助手セバスチャン飲食店を開業するにあたってメニューの写真や食材の説明文ってすごく大事じゃないですか。おいしそうに見せたいんですけど、どこまでやっていいんですかね?



実はそこに「景品表示法」が関わってくるんです。メニューの写真や説明文が実態と大きく違う場合は、消費者庁から措置命令を受けたり、課徴金を課されたりするリスクがありますよ。



えっ、メニュー写真を綺麗に撮っただけで法律に引っかかるんですか?



「綺麗に見せる」ことと「実態より著しく良く見せる」ことは違います。その線引きが景品表示法のポイントです。詳しく見ていきましょう。
飲食店の集客は、グルメサイトの写真、SNS投稿、店頭メニューのビジュアルに大きく左右されます。料理をおいしそうに撮影したり、食材のこだわりを説明したりすることは当然の営業活動です。しかし、その表現が「実態と著しく異なる」と判断されると、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の違反となります。
景品表示法は、飲食業においても例外ではありません。むしろメニュー表示・食材表示・価格表示など、飲食店が日常的に行っている情報発信のほぼすべてが対象となります。「うちは小さなカフェだから関係ない」という認識は危険です。
この記事では、飲食店経営者・開業準備中の方が特に気をつけるべき景品表示法の規制内容を、具体的な違反例と実務的な対策を交えてわかりやすく解説します。
景品表示法とは?飲食業とどう関係するか
景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は昭和37年に制定された消費者保護を目的とした法律です。正式名称は長いですが、実務では「景表法(けいひょうほう)」と略されることもあります。所管は消費者庁で、都道府県も一部の権限を持っています。
この法律が規制するのは大きく2つです。
- 不当な景品類(景品規制): スタンプカード特典・ノベルティ・食事券など、商品・サービスに付ける「おまけ」の上限額を定める規制
- 不当な表示(表示規制): 商品・サービスの内容や価格について、消費者が誤解するような表示を禁止する規制
飲食業の場合、グルメサイト(食べログ・ホットペッパー・Googleマップ等)の掲載ページ、店内メニュー、チラシ、SNS投稿、公式ウェブサイトのすべてが「表示」として規制の対象になります。特にグルメサイトは多くの消費者が閲覧し購買行動に直結するため、消費者庁も注視している分野です。
また、2023年10月からはステルスマーケティング(ステマ) も景品表示法の規制対象として新たに指定されました。インフルエンサーや口コミ投稿者に報酬を支払って書いてもらった体験レポートや口コミに「PR」「広告」と明示していない場合、不当表示として問題になります。グルメインフルエンサーへの無償食事提供も、投稿内容に関与している場合はステマ規制の対象となりえます。
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
不当景品類及び不当表示防止法 第5条第1項より
飲食業で問題になる不当表示の3つの類型
景品表示法が禁止する「不当表示」は、大きく3つの類型に分かれます。それぞれ飲食業の文脈で見ていきましょう。
①優良誤認表示(5条1項1号)
「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質・内容について、実際のものよりも著しく優良であると誤解させる表示のことです。
飲食業で問題になりやすいのは、食材の品質・産地・調理方法に関する表示です。たとえば「国産黒毛和牛使用」と書いているのに実際は輸入牛を使っている、「天然物のマグロ」と書いているのに養殖物を提供している、「手打ち麺」と書いているのに市販の麺を使っているといったケースが優良誤認表示に該当します。
重要なのは「著しく」という基準です。消費者が表示を見て「このような料理・食材である」と信じてしまう程度の乖離があれば、優良誤認表示と判断されるリスクがあります。また、景品表示法には「不実証広告規制」という仕組みがあり、消費者庁が合理的な根拠を示すよう求めた場合、事業者は15日以内にその根拠となる資料を提出しなければなりません。仕入れ伝票や取引先との契約書など、表示の根拠となる書類は保存しておくことが重要です。
②有利誤認表示(5条1項2号)
「有利誤認表示」とは、価格その他の取引条件について、実際よりも著しく有利であると消費者に誤認させる表示です。
飲食業でよくあるのが「二重価格表示」の問題です。「通常価格1,500円のところ今月限定980円!」のような表示において、その「通常価格」が実際に販売されていた実績のない価格であれば、有利誤認表示に該当します。消費者庁のガイドラインでは、比較対象の価格は「当該価格で販売されていた期間が、比較対照価格として表示する直前の8週間のうち過半(4週間以上)を占めている場合」という目安が示されています。
また、税抜き価格を大きく表示して税込み価格を小さく記載するケース、「〇〇円引きクーポン」の適用条件が分かりにくい表示なども、有利誤認表示のリスクがあります。
③おとり広告・ステマ規制(5条1項3号)
内閣総理大臣(現在は消費者庁長官に権限委任)が指定する「おとり広告」も問題になります。飲食業では、実際には提供できない料理や売り切れている限定メニューを広告に掲載し続けるケースが該当しえます。グルメサイトに「本日のおすすめ」として掲載しているメニューが実際には提供していない場合も同様です。
また前述のとおり、ステマ規制によりインフルエンサーへの報酬提供や、口コミサイトの点数操作に関与した場合も不当表示となります。「口コミを書いてくれたら次回ドリンク無料」といったキャンペーンも、表示方法次第では問題になりえます。
メニュー・広告でよくある「アウト」な表示例
では、実際の飲食業の広告・メニューで問題になりやすい表示を具体的に見ていきましょう。
写真・画像と実際の料理の乖離
飲食店のメニュー写真や広告画像は、料理をおいしそうに見せるための工夫が凝らされています。しかし「魅力的な撮影」と「実態との著しい乖離」の間には明確な線引きがあります。
問題になりやすいのは以下のようなケースです。
- 写真では具材がたっぷり盛られているが、実際の料理は具がほとんど入っていない
- 写真では大きなエビが乗っているが、実際のエビは写真の半分以下のサイズ
- 写真ではソースがたっぷりかかっているが、実際はほとんどかかっていない
- グランドメニューの写真は「特別盛り」で撮影されており、通常提供量とかけ離れている
「写真はイメージです」という一文を添えれば免責されると思われがちですが、そのような注記があっても、実態と著しく異なれば不当表示とみなされる場合があります。この注記は「完全な免責」ではなく「若干の演出の許容」にすぎません。実際の料理と大きくかけ離れた写真を使い続けることは景品表示法上のリスクとなります。
食材の産地・品質表示
食材に関する表示は、飲食業で特に問題になりやすい領域です。景品表示法に加えて食品表示法違反にもなりえるため、二重のリスクがある点を意識してください。
よくある問題事例を挙げると、「国産牛使用」と掲げているのに仕入れの都合で外国産牛を使っている日がある、「地元野菜を使ったサラダ」と書いているのに実際は産地不明の野菜を使っている、「朝採れ新鮮野菜」と表記しているのに仕入れから数日経過したものを提供しているといったケースです。また「オーガニック野菜使用」「無農薬食材使用」といった表示も、裏付けのある認証や記録がなければ優良誤認表示とみなされます。
仕入れ先の変更や季節によって食材が変わる場合は、「〇〇産(一部他産地使用の場合あり)」のように実態に即した補足表示を行うか、特定の食材表示をしないことが安全な対応です。
「ジュース」と表示できる基準
飲み物のメニュー表示で見落とされがちなのが、「ジュース」という名称の使い方です。景品表示法が指定する不当表示のひとつに「無果汁の清涼飲料水等についての表示」があり、果汁飲料の表示に関する明確なルールが定められています。
結論から言うと、「ジュース」という名称を単独で使用できるのは果汁100%の飲料のみです。果汁が100%未満の場合は「ジュース」とだけ表示することはできません。
具体的なルールは以下のとおりです。
- 果汁100%: 「○○ジュース」と表示できる(例:「オレンジジュース」)
- 果汁10%以上100%未満: 「○○果汁入り飲料」「○○ドリンク」等の表示が必要。「ジュース」は使えない
- 果汁5%以上10%未満: 「○○果汁(○%)入り清涼飲料水」等の表示が必要
- 果汁5%未満または無果汁: 果物を連想させる名称の使用自体が制限される
飲食店のドリンクメニューで「手作りオレンジジュース」「季節のフルーツジュース」と書いている場合でも、果汁割合が100%でなければ「ジュース」の名称は使えません。「フレッシュオレンジドリンク」「フルーツミックス」のような表現に変更する必要があります。市販の希釈タイプのシロップをソーダで割って提供する場合も同様です。ドリンクメニューを一度見直してみましょう。
受賞歴・ランキング表示
「食べログ○○点獲得」「ミシュランガイド掲載」「ラーメン部門ランキング1位」といった受賞・評価の表示も、景品表示法上の問題が生じることがあります。
問題になるのは主に以下のケースです。
- 受賞・掲載が過去のもので、現在も継続しているかのように表示している
- 受賞した部門や対象が実際とは異なる(「全国1位」と書いているが実際は特定エリア内での順位)
- 自社でアンケートを実施して「顧客満足度No.1」と表示しているが、調査方法・対象が不明確
表彰・受賞に関する表示を使う場合は、受賞年・受賞部門・受賞主体を明確に記載し、古くなった表示は適時削除することが必要です。
景品規制:スタンプカード・ノベルティ・食事券のルール
飲食店では「スタンプカード」「ノベルティプレゼント」「SNSシェアで割引」「来店者全員に粗品」など、さまざまな集客施策が行われます。これらは景品表示法の「景品規制」の対象となります。
景品規制は「景品類の最高額・総額を超えてはいけない」というルールです。景品の種類によって上限額が異なります。
| 景品の種類 | 概要 | 最高額の上限 | 総額の上限 |
|---|---|---|---|
| 総付景品 (もれなく全員に) | 来店客全員に配布するノベルティ・粗品など | 取引価格の20% (取引価格が1,000円未満は200円) | 制限なし |
| 一般懸賞 (抽選など) | 抽選・クイズ等で選ばれた客に提供 | 取引価格の20倍 (最高10万円) | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 商店街・複数店舗が共同で実施する懸賞 | 30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
たとえば、1,000円のランチを注食した全員に粗品(総付景品)をプレゼントする場合、景品の上限額は1,000円×20%=200円となります。これを超える景品を提供すると景品表示法違反となります。
スタンプカードについては、「○個たまると無料」という仕組みは「値引き」として景品規制の対象外になるケースもありますが、「○個たまるとプレゼント」「特製グッズと交換」という場合は景品として上限規制がかかります。SNSシェアキャンペーンも、シェアと引き換えに特典を提供する場合は景品として取り扱われます。
なお、「自社の飲食店で使える割引券やドリンク券」など、自社サービスの利用促進を目的としたものは景品類に該当しないケースもあります。判断に迷う場合は、消費者庁のガイドラインや専門家に確認することをおすすめします。
根拠法令:不当景品類及び不当表示防止法
違反した場合はどうなるか(措置命令・課徴金)
景品表示法に違反した場合のペナルティは、2015年の法改正で大幅に強化されました。大きく「措置命令」と「課徴金」の2つがあります。
措置命令
消費者庁または都道府県は、不当表示や景品規制違反が認められた場合、事業者に対して「措置命令」を行うことができます。措置命令では主に以下の内容が命じられます。
- 違反行為の差止め(問題のある表示の修正・削除)
- 一般消費者への周知(自社ウェブサイトや店頭での告知など)
- 再発防止措置の実施と社内への周知徹底
措置命令が出ると、消費者庁のウェブサイトに事業者名・店舗名・違反内容が公表されます。飲食業において「景品表示法違反」として名前が公表されることは、グルメサイトのレビューや口コミへの影響、常連客の信頼喪失など、長期的なダメージにつながりかねません。
課徴金制度
2015年の景品表示法改正で「課徴金制度」が導入されました。不当表示により一般消費者に不当な不利益を与えた場合、対象期間の売上額の3%相当の課徴金を納付しなければなりません。
課徴金の算定対象は「当該表示を開始した日から、その表示が終了した日までの期間」に得た売上高です。課徴金額が150万円未満(売上高5,000万円未満に相当)の場合は免除されますが、チェーン展開している飲食業者では多額になる可能性があります。なお、事業者が自主的に被害消費者に対して返金措置をとった場合は、その金額分を課徴金から減額できる制度もあります。
また、措置命令に従わなかった場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)という刑事罰も定められています。
まとめ:飲食店が実践すべき表示チェックリスト
景品表示法は、飲食店にとって「許可が必要な法律」ではなく「日々のメニューや広告表示が適法かどうかを問われる法律」です。開業時だけでなく、仕入れ先の変更・メニュー改定・キャンペーン実施のたびに表示内容を見直す習慣が必要です。
飲食店として実践したい対策をまとめると、以下のようになります。
- グルメサイトや店内メニューの写真が、現在実際に提供している料理の量・見た目と大きく乖離していないか定期的に確認する
- 食材の産地・品質表示(「国産」「天然物」「地元産」等)は、実際の仕入れ伝票と照合して裏付けのある記載のみ使用する
- ドリンクメニューで「ジュース」と表示する場合は、果汁100%のものに限定する
- 「通常価格○円→今だけ○円」の二重価格表示は、比較対象となる価格の販売実績を記録・保存したうえで使用する
- スタンプカード・ノベルティ・キャンペーンは、景品規制の上限額を事前に確認する
- インフルエンサーや口コミ投稿者に報酬(無償食事含む)を提供して投稿を依頼する場合は、必ず「PR」「広告」と明示する
- 受賞・ランキング表示は受賞年・部門・対象範囲を明記し、古くなったものは削除する
景品表示法に違反した場合、措置命令や課徴金に加えて消費者庁のウェブサイトでの事業者名公表というリスクがあります。 適法な表示を守ることは、集客力の維持と顧客からの信頼につながります。開業前・メニュー改定時・キャンペーン実施前には、この記事を参考に表示内容を一度点検してみましょう。



なるほど!「写真はイメージです」って書いてあれば何でも大丈夫だと思ってましたが、実態と著しく違ったらアウトなんですね。あとジュースって果汁100%じゃないと名乗れないのも知りませんでした。



そうなんです。「イメージです」の一文は免責になりません。それと「ジュース」の表示ルールは意外と知らない飲食店経営者が多い部分なので、ドリンクメニューを一度見直してみてください。



わかりました!ちなみに「セバスチャンの手作りジュース」ってメニュー名は大丈夫ですか?果汁は0%なんですが。



それはジュースどころか、何が入っているのか先に説明してもらう必要がありますね。


