キッチンカー開業に必要な許可とは?手続きの流れを行政書士が解説

助手セバスチャン

最近よくイベント会場やオフィス街でキッチンカーを見かけるんですが、ああいうのって車さえ買えば誰でも始められるんですか?

行政書士けいしー

いい質問ですね。車両を用意すれば、というイメージを持つ方は多いのですが、実際にはお店と同じように保健所の営業許可が必要です。しかもキッチンカーならではの注意点もいくつかありますよ。

助手セバスチャン

えっ、移動するお店でも普通の飲食店と同じ許可がいるんですか?

行政書士けいしー

はい。むしろ「移動する」「水道や調理スペースが限られる」という特性があるぶん、店舗型とは違うルールが加わります。営業できる区域や、作れるメニューにも制限があるんです。

近年、初期費用を抑えて飲食ビジネスを始められる手段として、キッチンカー(移動販売)が大きな注目を集めています。店舗を借りるよりも開業コストが低く、イベントやオフィス街、商業施設の催事スペースなど、人が集まる場所に自ら出向いて販売できる柔軟さが魅力です。コロナ禍以降、テイクアウト需要の高まりとともに参入する方も増えました。

しかし、「車を改造して食べ物を売るだけ」と気軽に考えていると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。キッチンカーでの飲食物の販売は、店舗型の飲食店と同じく食品衛生法に基づく営業許可が必要であり、車両の設備や提供できるメニューについても細かな基準が定められているからです。

行政書士けいしー

この記事では、これからキッチンカーで開業しようと考えている方に向けて、必要な許認可と手続きの流れを整理して解説します。

目次

キッチンカー開業に必要な「営業許可」とは

まず結論から言うと、キッチンカーで調理した飲食物を販売するには、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。これは固定店舗の飲食店と同じく、食中毒などの健康被害を防ぐために、施設(この場合は車両)が衛生基準を満たしているかを保健所が確認する制度です。

キッチンカーの営業許可は、正式には「飲食店営業(自動車)」などの区分で扱われます。2021年(令和3年)6月の食品衛生法改正により営業許可の業種区分が再編され、移動販売についても従来の取り扱いが整理されました。重要なのは、店舗型の許可とは別に、移動販売車という「施設」に対して個別に許可を取得しなければならないという点です。

営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。

食品衛生法第55条(営業の許可)より抜粋

条文上は「営業を営もうとする者」とされており、店舗か車両かを問わず、飲食物を調理・提供して販売する以上は許可が前提になります。

ここで多くの方が誤解しがちなのが、「自宅のキッチンで作った料理を車で運んで売ればいい」という考え方です。これは原則として認められません。販売する飲食物は、許可を受けた施設(キッチンカーの車内、または許可を受けた仕込み場所)で調理する必要があります。一般家庭の台所は営業許可施設には当たらないため、ここで仕込んだものをそのまま販売することはできない点に注意が必要です。

保健所の営業許可を取るための3つのポイント

キッチンカーの営業許可を取得するうえで、特に押さえておきたいのが「車両の設備基準」「営業区域ごとの申請」「食品衛生責任者の設置」の3点です。順番に見ていきましょう。

① 車両(移動販売車)の構造・設備基準を満たす

キッチンカーは、保健所が定める構造設備基準を満たさなければ許可が下りません。具体的な基準は自治体によって細部が異なりますが、共通して求められるのは、調理に使う給水タンクと排水タンクの設置、手洗い・器具洗浄ができる設備、食材を清潔に保管できるスペースなどです。

特に給水タンクの容量は、提供するメニューの内容によって「40リットル」「80リットル」「200リットル」といった区分が設けられている自治体が多く、扱えるメニューの幅と直結します。容量が大きいほど複雑な調理が認められる傾向にあるため、どんなメニューを出したいかを先に決めてから車両を設計することが重要です。車両が完成してから基準を満たしていないと分かると、改修に余計なコストがかかってしまいます。

② 営業したい区域(管轄保健所)ごとに申請する

キッチンカーの営業許可は、営業しようとする地域を管轄する保健所ごとに取得するのが原則です。これが店舗型と最も大きく異なる点です。例えば、A市で許可を取っても、その許可は隣のB県では原則として通用しません。複数のエリアにまたがって出店したい場合は、それぞれの管轄保健所で許可を取る必要があります。

近年は同一都道府県内であれば広域的に営業できるよう運用を整理している自治体も増えていますが、都道府県をまたぐ場合は別途許可が必要になるのが一般的です。出店を計画しているエリアが複数ある場合は、事前に各自治体の保健所へ確認し、必要な許可を漏れなく取得しておきましょう。

③ 食品衛生責任者を設置する

すべての飲食店営業と同様に、キッチンカーにも食品衛生責任者を1名置く必要があります。これは衛生管理の責任者となる人で、調理師や栄養士などの資格を持っていればそのまま該当しますが、資格がない場合でも各都道府県が実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講すれば資格を得られます。

講習は1日(6時間程度)で修了でき、受講料も1万円前後と比較的取得しやすいものです。開業者本人が取得するケースが多いですが、講習には予約が必要で、時期によっては数週間先まで埋まっていることもあります。許可申請の際に必要となるため、開業準備の早い段階で受講を済ませておくことをお勧めします。

提供メニューによって許可の範囲が変わる

キッチンカーで見落とされがちなのが、「どんなメニューでも自由に作れるわけではない」という点です。前述のとおり、車両の設備(特に給水タンクの容量)に応じて、認められる調理行為の範囲が変わります。

例えば、給水タンクが小容量(40リットル程度)の場合、簡単な盛り付けや温め直しといった「単純な調理」しか認められないことがあります。クレープやたこ焼きのように車内で本格的に調理するメニューを扱うには、より大きな容量の設備や、品目に応じた追加の設備が求められるケースもあります。

また、キッチンカーでは車内でできる調理工程に制限があるため、食材の下処理(仕込み)を別の場所で行うことが一般的です。この仕込み場所も、原則として営業許可を受けた施設である必要があります。自前の仕込み場所を持てない場合は、許可を取得済みのシェアキッチンやセントラルキッチンを利用する方法もあります。

提供するメニューによっては、飲食店営業許可だけでなく別の許可が必要になる場合もあります。例えば、その場で食べてもらうのではなく、製造したパンや菓子をパッケージして販売する場合は「菓子製造業」など別区分の許可が関わることがあります。何をどう売りたいのかによって必要な手続きが変わるため、メニュー構成は早めに固め、管轄保健所に相談しておくと安心です。

車両以外に必要な手続き・届出

キッチンカーの開業は、保健所の営業許可だけで完結するわけではありません。営業のスタイルによっては、いくつかの手続きや届出が追加で必要になります。

まず、個人で事業を始める場合は税務署への開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出が必要です。これは飲食業に限らず事業を始める人に共通する手続きで、青色申告による節税メリットを受けるには「青色申告承認申請書」も併せて提出しておくとよいでしょう。

次に、出店場所に関する手続きです。公道上にキッチンカーを停めて営業する場合は、警察署への道路使用許可が必要になることがあります。ただし実務上は、公道での無断営業はトラブルになりやすいため、イベント主催者や商業施設、私有地のオーナーなどと出店契約を結び、許可された場所で営業するのが一般的です。この場合は、出店場所の管理者から使用の許可を得ることが前提になります。

さらに、扱う商品によっては追加の許可が関わります。代表的なのが酒類の提供です。お酒を「開栓してその場で飲んでもらう」のは飲食店営業の範囲ですが、缶やボトルのまま「未開栓で販売する」場合は酒税法に基づく酒類販売業免許が必要になります。キッチンカーでアルコールを扱いたい場合は、提供方法によって必要な許可が変わる点を理解しておきましょう。

キッチンカー開業までの流れ(STEP)

最後に、キッチンカー開業までの一般的な流れを整理します。準備の順序を誤ると、車両の作り直しや申請のやり直しといった無駄が生じやすいため、全体像を把握してから動き出すことが大切です。

STEP1:コンセプトとメニューを決める どんな料理を、どこで、誰に売るのかを固めます。メニューによって必要な設備や許可区分が変わるため、最初に決めておくべき最重要事項です。

STEP2:管轄保健所へ事前相談する 出店予定エリアの保健所に、メニュー内容と車両プランを持って相談します。この段階で設備基準や必要な許可を確認しておくと、後の手戻りを防げます。

STEP3:食品衛生責任者の資格を取得する 講習会を予約・受講します。予約が埋まりやすいため、早めの行動が肝心です。

STEP4:車両を製作・改造する 保健所の基準を満たすように給水・排水設備や調理スペースを整えます。専門の製作業者に依頼するか、基準を理解したうえで自作します。

STEP5:営業許可を申請し、検査を受ける 必要書類を揃えて保健所に申請し、車両の現地検査を受けます。基準を満たしていれば許可証が交付されます。

STEP6:出店場所を確保して営業開始 イベントや商業施設、私有地などの出店先と契約し、開業届を提出して営業を始めます。

この流れのなかで特に時間がかかるのが、車両製作と各種許可の取得です。逆算してスケジュールを組み、余裕を持って準備を進めましょう。

まとめ

キッチンカーは、店舗型に比べて低コストで始められる魅力的な事業ですが、「車で食べ物を売る」という行為には、店舗と変わらない衛生上の責任が伴います。改めて要点を整理すると、開業には食品衛生法に基づく営業許可が必須であり、その取得には①車両の設備基準を満たすこと、②営業したい区域ごとに申請すること、③食品衛生責任者を設置すること、という3つのポイントを押さえる必要があります。

加えて、提供するメニューによって認められる調理の範囲や必要な許可が変わること、車両以外にも開業届や出店場所の使用許可、酒類を扱う場合の免許など、付随する手続きがある点も忘れてはなりません。

※なお、営業許可を受けずに飲食物の調理・販売を行うことは食品衛生法違反であり、罰則の対象となります。これは努力義務ではなく、開業の大前提となる法的義務です。

許認可の手続きは一見複雑に思えるかもしれませんが、順序立てて準備すれば決して乗り越えられないものではありません。まずは出店予定エリアの保健所に相談することから、第一歩を踏み出してみましょう。

助手セバスチャン

なるほど…キッチンカーって、車を用意するだけじゃなくて、お店と同じように保健所の許可がいるんですね。しかも営業する場所ごとに許可を取らないといけないとは知りませんでした。

行政書士けいしー

そうなんです。特に区域ごとの許可と、給水タンクの容量でメニューが決まる点は、後から気づくと作り直しになってしまうので要注意ですね。最初に保健所へ相談しておくのが結局いちばんの近道です。

助手セバスチャン

よし、僕も自慢の手料理でキッチンカーを始めようかな!まずは家のキッチンで仕込んで…あれ、それはダメって言ってましたっけ?

行政書士けいしー

ばっちりダメですね。今日いちばん大事なところを聞いていなかったみたいです。

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