助手セバスチャンお酒って利益が大きいイメージがあります。酒屋さんを開けば、けっこう儲かりそうですよね!



それは飲食店で提供する場合のイメージですね。小売の酒販店は、粗利率20〜30%の薄利の商売です。



えっ、そんなに薄いんですか?お酒って高いのに…。



高いからこそ、価格を比較されるんです。しかもコンビニもスーパーもドラッグストアもネット通販も同じ商品を売っています。同じものを売っている限り、価格でしか勝負できません。



うわ…厳しい。じゃあ酒屋さんはどうやって利益を出しているんでしょう?



そこが今日の本題です。数字で確認していきましょう。
酒販店は、かつて免許が厳しく制限されていた業種でした。しかし規制緩和が進み、コンビニエンスストア、スーパー、ドラッグストア、そしてインターネット通販が次々と参入した結果、街の酒屋を取り巻く環境は大きく変わりました。
そのなかで生き残っている酒販店には、共通した特徴があります。同じ商品を安く売るのではなく、他では買えないものを扱うか、物販以外の粗利を持っているという点です。



この記事では、酒販店の収益構造を粗利率から整理したうえで、免許の種類が事業モデルをどう規定するのか、そして物販のみの場合と角打ちを併設した場合で収支がどう変わるのかを試算します。なお、以下の数字はモデルケースであり、立地や品揃えによって変わる点はご了承ください。
酒販店の収益構造——「粗利率25%」という薄さから出発する


まず押さえるべきは、酒類の小売は粗利率が20〜30%程度の商売だということです。
たとえば日本酒であれば、店頭価格の70〜75%程度で仕入れ、25〜30%の粗利を得るというのが一般的な構造です。ビールについては価格競争が激しく、粗利率はさらに低くなる傾向があります。大手メーカーのビールは、どこで買っても中身は同じですから、価格以外の差がつきません。
この数字が何を意味するか、具体的に考えてみましょう。粗利率25%ということは、1万円売っても手元に残るのは2,500円です。そこから家賃、人件費、水道光熱費、決済手数料を支払うことになります。飲食店の原価率30%(=粗利率70%)と比べれば、その差は歴然としています。
したがって、酒販店の経営で見るべき指標は売上ではなく粗利額です。年商3,000万円でも粗利率20%なら粗利は600万円。年商2,000万円でも粗利率35%なら粗利は700万円です。売上規模の大きさが、そのまま経営の安定を意味しないというのが、この業種の特徴になります。
そして構造的な問題として、競合が多いという点があります。コンビニは24時間営業で立地に優れ、スーパーとドラッグストアは価格で勝負し、ネット通販は品揃えと利便性で勝ります。街の酒屋がこれらと同じ土俵で戦えば、勝ち目は多くありません。
だからこそ、開業を検討する段階で問うべきは「どこに出店するか」より、「何を、誰に、どう売るか」です。次のセクションで見るとおり、この答えによって取るべき免許すら変わってきます。
免許の種類で「売り方」が決まる
酒類小売業免許には複数の区分があり、どの免許を取るかによって売り方が決まります。主なものを整理すると次のとおりです。
| 免許の種類 | 販売方法 | 取り扱える酒類 |
|---|---|---|
| 一般酒類小売業免許 | 店頭での小売が中心。県境を越えない範囲であればカタログ等による通信販売も可能 | 制限なし |
| 通信販売酒類小売業免許 | インターネット、カタログ、チラシ等による通信販売(複数都道府県の消費者が対象) | 輸入酒、または年間生産量が3,000キロリットル未満の製造者が製造・販売する国産酒に限られる |
| 特殊酒類小売業免許 | 特別な事情に応じた販売 | 個別の条件による |
ここで注目していただきたいのが、通信販売酒類小売業免許の取扱制限です。この免許でネット通販できる国産酒は、年間生産量がすべて3,000キロリットル未満である製造者のものに限られます。つまり、大手メーカーのビールや大手蔵の日本酒は、この免許では通販できません。
これは一見すると厳しい制約ですが、見方を変えれば小規模な蔵元やブルワリーの酒を扱う専門店にとっては、大手が入ってこられない領域だということでもあります。この点は後ほど改めて触れます。
また、店頭とネット通販の両方を行うのであれば、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の両方が必要になります。同時に申請することも可能ですので、開業時点でネット展開を視野に入れているなら、まとめて申請しておくとよいでしょう。
もう一点、角打ちを行う場合の注意があります。店内でお酒を飲ませる、簡単なつまみを出すといった営業をするのであれば、原則として飲食店営業許可が必要です。取扱いには自治体ごとの差がありますので、計画がある場合は保健所に確認してください。
あわせて読みたい:小売業界の転職・独立開業で役立つ資格は?売る商品で変わる必要資格を整理
収支シミュレーション①|物販のみの専門店
では、実際に数字を置いてみましょう。15坪の店舗で、日本酒とクラフトビールを扱う専門店を想定します。
- 年商2,400万円(月商200万円)
- 粗利率25%
- オーナー1名+パート1名
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 売上 | 24,000,000円 |
| 売上原価(粗利率25%) | ▲18,000,000円 |
| 売上総利益(粗利) | 6,000,000円 |
| 家賃 | ▲1,800,000円 |
| 人件費(パート1名) | ▲1,200,000円 |
| 水道光熱費・通信費 | ▲600,000円 |
| 決済手数料(売上の3%) | ▲720,000円 |
| 販促費・消耗品・その他 | ▲800,000円 |
| 営業利益 | 約880,000円 |
年商2,400万円に対して、営業利益は約88万円。しかもこれはオーナー自身の報酬を含んだ金額です。月商200万円という数字は決して小さくありませんが、粗利率25%という構造がある限り、この水準にとどまります。
損益分岐点を計算すると、経費512万円を粗利率25%で割って、必要な売上は約2,050万円。つまり月商170万円を下回ると赤字に転落します。余裕はほとんどありません。
この試算が示しているのは、物販だけで酒販店を成立させるのは容易ではないということです。年商を倍にできれば話は変わりますが、それには相応の立地と品揃え、そして仕入資金が必要になります。
収支シミュレーション②|角打ちを併設した場合
では、同じ店舗に角打ちスペースを設けたらどうなるでしょうか。物販の売上はそのままに、店内飲食で年600万円の売上が加わると仮定します。
角打ちは飲食店の売上ですから、粗利率は70%程度を見込めます。原価率30%の飲食と考えれば妥当な水準でしょう。
| 項目 | ①物販のみ | ②角打ち併設 |
|---|---|---|
| 売上 | 2,400万円 | 3,000万円 |
| 粗利 | 600万円 | 1,020万円 |
| 家賃 | ▲180万円 | ▲180万円 |
| 人件費 | ▲120万円 | ▲300万円 |
| 水道光熱費・通信費 | ▲60万円 | ▲90万円 |
| 決済手数料 | ▲72万円 | ▲90万円 |
| 販促費・その他 | ▲80万円 | ▲100万円 |
| 営業利益 | 約88万円 | 約260万円 |
売上は25%しか増えていないのに、営業利益は約3倍になりました。理由は明快で、追加した600万円の売上の粗利率が70%だからです。粗利額でみると、600万円から1,020万円へと420万円増えています。人件費や光熱費の増加分を差し引いても、大きく残ります。
ここから読み取れるのは、酒販店の収益改善は「売上を増やす」より「粗利率の高い売上を混ぜる」ほうが効くということです。同じ600万円の売上でも、粗利率25%の物販なら粗利は150万円、粗利率70%の飲食なら420万円。その差は2.8倍です。
もちろん、角打ちを始めれば飲食店営業許可が必要になり、営業時間中は人が張り付きます。仕込みや片付けの手間も増えます。それでもなお、粗利率の低い商売に、粗利率の高い商売を組み合わせるという発想は、酒販店の経営を考えるうえで有力な選択肢です。
あわせて読みたい:ブルーパブ(醸造所併設飲食店)の開業に必要な免許と収益構造
粗利を上げる4つの打ち手


角打ち以外にも、粗利を改善する方法はあります。代表的なものを4つ挙げます。
第一に、専門特化です。扱う酒を絞り込み、小規模な蔵元やブルワリーと直接取引をする。大手が扱わない銘柄であれば価格を比較されにくく、粗利率を確保しやすくなります。加えて、その分野に詳しい店として認知されれば、遠方からも客が来ます。「安いから買う」ではなく「ここでしか買えないから来る」という状態を作るのが、この打ち手の狙いです。
第二に、通信販売です。通信販売酒類小売業免許で扱える国産酒は、年間生産量3,000キロリットル未満の製造者のものに限られます。この制約は、大手メーカーの商品を通販できないという意味では不利ですが、小規模な蔵元の酒を主力にする専門店にとっては、ほとんど制約になりません。むしろ、大手が参入しにくい領域だと捉えることができます。商圏を全国に広げられる効果は大きく、専門特化と組み合わせると相乗効果があります。
第三に、飲食の併設です。前のセクションで試算したとおり、粗利率の高い売上を混ぜる効果は大きくなります。角打ちのほか、有料の試飲会やペアリングイベントといった形もあります。
第四に、業務用卸です。地域の飲食店に酒類を販売する形態で、これは一般酒類小売業免許の範囲で行えます(酒販店への卸売には別途の免許が必要ですが、飲食店への販売は小売にあたります)。粗利率は店頭小売より低くなりますが、1件あたりの取引額が大きく、継続的な売上になるという利点があります。地元の飲食店と関係を築ければ、経営の安定に寄与します。
これら4つは排他的なものではなく、組み合わせることができます。専門特化で扱う商品を決め、店頭と通販で個人客に売り、業務用で飲食店に卸し、角打ちで粗利率を底上げする。このような多層構造にできれば、価格競争から一定の距離を取れます。
まとめ:酒販店は「粗利額」で設計する
酒販店の開業を検討するなら、まず「何を、誰に、どう売るか」を決めてから免許を選ぶという順序で進めてください。近所のスーパーと同じ商品を並べても、価格でしか比較されません。扱う商品と売り方を絞り込むことが、粗利率を守る唯一の方法です。
なお、免許の要件や取扱いの範囲は、申請の内容や所轄税務署の判断によって異なります。この記事は一般的な考え方を整理したものですので、実際の申請にあたっては所轄税務署の酒類指導官にご相談ください。数字を先に置いてみれば、どの打ち手が必要かは自然と見えてきます。



粗利率25%だと、年商2,400万円でも88万円しか残らないんですね…。角打ちを足すだけで3倍になるというのは驚きました。



粗利率の違いが効くんです。物販一本で戦うなら、他では買えない商品を扱うしかありません。そのための専門特化と通販ですね。



よし、では粗利率を上げるため、仕入れた酒を全部2倍の値段で売ります!これで粗利率50%ですね。



同じ商品が隣のスーパーで半額なら、誰も買わないと思いますよ。



の開業に必要な免許と収益構造-300x150.png)
の許可要件は?5つの条件を解説-300x150.png)




