助手セバスチャンネットで民泊の収支を調べたら「月商35万円、利益15万円」って書いてありました。これ、けっこう儲かるんじゃないですか?



その数字、月に何日稼働している前提か書いてありましたか?



えっと…特に書いていなかったような。毎日お客さんが入る計算じゃないんですか?



そこが最大の落とし穴です。民泊新法で営業できるのは年間180日まで。つまり月に均すと15泊が上限です。30日稼働を前提にした試算をそのまま信じると、実際の売上は半分になります。今日は、この180日という制約を前提に、現実的な数字を組み立てていきましょう。
「空いている部屋を貸すだけで収入になる」—民泊にはそんなイメージがあります。実際、届出住宅の数は全国で4万件を超え、宿泊実績も回復基調にあります。訪日客の増加を追い風に、参入を検討する人は年々増えています。
しかし、民泊の収支は「部屋があれば儲かる」という単純なものではありません。売上には制度上の天井があり、費用には売上に比例して増えていくものが多い。この2つの性質を理解しないまま始めると、想定していた利益がまったく出ないという事態になります。



この記事では、民泊の売上がどう決まるのか、費用には何がいくらかかるのか、そして2つのモデルケースで実際に収支を試算してみます。あわせて、投資判断に使う利回りの考え方も整理していきます。
※なお、以下の数字はあくまでモデルケースであり、地域や物件によって大きく変わる点はあらかじめご了承ください。
民泊の売上は「稼働日数×1泊単価」で決まる—ただし180日の壁がある


民泊の売上を決める式はきわめてシンプルです。年間売上=年間稼働日数×1泊あたりの単価。この2つしか変数はありません。
問題は、稼働日数の上限が制度で決まっているという点です。住宅宿泊事業法(民泊新法)にもとづく民泊は、人を宿泊させる日数が年間180日を超えてはならないと定められています。これは繁忙期に集中させても変わらない絶対的な上限です。
この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。
住宅宿泊事業法 第2条第3項より
この180日は、単なる上限ではなく住宅宿泊事業であるための要件そのものです。超えた時点でその事業は住宅宿泊事業ではなくなり、旅館業の無許可営業として扱われます。日数は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの1年間で数えます。
さらに、自治体の条例によって180日より短く制限されている地域もあります。住居専用地域では平日の営業を禁止し、実質的に年間の営業可能日数が半分以下になるといった上乗せ規制は珍しくありません。物件を決める前に、必ず所在地の条例を確認してください。
そして実務上は、上限いっぱいの180日を埋めること自体が簡単ではありません。予約が入らない日、清掃や点検で使えない日を差し引くと、現実的な稼働は年間120〜150泊あたりに落ち着くケースが多くなります。「月30日稼働で月商○○万円」という試算は、民泊新法では原理的に成立しないということを、まず出発点として押さえておきましょう。
1泊単価のほうは、立地・部屋の広さ・収容人数・季節によって変動します。同じワンルームでも都心と地方では倍以上の差が出ますし、4名泊まれる一棟貸しなら単価はさらに上がります。売上を伸ばす余地があるのは、日数ではなく単価のほうだという点は重要な示唆です。
あわせて読みたい:民泊の年間180日規制とは?宿泊日数の数え方と超えた場合の扱い
費用の内訳①:初期費用は100万〜300万円が目安
民泊を始めるにあたっての初期費用は、賃貸物件を借りて始める場合でおおむね100万〜300万円の範囲に収まることが多いようです。内訳を見ていきましょう。
まず物件の取得にかかる費用です。賃貸であれば敷金・礼金・仲介手数料・前家賃で20万〜100万円程度。ここは物件の家賃水準に比例します。自己所有の空き家を活用する場合はこの費用が不要になりますが、代わりに改修費が発生することが一般的です。
次に消防設備です。民泊では自動火災報知設備や誘導灯の設置を求められることがあり、5万〜30万円程度を見込みます。建物の規模や構造、家主居住型か不在型かによって必要な設備が変わるため、届出前に消防署への相談が欠かせません。ここを見落とすと予算が大きく狂います。
そして家具・家電・リネン類が20万〜100万円。ベッド、寝具、冷蔵庫、洗濯機、調理器具、Wi-Fiルーターなど、生活に必要なものを一式揃える必要があります。宿泊者の評価に直結する部分なので、極端に切り詰めると稼働率に跳ね返ります。
最後に届出関連の費用が1万〜20万円。書類の取得費用のほか、行政書士に手続きを依頼する場合の報酬が含まれます。
なお、これらはあくまで賃貸物件を想定した金額です。物件そのものを購入する場合は、当然ながら購入価格が最大の投資額になります。この違いは、後述する利回りの計算に大きく影響します。
費用の内訳②:売上に比例して増えるランニングコスト
民泊の収支を難しくしているのは、費用の多くが売上に比例して増えるという点です。主なランニングコストを整理すると次のようになります。
| 費目 | 金額の目安 | 性質 |
|---|---|---|
| 家賃(賃貸の場合) | 物件による | 稼働に関係なく毎月発生 |
| 清掃費・リネン交換 | 1回5,000〜15,000円 | 宿泊組数に比例 |
| OTA手数料 | 売上の12〜15.5%程度 | 売上に比例 |
| 運営代行手数料 | 完全代行は売上の20〜35%、部分委託は月1〜2万円 | 委託範囲による |
| 水道光熱費 | 月2万〜5万円 | 稼働に概ね比例 |
| 通信費(Wi-Fi) | 月4,000〜6,000円 | 固定 |
| 消耗品費 | 月1万〜2万円 | 宿泊組数に比例 |
このうち特に効いてくるのが清掃費です。1泊ごとにチェックアウトがあれば、その都度清掃が必要になります。連泊が多い施設ほど1泊あたりの清掃コストは下がりますから、単価を上げるだけでなく「長く泊まってもらう」設計が収支を改善します。
OTA手数料も無視できません。Airbnbは2025年10月に手数料体系を変更し、従来の「ホスト3%+ゲスト14%」という分割型から、ホストが一律15.5%を負担する方式へ移行しています。Booking.comは日本国内の物件で12%程度です。表示価格の1割超が手数料として消えるという前提で単価を設計する必要があります。
そして運営代行をどこまで使うかは、収支に直結する経営判断です。完全代行なら売上の20〜35%を支払うことになりますが、遠隔地の物件を自分で管理するのは現実的ではありません。一方、住宅宿泊管理業者との契約のみの部分委託であれば月1〜2万円程度に抑えられます。家主不在型では管理業者への委託が原則として義務ですから、この費用は必ず見込んでおいてください。
あわせて読みたい:住宅宿泊管理業者・住宅宿泊仲介業者の登録とは?必要になるケースを解説
収支シミュレーション|賃貸転貸型と自己所有型の2ケース
では、実際に数字を入れて試算してみましょう。いずれも家主不在型・部分委託を前提とします。
ケースA:都心のワンルームを借りて転貸するモデル
家賃10万円のワンルームを借り、初期費用150万円で開業。1泊15,000円、年間150泊稼働と仮定します。
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 売上(15,000円×150泊) | 2,250,000円 |
| 家賃 | ▲1,200,000円 |
| OTA手数料(15%) | ▲337,500円 |
| 清掃費(6,000円×75回) | ▲450,000円 |
| 水道光熱費・通信費 | ▲300,000円 |
| 消耗品費 | ▲120,000円 |
| 管理委託料 | ▲240,000円 |
| 保険・その他 | ▲60,000円 |
| 年間損益 | ▲457,500円 |
赤字です。理由は明快で、家賃は12か月分かかるのに、稼働できるのは半年分しかないからです。この構造がある限り、賃貸物件を借りて民泊新法だけで運営するのは容易ではありません。
このケースで損益を均衡させるには、1泊あたり約18,600円の単価が必要になります。逆に言えば、その単価が取れる立地と部屋であれば成立の余地はあります。参入前に確認すべきは「近隣の同等物件がいくらで売れているか」であって、平均的な数字ではありません。
ケースB:地方の空き家を活用した一棟貸しモデル
相続した戸建てを改修し、初期投資400万円で開業。1棟4名まで、1泊25,000円、年間120泊稼働と仮定します。
| 項目 | 年間金額 |
|---|---|
| 売上(25,000円×120泊) | 3,000,000円 |
| OTA手数料(15%) | ▲450,000円 |
| 清掃費(12,000円×60回) | ▲720,000円 |
| 水道光熱費・通信費 | ▲420,000円 |
| 消耗品費 | ▲180,000円 |
| 管理委託料 | ▲240,000円 |
| 固定資産税・保険 | ▲150,000円 |
| 修繕積立 | ▲120,000円 |
| 年間損益 | +720,000円 |
こちらは年間72万円の黒字です。ケースAとの決定的な違いは家賃負担がないこと、そして一棟貸しで単価を上げられていることの2点にあります。民泊新法の収支は、極論すればこの2点でほぼ決まると言ってよいでしょう。
表面利回りと実質利回り——投資判断に使うのはどちらか
収支の次に確認したいのが利回りです。使う指標は2つあります。
表面利回りは、年間売上を投資額で割った数値です。ケースBなら300万円÷400万円で75%となります。数字としては派手ですが、経費が一切考慮されていないため、投資判断には使えません。物件広告などで目にする「高利回り」は、たいていこちらです。
実質利回りは、年間売上から年間経費を差し引いた利益を投資額で割ります。ケースBなら72万円÷400万円で18%。回収期間に直せば約5.6年です。判断に使うべきはこちらの数字です。
ここで注意したいのが、賃貸転貸型では利回りという指標があまり機能しないという点です。初期投資が150万円と小さいため、少し利益が出るだけで利回りは高く見えます。逆に赤字なら利回りはマイナスになり、比較の意味をなしません。転貸型の場合は、利回りよりも月次のキャッシュフローが黒字かどうか、そして初期投資を何か月で回収できるかで判断するほうが実態に合っています。
もう一点、ケースBは相続した物件のため土地建物の取得費を計上していません。もしこの物件を1,000万円で購入していたら、投資額は1,400万円となり、実質利回りは約5.1%まで下がります。この水準になると、「民泊にするより普通に賃貸に出したほうがよいのでは」という比較が必要になってきます。物件を購入して民泊を始める場合は、必ず通常の賃貸に出した場合の利回りと並べて検討してください。
まとめ:民泊の収支は「180日をどう埋めるか」で決まる
民泊が儲かるかどうかは、物件次第、というのが正直な結論です。ただし、その判断には明確な基準があります。
第一に、家賃負担があるかどうか。年間180日しか稼働できない事業に12か月分の家賃を払う構造は、相当に高い単価が取れなければ成立しません。自己所有の物件、あるいは空き家の活用から入るほうが、収支は圧倒的に組み立てやすくなります。
第二に、単価を上げられる物件かどうか。日数に上限がある以上、売上を伸ばす手段は単価しかありません。収容人数を増やせる間取り、連泊してもらえる立地、写真映えする内装。こうした要素が直接収益に効いてきます。
第三に、そもそも民泊新法が最適な制度かどうか。年間を通じて稼働させたいのであれば、旅館業(簡易宿所営業)や特区民泊という選択肢があります。手続きと設備投資は重くなりますが、日数制限がなくなることで収支の前提そのものが変わります。
なお、2026年以降は宿泊税を導入する自治体が急増しており、東京都は2027年4月から民泊も課税対象に加える予定です。宿泊税は宿泊者負担ですが、徴収と申告の事務は施設側の仕事になります。収支には表れにくいものの、運営負荷として見込んでおくべき変化です。
数字を置いてみると、期待していたほどの利益にならないこともあります。しかしそれは、始める前に分かってよかったということでもあります。まずは自分の物件の条件で一度試算してみることから始めていきましょう。
あわせて読みたい:旅館業・民泊新法・特区民泊はどれを選ぶ?3制度の違いを比較表で解説



うーん、思ったより厳しいんですね…。家賃を払いながらだと赤字になることもあるなんて。



逆に言えば、家賃のかからない空き家を持っている方にとっては有望な選択肢です。条件が合う人には、しっかり利益が出る事業ですよ。



よし、じゃあ僕は180日ぴったりで営業して、残りの185日は自分がお客さんとして泊まります!実質、家賃タダで都心暮らしですね。



その185日分の家賃は誰が払うんでしょうか。あと、自分で自分に宿泊料を払っても売上にはなりませんよ。


の許可要件は?5つの条件を解説-300x150.png)



の届出方法は?手続きの流れと必要書類を解説-300x150.png)


