助手セバスチャン実家の裏に使っていない土地があるんです。そこでグランピングをやったら、1泊3万円くらい取れますよね?かなり儲かるのでは!



単価が高いのは事実ですね。ただ、1年のうち何日埋まるかは考えてみましたか?



えっと…みなさん自然が好きですから、毎日満室では?



グランピングは天候の影響を強く受けます。真冬や梅雨時期は予約が入りにくい。単価が高い分、稼働率の低さをどう補うかが勝負になるんです。今日は実際に数字を置いて試算してみましょう。
遊休地や山林の活用先として、グランピングは有力な選択肢の一つです。宿泊単価が高く、大がかりな建築工事を伴わずに始められるという点で、他の観光施設より参入しやすい印象を持たれています。
しかし、実際に事業として成り立たせるには相応の投資が必要です。ドームテントを並べれば開業できるわけではなく、上下水道や浄化槽、電気の引込み、駐車場といったインフラ整備に大きな費用がかかります。そして最大の変数が、天候と季節に左右される稼働率です。



この記事では、5棟規模のグランピング施設をモデルに、初期投資から年間の損益、そして投資回収期間までを試算してみます。
※なお、以下の数字はあくまでモデルケースであり、立地や仕様によって大きく変わる点はご了承ください。
グランピングの収益構造—「1棟あたりいくら稼げるか」で考える


グランピングの年間売上は棟数×365日×稼働率×1棟あたりの単価という式で決まります。ホテルの客室と考え方は同じですが、決定的な違いが2つあります。
第一に、棟単位で販売すること。ホテルは1室あたりの単価で考えますが、グランピングは1棟を丸ごと貸し出します。4名定員の棟であれば、2名で泊まっても4名で泊まっても、棟としての売上は大きくは変わりません。1泊2食付きの相場は1人あたり2万円から4万円ほどですから、4名利用なら1棟で10万円前後の売上になることもあります。客単価の高さが最大の強みです。
第二に、稼働率が上がりにくいこと。これが弱みです。グランピングは自然環境のなかで過ごすことに価値がある業態ですから、雨、雪、寒さ、暑さのいずれにも弱いという性質があります。宿泊業全体の閑散期である1〜2月や6月は、グランピングではさらに厳しくなります。週末に予約が集中し、平日が埋まらないという偏りも生じます。
この2つを合わせると、グランピングの収益構造は「高い単価×低い稼働率」という形になります。ビジネスホテルのように年間70%以上の稼働を前提にはできません。年間30〜40%程度を現実的な出発点として計画を組むべきでしょう。
ここから導かれる実務的な示唆は明確です。単価を上げる工夫よりも、埋まらない日をどう減らすかのほうが、収益への影響が大きいということです。平日利用の需要、冬季の過ごし方、雨天時の代替プログラム。これらを事業計画の段階で考えておく必要があります。
初期投資はいくらかかるのか
グランピングの初期投資は、テントの価格だけを見ていると大きく見誤ります。主な費目を整理すると次のとおりです。
| 費目 | 金額の目安 |
|---|---|
| ドームテント本体(設備なし) | 1棟200万円前後〜 |
| ドームテント(通年運用仕様・空調等含む) | 1棟700万円以上 |
| 各棟のデッキ・BBQスペース・専用サニタリー | 1棟あたり100万〜200万円 |
| 管理棟(受付・シャワー・トイレ) | 1,000万円前後 |
| インフラ整備(上下水道・浄化槽・電気引込み・造成) | 1,000万〜2,000万円 |
| 駐車場・外構・植栽 | 300万円〜 |
※立地条件、特に上下水道の引込み距離によって大きく変動します。
見落とされやすいのがインフラ整備費です。ドームテント自体は移動できる構造物ですが、そこに水を引き、電気を通し、排水を処理する設備は土木工事になります。上下水道の本管から離れた土地ほど費用がかさみ、下水道が来ていない地域では浄化槽の設置が必要です。「土地はタダ同然だったのに、インフラで2,000万円かかった」という話は珍しくありません。
5棟規模の施設で試算すると、総額はおおむね3,000万円から8,000万円のレンジに収まります。仕様をどこまで上げるかで倍以上の差が生じますので、先に想定単価を決め、そこから逆算して投資額の上限を決めるという順序が重要です。
許認可にかかるコストと期間も見込んでおく
初期投資を考えるうえで、許認可の存在も忘れてはいけません。グランピング施設は、宿泊料を受けて人を宿泊させる以上、旅館業法上の許可(多くの場合は簡易宿所営業)が必要になります。テントであっても、継続的に設置され宿泊に供される以上、宿泊施設としての基準を満たす必要があります。
さらに、事業内容や土地の条件によって次の手続きが加わります。
- 食事を調理して提供する場合は、飲食店営業許可
- 市街化調整区域や一定規模以上の土地の造成を伴う場合は、都市計画法の開発許可
- 農地を転用する場合は、農地法の転用許可
- 山林を開発する場合は、森林法にもとづく林地開発の手続き
これらは費用だけでなく期間にも影響します。特に開発許可や農地転用は、申請から許可まで数か月を要することがあります。土地の条件は、投資額と同じくらい事業のスケジュールを左右すると考えてください。
あわせて読みたい:旅館業(簡易宿所営業)の許可要件は?構造設備基準と衛生措置基準を解説
ランニングコストの内訳
開業後にかかる主な費用は次のとおりです。グランピングは飲食提供を伴うことが多く、その分だけ宿泊特化型より費目が増えます。
- 人件費:受付、清掃、食事の準備と片付け、施設のメンテナンス。売上の25〜40%程度を占めます。食事提供の有無で大きく変わる部分です
- 食材費:1泊2食付きのプランを提供する場合に発生します。売上に対しておおむね10%前後
- OTA・予約サイト手数料:売上の10%前後
- リネン費:1人あたり1,000円程度が目安
- 水道光熱費:売上の5〜6%程度。空調を効かせる季節は跳ね上がります
- 土地の賃借料:借地の場合に発生
- 販売促進費・広告費:売上の5〜10%。認知度が生命線の業態なので削りにくい費目です
- 修繕費・消耗品費・保険料:屋外設備が多いため、修繕は継続的に発生します
ここで注目したいのは、変動費の比率が高いという点です。食材費、OTA手数料、リネン費、光熱費はいずれも稼働に比例して増えます。裏を返せば、お客様が来ない日のコストは比較的小さいということです。この性質が、次に見る損益分岐点の低さにつながります。
収益シミュレーション|5棟のグランピング施設
では、実際に数字を置いてみましょう。前提は次のとおりです。
- 5棟(各4名定員)、土地は賃借(月30万円)
- 初期投資7,000万円
- 1棟あたりの平均販売単価60,000円(平均3名利用、1人20,000円想定)
- 年間稼働率40%=年間730棟泊
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 売上(60,000円×730棟泊) | 43,800,000円 |
| 人件費 | ▲10,950,000円 |
| 食材費 | ▲4,380,000円 |
| OTA・予約サイト手数料 | ▲4,380,000円 |
| リネン費 | ▲2,190,000円 |
| 水道光熱費 | ▲2,630,000円 |
| 土地賃借料 | ▲3,600,000円 |
| 販売促進費・広告費 | ▲2,190,000円 |
| 修繕費・消耗品・保険等 | ▲3,000,000円 |
| 年間営業利益 | 約10,480,000円 |
年間およそ1,048万円、営業利益率にすると23.9%です。宿泊業の平均的な水準(減価償却後で6%程度)と比べれば高い数字ですが、これは初期投資の減価償却を織り込む前のキャッシュフローベースであることに注意してください。
なお、この試算は土地を借りる前提です。自己所有の土地であれば賃借料360万円が不要になり、営業利益は年間約1,408万円まで上がります。遊休地の活用としてグランピングが検討されやすいのは、この差が大きいためです。
損益分岐は低いが、回収期間は稼働率で激変する
ここからが本題です。この事業の性質を理解するには、損益分岐点と投資回収を分けて考える必要があります。
先ほどのモデルで、稼働に比例して増える変動費(食材費、OTA手数料、リネン費、光熱費、販促費)は売上の約36%です。したがって限界利益率は64%。固定費は人件費1,095万円、土地賃借料360万円、修繕等300万円の合計1,755万円になります。
損益分岐となる売上は1,755万円÷0.64で約2,742万円。5棟が満室で稼働した場合の理論上の年間売上1億950万円と比べると、損益分岐稼働率は約25%という計算になります。
この数字は、宿泊業としてはかなり低い水準です。前回の記事で試算した小規模ホテル(損益分岐稼働率約62%)と比べれば、その差は歴然としています。赤字にはなりにくい事業だと言えます。
しかし、問題はここからです。稼働率を変えて営業利益と投資回収期間を並べてみましょう。
| 稼働率 | 年間売上 | 年間営業利益 | 投資回収期間 |
|---|---|---|---|
| 25%(損益分岐) | 約2,742万円 | 0円 | 回収不能 |
| 30% | 3,285万円 | 約347万円 | 約20年 |
| 40% | 4,380万円 | 約1,048万円 | 約6.7年 |
| 50% | 5,475万円 | 約1,749万円 | 約4.0年 |
稼働率が30%から40%に上がるだけで、投資回収期間は20年から6.7年へと3分の1に縮まります。赤字にはならないが、回収できるかどうかは別問題という構造がここに表れています。
「損益分岐が低いから安心」という説明を目にすることがありますが、これは半分しか正しくありません。7,000万円を投じた事業が20年かけてようやく回収できるのでは、投資として成立しているとは言い難いでしょう。融資を受けている場合、返済期間との整合も取れません。
では、稼働率の10ポイントはどこから生まれるのか。答えは閑散期と平日です。夏休みと連休は放っておいても埋まります。差がつくのは、1〜2月の冬季、6月の梅雨時、そして通年の平日です。
具体的な打ち手としては、冬季の暖房設備と防寒対策を整えて「冬こそ気持ちいい」体験として売る、平日限定のワーケーションプランや長期滞在割引を用意する、雨天時の屋内プログラムを準備しておく、といったものが考えられます。これらは開業後の営業努力というより、設備投資と事業設計の段階で決まる部分です。冬に暖房が効かない仕様を選べば、その時点で冬季の稼働は諦めることになります。
あわせて読みたい:ゲストハウス・小規模ホテルは儲かる?収益構造と収支シミュレーションを解説
まとめ:グランピングは「閑散期をどう埋めるか」の事業
事業計画で最も時間をかけて検討すべきなのは、単価設定でも棟数でもなく、1〜2月と6月、そして平日をどう埋めるかです。ここに答えを持っている計画は強く、持っていない計画は繁忙期の売上だけで組まれた楽観的なものになります。金融機関に事業計画を出す際も、保守的なシナリオを併記できるかどうかで評価が変わります。
なお、この記事の数字はモデルケースであり、立地、仕様、提供するサービスによって大きく変動します。許認可の要否や手続きの期間も、土地の条件によって異なります。実際に検討を進める際は、管轄の保健所や自治体の開発担当部局、そして施工業者にご確認ください。数字を置いてみることで、判断すべき論点は必ず見えてきます。



毎日満室どころか、40%埋まれば上出来なんですね…。しかも冬と平日をどうするかで回収年数が3倍違うとは。



そこが計画の要になります。逆に言えば、冬に強い設備と平日の需要をつくれる立地なら、かなり有望な事業ですよ。



よし、では冬でも埋まるように、テントの中に温泉を掘ります!これで通年満室ですね。



その掘削費で棟数を増やしたほうが早いと思いますよ。それに温泉を掘るには別の許可が必要になります。









