民泊新法(住宅宿泊事業法)の届出方法は?手続きの流れと必要書類を解説

助手セバスチャン

旅館業に比べて民泊の届出は手続きが楽って聞いたんですが、本当ですか?

行政書士けいしー

たしかに旅館業の「許可」に比べれば手続きは軽いですね。ただ、届出だからといって書類を出せば誰でも始められるわけではないんです。

助手セバスチャン

えっ、そうなんですか?空き家があれば大丈夫かと…。

行政書士けいしー

そこが最初の落とし穴です。民泊新法で届出できるのは「住宅」であって、空き家がそのまま該当するとは限りません。しかも年間180日という上限があります。順番に整理していきましょう。

空き家や使っていない部屋を宿泊施設として活用したい。そう考えたとき、旅館業の許可と並ぶ選択肢になるのが、住宅宿泊事業法に基づく民泊です。2018年6月15日に施行されたこの法律は、通称「民泊新法」と呼ばれています。

旅館業が都道府県知事等の「許可」を必要とするのに対し、民泊新法は「届出」で始められます。構造設備基準も旅館業ほど厳しくなく、住居専用地域でも営めるという大きな利点があります。空き家活用の手段として注目されてきたのは、このハードルの低さゆえです。

とはいえ、届出制であることと、誰でも簡単に始められることは同じではありません。届出できる「住宅」には明確な要件があり、家主が不在になる形態では管理業者への委託が義務づけられ、届出後も報告義務が続きます。そして何より、年間180日という営業日数の上限が事業計画そのものを左右します。

行政書士けいしー

本記事では、民泊新法の届出手続きを、要件・書類・届出後の義務という順に整理して解説していきます。

目次

民泊新法とは?「許可」ではなく「届出」で始められる制度

まず結論から言うと、住宅宿泊事業法に基づく民泊は、住宅の所在地を管轄する都道府県知事等への届出によって営むことができる制度です。旅館業のような許可制ではありません。

この制度が生まれた背景には、訪日外国人の急増と、無許可で行われる民泊への対応という2つの事情がありました。従来、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為は原則として旅館業法の許可を要しましたが、住宅を活用した小規模な宿泊サービスにその基準をそのまま適用するのは現実的ではありません。そこで、住宅としての性格を保ったまま宿泊事業を営める枠組みとして整備されたのが住宅宿泊事業法です。

現在、宿泊事業を営む制度は大きく3つに分かれています。

制度手続き営業日数主な特徴
旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業)許可制限なし構造設備基準が厳しい。住居専用地域では原則不可
住宅宿泊事業(民泊新法)届出年間180日が上限住宅のまま営める。住居専用地域でも可能
特区民泊認定制限なし国家戦略特別区域に限られる。最低宿泊日数の定めあり

この3つのうちどれを選ぶかは、事業の位置づけによって決まります。年間を通じて営業し、宿泊事業を本業として成立させたいなら旅館業、空いている住宅を副次的に活用したいなら民泊新法、という整理になります。

そして、民泊新法を選ぶうえで最も重要な制約が年間180日の上限です。この日数は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で計算されます。単純に考えても年間の半分弱しか営業できないため、宿泊料収入だけで生計を立てる計画には向きません。届出の手続きを調べ始める前に、この日数で採算が取れるかどうかを検証しておくことが何より大切です。

あわせて読みたい:旅館業法の営業許可とは?旅館・ホテル営業と簡易宿所営業の違いを解説

届出できる「住宅」の3つの要件

民泊新法で届出できるのは、法律上の「住宅」に該当する家屋に限られます。ここでいう住宅は、設備要件と居住要件の両方を満たすものを指します。

まず設備要件です。届出住宅には、台所、浴室、便所、洗面設備の4つが設けられている必要があります。人が生活を営むうえで必要な設備が揃っていることが、住宅と認められる前提になっているわけです。なお、これらの設備は必ずしも1棟の建物内にある必要はなく、同一敷地内の建物を一体的に使用する権限があり、それぞれの設備が使用可能な状態であれば、複数棟をまとめて一つの住宅として届け出ることも可能とされています。離れのある古い家屋を活用する場合などに関係してくる考え方です。

次が居住要件で、こちらのほうが実務上つまずきやすい部分です。届出住宅は、次の3つのいずれかに該当する家屋でなければなりません。

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋:住民票を置いて実際に暮らしている自宅などが該当します
  • 入居者の募集が行われている家屋:分譲や賃貸の募集を行いながら、その間に民泊として活用する場合です
  • 随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されている家屋:別荘やセカンドハウスのように、生活の本拠ではないものの継続的に居住の用に供されている家屋です

ここで注意したいのが、単に空き家になっているだけの建物は、そのままではこの要件を満たさないという点です。誰も住んでおらず、募集もしておらず、所有者が使うこともない家屋は、法律上の「住宅」とは認められません。空き家を活用したい場合は、賃貸や売却の募集を実際に行う、あるいは所有者が随時利用する実態をつくるといった対応が必要になります。

3つ目の「随時居住の用に供されている家屋」については、年に数回でも使用していれば足りるのか、どの程度の実態が必要なのかが判断の分かれ目になります。使用の記録が残るようにしておく、光熱費の契約を維持しておくといった準備が、届出時の説明材料になります。判断に迷う場合は、届出先の窓口に事前に相談しておくのが確実です。

なお、住宅として届け出るということは、建物の用途を変更する必要がないということでもあります。旅館業では建築基準法上の用途変更が大きな負担になりますが、民泊新法ではその手続きが原則として不要です。住居専用地域でも営めるのと合わせて、これが民泊新法最大の利点といえます。

家主居住型と家主不在型|管理業者への委託義務の分かれ目

民泊は運営形態によって、家主居住型と家主不在型に分けられます。この区別は呼び名の問題ではなく、住宅宿泊管理業者への委託が義務づけられるかどうかという実務上・費用上の大きな違いにつながります。

住宅宿泊事業法では、次のいずれかに該当する場合、住宅宿泊管理業務の全部を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないと定められています。

  • 届出住宅の居室の数が5を超えるとき
  • 届出住宅に人を宿泊させる間、家主が不在となるとき(一時的な不在を除く)

ただし、住宅宿泊事業者自身が住宅宿泊管理業者としての登録を受けており、自ら管理業務を行う場合はこの限りではありません。

ここでポイントになるのが「一時的な不在」の解釈です。家主が住宅にいる形態であっても、常に在宅していなければならないわけではありません。生活必需品の買い物など、日常生活を営むうえで通常行われる行為にともなう不在は一時的なものとして扱われます。一方で、勤務など業務のために継続的に長時間不在にする場合は、一時的な不在には該当しないとされています。つまり、日中は仕事に出ていて夜だけ戻る、という運営は家主居住型とは認められないということです。

形態想定される運営管理業者への委託
家主居住型自宅の空き部屋を貸す。家主が在宅して対応する原則不要(居室数5以下の場合)
家主不在型空き家や別宅を貸す。家主は現地にいない必要(自ら管理業者登録している場合を除く)

空き家を活用したい方の多くは、必然的に家主不在型になります。したがって住宅宿泊管理業者への委託費用が、事業計画に必ず組み込まれることになります。委託費用は物件の規模や委託範囲によって異なりますが、売上に対する一定割合で設定されることが一般的です。年間180日という上限があるなかで、この費用を差し引いても収支が成り立つかどうかは、届出の準備を始める前に確認しておくべき点です。

管理業者が担うのは、宿泊者の受け入れ準備、清掃、宿泊者名簿の管理、騒音防止のための説明、苦情への対応、鍵の受け渡しなど、運営実務のほぼ全般です。委託先を選ぶ際は、料金だけでなく、緊急時にどの程度の速さで現地対応できるかを確認しておきましょう。近隣トラブルが起きたときの対応力が、事業を続けられるかどうかを左右します。

届出の流れと必要書類【民泊制度運営システム】

届出は、原則として「民泊制度運営システム」を利用してオンラインで行うこととされています。国が運用しているシステムで、届出だけでなく、その後の定期報告もこのシステムを通じて行います。

一般的な流れは次のとおりです。

  • STEP1|要件の確認と事前相談:届出住宅が「住宅」の要件を満たすか、条例による上乗せ規制がないかを、届出先の窓口に確認します
  • STEP2|消防法令適合の確認:消防署に相談し、必要な設備を整えたうえで、消防法令適合通知書の交付を受けます
  • STEP3|近隣への周知:自治体の条例で求められる場合、周辺住民への事前説明を行います
  • STEP4|添付書類の準備:登記事項証明書、図面、承諾書などを揃えます
  • STEP5|民泊制度運営システムで届出:必要事項を入力し、添付書類をアップロードします
  • STEP6|届出番号の通知:受理されると届出番号が付与され、事業を開始できます

主な添付書類は次のとおりです。

区分書類名備考
共通欠格事由に該当しないことの誓約書所定の様式
共通住宅の登記事項証明書法務局で取得
共通住宅の図面記載事項が細かく定められている(後述)
個人破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書いわゆる身分証明書
法人定款または寄附行為、登記事項証明書、役員の身分証明書役員全員分が必要
該当時入居者募集の広告など、募集を行っていることを証する書類「入居者の募集が行われている家屋」として届け出る場合
該当時随時居住の用に供されていることを証する書類別荘などの場合
該当時賃貸人の承諾書(賃借人の場合)/賃貸人・転貸人の承諾書(転借人の場合)民泊を行うことが可能である旨の明記が必要
該当時管理規約の写し(区分所有建物の場合)民泊を禁止していないことの確認
該当時管理組合が禁止する意思を有していない旨を証する書類規約に定めがない場合
該当時住宅宿泊管理業者との契約書の写し委託する場合

このなかでとくに注意が必要なものを3つ挙げます。

1つ目が図面です。 単なる間取り図では足りません。台所・浴室・便所・洗面設備の位置、間取りと出入口、各階の別、居室や宿泊室などの床面積、そして非常用照明器具の位置をはじめとする安全確保措置の内容まで明示する必要があります。既存の図面をそのまま使えることは少なく、作成に手間がかかる書類です。

2つ目が承諾書です。 賃貸物件で民泊を行う場合、賃貸人の承諾書には民泊を行うことが可能である旨が明記されている必要があります。単なる転貸承諾では足りません。また、マンションなどの区分所有建物では、管理規約で民泊が禁止されていないことの確認が求められます。近年は民泊を禁止する規約を定めるマンションが増えているため、物件を決める前に必ず確認してください。

3つ目が消防法令適合通知書です。 住宅宿泊事業を行うには消防法令に適合している必要があり、住宅用火災警報器だけでは足りず、自動火災報知設備や誘導灯の設置を求められる場合があります。設備工事が必要になれば費用と時間がかかるため、旅館業と同様、早い段階で消防署に相談しておくことが欠かせません。

届出後に続く5つの義務|180日の数え方と定期報告

届出が受理されれば終わりではありません。住宅宿泊事業者には、営業を続けるあいだ継続的な義務が課されます。主なものを整理します。

1|年間提供日数180日の遵守 最も基本的な制約です。日数は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で計算し、人を宿泊させた日数の合計が180日を超えてはなりません。暦年でも年度でもない独特の区切りである点に注意が必要です。上限を超えた場合は業務停止命令などの対象となり、無届で営業していると判断されれば旅館業法違反として罰則が科されることもあります。日数の管理は、事業を続けるうえでの生命線といえます。

2|定期報告 宿泊日数や宿泊者数などの実績を、2か月ごとに報告する義務があります。具体的には、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の各15日までに、その直前2か月分の実績を届出先へ報告します。報告内容には、宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の内訳などが含まれます。民泊制度運営システムから行えますが、期限を失念しやすい手続きなので、カレンダーに登録しておくことをおすすめします。

3|標識の掲示 届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に所定の標識を掲げる義務があります。届出番号などを記載したもので、適法に届出をしていることを外部から確認できるようにする趣旨です。

4|宿泊者名簿の備付け 宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊日などを記載した名簿を備え、行政の求めに応じて提出できるようにしておく必要があります。日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、国籍と旅券番号の記載、旅券の写しの保存も求められます。

5|衛生確保・騒音防止・苦情対応 居室の清掃と衛生の確保、宿泊者に対する騒音防止など周辺環境への配慮に関する説明、外国人宿泊者への外国語による案内、そして近隣からの苦情への適切かつ迅速な対応が義務づけられています。とくに苦情対応は、深夜であっても対応が求められる性質のものです。家主不在型で管理業者に委託する場合、この部分の体制がそのまま事業の継続可能性に直結します。

なお、都道府県や市区町村は条例により、区域を限って営業できる期間を制限することができます。実際に、住居専用地域では特定の時期しか営業を認めない、平日の営業を制限するといった上乗せ規制を設けている自治体があります。国のルールでは180日まで認められていても、条例によってさらに短くなる可能性があるということです。物件の所在地の条例は、要件確認と同じタイミングで必ず調べておきましょう。

あわせて読みたい:旅館業の許可申請の流れと必要書類|取得までの期間と費用の目安

まとめ:180日で成立する事業計画かを先に検証する

民泊新法に基づく住宅宿泊事業は、都道府県知事等への届出で始められる制度です。旅館業のような許可は不要で、建築基準法上の用途変更も原則として必要なく、住居専用地域でも営めます。空き家や空き部屋の活用手段として使いやすい制度であることは間違いありません。

ただし、届出できるのは法律上の「住宅」に限られます。台所・浴室・便所・洗面設備という設備要件に加え、生活の本拠として使用されている、入居者を募集している、随時居住の用に供されている、のいずれかに該当する必要があります。単に空き家になっているだけの建物は、そのままでは要件を満たしません

また、家主が不在となる形態では住宅宿泊管理業者への委託が義務となり、その費用が固定的に発生します。届出時には図面や承諾書、消防法令適合通知書といった書類が必要で、とくに賃貸物件や区分所有建物では、民泊を行うことについての承諾や規約の確認が前提になります。

そして届出後も、180日の日数管理、2か月ごとの定期報告、標識の掲示、宿泊者名簿の備付け、衛生確保と苦情対応といった義務が続きます。届出は出発点であって、ゴールではありません。

準備の順序としては、書類集めより先に「年間180日の営業で、管理委託費や清掃費を差し引いても採算が取れるか」を検証することをおすすめします。ここで成り立たない計画であれば、旅館業の簡易宿所営業を選ぶという判断もあり得ます。制度を選んでから採算を考えるのではなく、採算から制度を逆算するという順序です。

なお、条例による区域・期間の制限、近隣への事前説明の要否、消防設備の要求水準などは、自治体によって運用が大きく異なります。準備を始める際は、届出先となる都道府県・市区町村の担当窓口と、管轄の消防署の最新情報を必ずご確認ください。

助手セバスチャン

なるほど…!届出だけとはいえ、空き家がそのまま使えるわけではないんですね。しかも僕は現地にいられないから、管理業者さんへの委託が必須になります・

行政書士けいしー

そのとおりです。180日の上限と管理委託費、この2つを織り込んで収支が成り立つかどうか。そこが最初の分かれ道になりますね。

助手セバスチャン

よし、対策を思いつきました!4月1日の正午ちょうどにお客様を入れて、翌年の正午ぴったりに出ていただけば、実質1泊で1年分の売上に…!

行政書士けいしー

それはもう宿泊ではなく、賃貸借契約じゃないでしょうか。

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