、営業利益率は12%まで改善しています。固定費は売上が伸びるほど比率が下がるという飲食店の特性がよく表れているケースです。
2つのケースを比べると分かるのは、利益を伸ばす道筋が「コストを削る」だけではないということです。FL比率をおおむね60%前後に保ったまま売上を積み上げれば、固定費の比率が下がり、利益率そのものが改善していきます。飲食店で「儲かる店」とは、原価を極限まで削った店ではなく、適正なFL比率を保ちながら客数と客単価を伸ばせた店なのです。
利益を残している飲食店がやっていること
数字を管理できている店には、いくつか共通する実務上の習慣があります。
日次・週次で数字を締める
月次の試算表を見るのは、税理士から届く翌月以降になりがちです。それでは対策が2か月遅れてしまいます。利益を残している店は、日々の売上・仕入額・労働時間を最低でも週単位で集計し、FL比率をリアルタイムに近い形で把握しています。POSレジやクラウド会計の導入で、この作業はかなり省力化できます。
客単価を上げる設計を持っている
客数を増やすには集客コストがかかりますが、客単価を上げる施策は既存の来店客に対して行えるため、コスト効率が優れています。原価率の低いドリンクやデザートの提案、セットメニューの設計、コース化などが代表的な手法です。客単価が10%上がれば、コストがほぼ変わらないまま利益が大きく伸びます。
リピーターを収益の柱にする
新規客の獲得コストは、既存客の維持コストの数倍かかると言われます。飲食店の経営が安定するかどうかは、月に何回来てくれる常連客を何人抱えているかにかかっていると言っても過言ではありません。公式SNSやLINEでの継続的な発信、来店回数に応じた特典など、再来店の仕組みを開業初期から用意しておきましょう。
開業前の資金計画に余裕を持たせる
開業直後から計画どおりの売上が立つことは、実際にはほとんどありません。軌道に乗るまでの数か月を耐えられるだけの運転資金(最低でも3〜6か月分の固定費)を確保しておくことが、廃業を避ける最も現実的な備えです。日本政策金融公庫の創業融資や、自治体の制度融資も選択肢に入れて検討しましょう。
あわせて読みたい:飲食店が気にすべき景品表示法の規制とは?よくある違反例と対策を解説
まとめ:飲食店は「数字を管理できる人」が儲かる
飲食店の収益構造を一言でまとめるなら、「儲からない業種ではなく、数字を管理しないと儲からない業種」です。営業利益率の平均は3〜8%程度と決して高くありませんが、FL比率60%・家賃比率10%というラインを守り、売上を積み上げていけば、営業利益率10%以上も十分に狙える事業です。
押さえるべき指標を改めて整理します。
- FL比率60%以内(原価率30%+人件費率30%が基本形)
- FLRコスト70%以内(家賃比率は10%以内に)
- 損益分岐点売上高を把握し、1日あたりの必要客数まで落とし込む
- 原価率は業態によって適正値が異なる。店全体の平均で管理する



なるほど…!「原価率30%・人件費率30%・家賃10%」を守れば、ちゃんと利益が残るんですね。呪文みたいに覚えておきます。



そうですね。ただ、この数字は月末に確認するのでは遅いんです。週単位で追いかけて、ずれていたらすぐ手を打つ。それができる店が生き残ります。



分かりました!じゃあ僕は原価率を10%まで下げて、利益率50%の飲食店を目指します!



……原価率10%の料理、一体どんなものが出てくるんでしょう?









の開業に必要な許認可は?許可・届出のポイントを解説-300x150.png)