助手セバスチャンキッチンカーっていいですよね。お店を借りるより安く始められるし、家賃もかからないから儲かりそうです!



初期費用が抑えられるのは事実ですね。ただ、家賃がかからない代わりに出店料というコストがかかります。しかもこれが、売上の2割近くになることもあるんですよ。



えっ、2割ですか。それは想像していませんでした……。



キッチンカーの収支は、この出店料と「どこに出店できるか」でほぼ決まります。今日は具体的な数字で見ていきましょう。
キッチンカー(移動販売)は、店舗を構える飲食店と比べて初期費用を大幅に抑えられることから、飲食業への参入方法として人気が高まっています。実際、店舗型の開業に1,000万円前後かかるところ、キッチンカーなら200万〜500万円程度でスタートできるケースも珍しくありません。
ただし、「初期費用が安い=儲かりやすい」とは限りません。キッチンカーには出店料という店舗型にはないコストがあり、さらに天候や出店場所の確保といった、売上を大きく左右する固有のリスクが存在します。



この記事では、キッチンカーの収益構造を出店料の実態から解説し、オフィス街のランチ営業型とイベント出店型の2つのケースで収支シミュレーションを行います。開業を検討している方が、現実的な事業イメージを持つための参考にしてください。
キッチンカーは店舗型より儲かるのか — 収益構造の違い


キッチンカーは固定費が軽く、損益分岐点が低いという点で、店舗型より収支を安定させやすいビジネスです。一方で、売上の上限が物理的に決まってしまうため、大きく稼ぐには不向きという側面もあります。
店舗型飲食店との違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 店舗型飲食店 | キッチンカー |
|---|---|---|
| 初期費用 | 500万〜1,500万円程度 | 200万〜500万円程度 |
| 場所のコスト | 家賃(固定・売上比10%が目安) | 出店料(変動・売上比15〜25%も) |
| 売上の上限 | 席数 × 回転率で決まる | 提供スピード × 営業時間で決まる |
| 人件費 | ホール・厨房で複数名必要 | 1〜2名で運営可能 |
| 主なリスク | 固定費(家賃)の重さ | 天候・出店場所の確保 |
注目していただきたいのは、場所のコストの性質が違うという点です。店舗型の家賃は売上がゼロでも発生する固定費ですが、キッチンカーの出店料は売上歩合制であることが多く、売れなければ支払いも減ります。この「変動費化」こそがキッチンカー最大の強みで、損益分岐点が低くなる理由です。
一方で、売上の上限は厳しく制限されます。店舗型なら席数を増やせますが、キッチンカーは1台で調理・提供できる数に物理的な限界があります。ランチタイムの2時間で提供できるのは、1食2分としても60食程度です。この構造上、キッチンカー1台での売上は月100万〜200万円程度が現実的なレンジとなります。
営業利益率で見ると、1人運営のキッチンカーで20〜35%程度が一つの目安です。店舗型の3〜8%と比べて高く見えますが、これは店主自身の人件費が含まれていないためです。つまり、この営業利益がそのまま店主の収入になるという意味であり、「利益率が高いから儲かる」と単純に比較できるものではない点に注意してください。
売上は「出店日数×1日の販売数×客単価」で決まる
キッチンカーの売上は、次の式で計算します。
月商 = 月間出店日数 × 1日の販売数 × 客単価
店舗型が「席数 × 回転率 × 客単価」であるのに対し、キッチンカーは席がないため、1日に何食売れるかが売上を決める中心の変数になります。
そして、この販売数には明確な上限があります。ランチ営業を例にとると、実際に売れる時間帯は11時30分から13時30分頃までの約2時間に集中します。1食あたりの提供時間が2分なら、この2時間で提供できるのは理論上60食です。仕込み済みの商品を温めて渡すだけなら1食30秒まで短縮でき、200食以上の提供も可能になります。
つまり、キッチンカーでは商品設計がそのまま売上の上限を決めるということです。手の込んだ調理を売りにすれば客単価は上げられますが、提供数は落ちます。逆に、仕込みを徹底して提供を高速化すれば数を売れますが、客単価は上がりにくい。どちらの戦略を取るかを、開業前に決めておく必要があります。
客単価の目安は業態によって異なりますが、キッチンカーの場合は700〜1,200円程度が中心的なレンジです。近隣の店舗型飲食店より安い価格設定を求められることが多く、単価を上げるにはドリンクやサイドメニューのセット販売が有効です。
月間出店日数については、平日ランチ中心なら月20日前後、土日のイベント中心なら月8〜12日程度が一般的です。ここで見落としがちなのが、出店していない日にも仕込みや移動、出店先の営業活動の時間がかかるという点です。稼働日数を無理に増やす計画は、実際には回らないことが多いと考えてください。
出店料の実際 — 場所別の相場と契約形態
キッチンカーの収支を左右する最大の要素が出店料です。料金形態は大きく「固定制」と「売上歩合制」の2つに分かれます。
| 出店先 | 主な料金形態 | 相場の目安 |
|---|---|---|
| オフィスビル敷地・企業の駐車場 | 固定制 or 歩合制 | 1日3,000〜10,000円/売上の15〜20% |
| 商業施設・スーパーの店頭 | 歩合制が中心 | 売上の15〜25% |
| イベント・フェス・お祭り | 固定制+歩合制の併用も | 1日1万〜5万円(大型は10万円超も) |
| 公園・公有地 | 使用許可+使用料 | 1日数百〜数千円(自治体により大きく異なる) |
| 個人所有の私有地(直接交渉) | 固定制 | 1日2,000〜10,000円 |
| 出店マッチングサービス経由 | 歩合制+手数料 | 売上の15〜20%程度 |
固定制と歩合制には、それぞれメリットとリスクがあります。固定制は売れれば売れるほど手取りが増えますが、雨天や客足不振の日でも支払いが発生します。歩合制は売れない日のリスクを抑えられる反面、好調な日の利益は削られます。開業初期で売上が読めないうちは、歩合制のほうが安全と言えるでしょう。
イベント出店は1日の売上が大きくなる魅力がありますが、出店料も高額です。1日3万円の出店料を払って売上が5万円しか立たなければ、原価を引いて赤字になります。イベント出店を検討する際は、過去の来場者数と、飲食ブースの出店数を必ず確認してください。来場者1万人でも飲食ブースが50台あれば、1台あたりの来客は限られます。
また、出店場所は自分で探して交渉するのが基本です。近年は出店場所を仲介するマッチングサービスも増えており、開業初期の場所確保には有効ですが、手数料がかかる分だけ利益は薄くなります。安定して出店できる固定の場所を自力で1〜2か所確保できるかが、キッチンカー経営が軌道に乗るかどうかの分かれ目です。
なお、公道上での販売には道路使用許可が必要で、これは警察署長の許可事項とされています。
次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(略)を受けなければならない。
三 場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者
道路交通法第77条第1項より
実務上、公道での常設的な営業許可が下りることは多くありません。私有地の所有者と契約して出店するのが基本の形になると考えておいてください。
初期費用とランニングコストの内訳
初期費用
キッチンカーの初期費用は、車両にどこまでお金をかけるかでほぼ決まります。
| 項目 | 費用の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 車両(中古・設備付き) | 150万〜300万円 | 軽トラベースが最も安価 |
| 車両(新規製作) | 300万〜700万円 | 1BOX・トラックベースは高額に |
| 車両リース | 月5万〜10万円 | 初期費用を抑えたい場合の選択肢 |
| 厨房設備の追加・改造 | 50万〜150万円 | 給排水タンク・冷蔵庫・発電機など |
| 営業許可申請手数料 | 1万6,000〜2万円程度 | 自治体により異なる |
| 食品衛生責任者の講習受講料 | 1万2,000円程度 | |
| 什器・備品・販促物 | 10万〜30万円 | 容器・のぼり・釣銭準備金など |
合計すると、中古車両を活用すれば200万〜350万円程度、新規製作なら400万〜700万円程度が目安です。ここに加えて、売上が安定するまでの運転資金を3〜6か月分は確保しておきましょう。
月々のランニングコスト
見落とされがちな費目として、仕込み場所の確保があります。自宅のキッチンで営業用の食材を仕込むことは、原則として認められていません。車内で仕込みを完結させるか、別途営業許可を受けた施設(シェアキッチン等)を借りる必要があり、後者の場合は月2万〜8万円程度の費用がかかります。
そのほか、燃料費(月2万〜4万円)、プロパンガス代(月5,000〜1万5,000円)、車両保険・自動車税・車検の積立(月1万5,000〜3万円)、容器・包材費(売上の3〜5%)などが継続的に発生します。車両は事業の生命線ですので、修繕費の積立も忘れずに計上しておいてください。故障して1週間動けなければ、その間の売上はゼロになります。
収支シミュレーション|2つのケース
ここでは2つの営業スタイルで収支を試算します。いずれも個人事業主による運営を前提とし、店主自身の給与は人件費に含めず、営業利益が店主の取り分として計算しています。
ケース①:平日オフィス街のランチ営業(月20日出店)
客単価800円、1日60食、月20日出店のモデルです。月商は「800円 × 60食 × 20日 = 960,000円」となります。
| 項目 | 金額(月) | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 960,000円 | 100% |
| 食材原価 | ▲ 288,000円 | 30% |
| 出店料(歩合18%) | ▲ 173,000円 | 18% |
| 容器・包材費 | ▲ 38,000円 | 4% |
| 仕込み場所の賃借料 | ▲ 50,000円 | 5% |
| 燃料費・ガス代 | ▲ 40,000円 | 4% |
| 車両維持費(保険・税・車検積立・修繕) | ▲ 25,000円 | 3% |
| 通信・広告・雑費 | ▲ 20,000円 | 2% |
| 営業利益(月) | 326,000円 | 34% |
| 年間営業利益(概算) | 約390万円 | — |
| 税・社会保険等を差し引いた手取り(概算) | 年間290〜320万円程度 | — |
1人で運営し、月20日稼働してこの水準です。車両ローンの返済がある場合は、ここからさらに月3万〜7万円程度が引かれます。
このケースの損益分岐点も計算してみましょう。固定費(仕込み場所5万円+車両維持2万5,000円+通信・雑費2万円)は約9万5,000円、変動費率は56%(限界利益率44%)ですので、損益分岐点売上高は「95,000円 ÷ 0.44 = 約216,000円」です。月20日営業なら1日約1万800円、客単価800円で1日約14食が黒字ラインになります。固定費が軽いキッチンカーは、この分岐点の低さが強みだとよく分かる数字です。
ケース②:イベント・土日中心の出店(月12日出店)
客単価900円、1日150食、月12日出店のモデルです。月商は「900円 × 150食 × 12日 = 1,620,000円」となります。繁忙時に対応するため、アルバイト1名を帯同させる前提です。
| 項目 | 金額(月) | 売上比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,620,000円 | 100% |
| 食材原価 | ▲ 518,000円 | 32% |
| 出店料(イベント出店料・歩合含む) | ▲ 324,000円 | 20% |
| 容器・包材費 | ▲ 65,000円 | 4% |
| アルバイト人件費 | ▲ 120,000円 | 7% |
| 仕込み場所の賃借料 | ▲ 60,000円 | 4% |
| 燃料費・ガス代(遠征分含む) | ▲ 75,000円 | 5% |
| 車両維持費 | ▲ 25,000円 | 2% |
| 通信・広告・雑費 | ▲ 25,000円 | 2% |
| 営業利益(月) | 408,000円 | 25% |
| 年間営業利益(概算) | 約490万円 | — |
| 税・社会保険等を差し引いた手取り(概算) | 年間360〜400万円程度 | — |
出店日数が少ないにもかかわらず、ケース①より利益が大きくなっています。イベント出店は1日あたりの売上が大きいためです。ただし、この数字はイベントが計画どおり開催され、想定どおり売れた場合のものである点に注意が必要です。雨天中止になれば売上はゼロで、仕入れた食材は無駄になり、固定制の出店料は返金されないこともあります。イベント型は平均値では高収益に見えても、月ごとの振れ幅が非常に大きい営業スタイルです。
現実的には、平日は固定の出店先でランチ営業、土日はイベントという組み合わせが、収益と安定性のバランスが最も取りやすい形になります。
儲かるキッチンカーとそうでない店の違い


安定した出店場所を確保できているか
キッチンカー経営で最も重要なのは、料理の味でも車両のデザインでもなく、継続して出店できる場所を持っているかです。毎週決まった曜日に決まった場所へ出店できれば、「水曜日はあのキッチンカーが来る日」と認知され、リピーターが育ちます。出店場所が毎回変わる状態では、常にゼロから集客することになり、売上が安定しません。開業準備の段階から、オフィスビルの管理会社や工場・病院の総務部門などに営業をかけ、固定の出店先を確保しておきましょう。
原価率と提供スピードを両立できているか
キッチンカーは原価率と提供スピードのバランスで利益が決まります。原価率を下げようとして質を落とせばリピーターは離れますし、提供に時間をかけすぎればランチのピーク2時間で売り切れる数が減ります。目安としては原価率30%前後を維持しつつ、1食2分以内で提供できるオペレーションを組むこと。メニュー数を3〜5品に絞り込み、仕込みを前日までに徹底しておくのが定石です。
天候・季節変動に備えているか
キッチンカーは天候の影響を直接受けます。雨の日の売上は晴天時の半分以下になることも珍しくなく、真夏や真冬は屋外での購買行動そのものが落ち込みます。年間を通じて売上が均一になることはない、という前提で資金計画を立ててください。夏はかき氷や冷たい飲み物、冬は温かいスープ系といった具合に、季節に応じた商品を用意して変動を緩和する工夫も有効です。
数字を把握しているか
出店先ごとの売上・原価・出店料を記録し、どの出店先が儲かっているのかを数字で把握することが重要です。歩合20%の出店先と固定5,000円の出店先では、売上水準によって有利不利が逆転します。感覚ではなく実績値で出店先を選別していくことが、利益を積み上げる最短ルートです。
あわせて読みたい:飲食店は儲かる?FLコストと原価率から見る収益構造を解説
まとめ:キッチンカーは「場所」で収支が決まる
キッチンカーの収益構造をまとめると、次のようになります。
- 初期費用は店舗型の3分の1程度、固定費が軽く損益分岐点が低い
- 家賃の代わりに出店料(売上の15〜25%)がかかる
- 売上の上限は「提供スピード × 営業時間」で物理的に決まる
- 1人運営で月商100万円前後、営業利益は月30万円前後が一つの現実的な水準
- 収支を安定させる鍵は、固定の出店場所を確保できるかどうか
「初期費用が安いから始めやすい」のは事実ですが、「始めやすいから儲かる」わけではありません。参入障壁が低い分だけ競合も多く、良い出店場所は取り合いになります。開業前に出店先の目星をつけておけるかどうかが、実際のところ最も大きな差になります。
なお、キッチンカーで営業するには、保健所の営業許可(自動車での飲食店営業)が必要です。許可は車両ごとに取得し、営業する区域を管轄する自治体それぞれで手続きが必要になる場合があります。また、車内で調理できる範囲や、仕込み場所の要否についても自治体ごとに運用が異なりますので、車両を製作する前に、営業予定地の保健所へ必ず相談してください。設備を作り込んでから基準を満たしていないと判明すると、改造費用が余計にかかってしまいます。
許認可の具体的な手続きの流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。
あわせて読みたい:キッチンカー開業に必要な許可とは?手続きの流れを行政書士が解説
収支の見通しと許認可の準備、この両方を並行して進めることが、開業後に利益を残せるキッチンカーをつくる土台になります。判断に迷う点があれば、行政書士・税理士などの専門家に相談しながら進めていきましょう。



なるほど、キッチンカーの成功には出店場所の選定が肝になってくるということですね!



そうです。極端に言えば、キッチンカー経営の8割は場所探しの仕事だと考えてもいいくらいです。開業前に固定の出店先を1つでも押さえられたら、それだけで成功率が変わりますよ。



分かりました!じゃあ僕、行政書士事務所の前に毎日出店しますね。けいしーさんのところなら出店料タダですよね?



それはお断りします。









