助手セバスチャンいつか自分のお店を持ちたいんですが…僕、料理は好きでも調理師免許は持っていないんです。やっぱり免許がないと飲食店って開けないんですよね?



いえ、実は飲食店を開くのに調理師免許は必要ありませんよ。



えっ、そうなんですか!?てっきり必須だと思っていました…。じゃあ何が必要なんでしょう?



必ず必要になるのは食品衛生責任者です。お店の規模によっては防火管理者も加わります。転職を目指す場合と独立を目指す場合でも効いてくる資格が違うので、順番に整理していきましょう。
飲食業は、他業種に比べて開業のハードルが低い業界だといわれます。実際、製造業や旅行業のような高額な資産要件はなく、小規模な店舗であれば個人でも十分に始められます。
その一方で、「飲食店の開業に必要な資格」を調べると、調理師免許、食品衛生責任者、食品衛生管理者、防火管理者…と似た名前の資格が並び、どれが本当に必要なのか分かりにくくなっています。名前が似ているだけでまったく別物、という資格も含まれているからです。
ここで押さえておきたいのは、飲食業の資格は「店を開くために法律上必要なもの」と「腕や知識を証明するもの」に分かれるということです。この2つを混同すると、必要のない資格に時間を使ったり、逆に開業直前になって必須資格が足りずに慌てたりすることになります。



本記事では、必須資格を確実に押さえたうえで、転職・独立それぞれで上乗せすると効いてくる資格を整理していきます。
飲食業界の資格は「店を開くために必要なもの」と「腕を証明するもの」に分かれる
まず結論から言うと、飲食店の開業に法律上必ず必要なのは食品衛生責任者であり、収容人員30人以上の店舗ではこれに防火管理者が加わります。調理師免許は、あれば有利ですが必須ではありません。


多くの方が誤解しているのはこの点です。「調理師免許=料理人の免許=飲食店を開くための免許」というイメージが強いのですが、調理師免許は調理師と名乗るための名称独占資格であり、飲食店営業許可の要件にはなっていません。無資格の方が開いた個人経営の飲食店は全国に数えきれないほどあります。
ここで注意したいのが、食品衛生責任者と食品衛生管理者はまったく別の資格だということです。食品衛生管理者は、乳製品や食肉製品、添加物などの特定の製品を製造・加工する施設に置く必要があるもので、要件も専門的です。一般的な飲食店に必要なのは食品衛生責任者のほうであり、この2つを取り違えると必要以上に身構えてしまうことになります。
もう一つ意識しておきたいのが、転職と独立では資格の意味合いが変わるという点です。会社に勤める場合、食品衛生責任者や防火管理者は原則として会社側が確保しています。そのため転職市場で評価されるのは、調理師免許のように調理と衛生の体系的な知識を持っていることの証明や、業態に合った専門資格です。一方、独立する場合は必須資格を自分自身または従業員が満たさなければ、そもそも営業許可が下りません。まずは必須資格を確実に押さえる、というのが独立準備の出発点になります。
食品衛生責任者 ― 飲食店を開くなら施設ごとに必ず1人
飲食店を開業するうえで、最初に取得すべき資格が食品衛生責任者です。食品衛生法施行規則の別表第17には、次のように定められています。
法第五十一条第一項に規定する営業を行う者(法第六十八条第三項において準用する場合を含む。以下この表において「営業者」という。)は、食品衛生責任者を定めること。
食品衛生法施行規則 別表第17(第66条の2第1項関係)より
これは、飲食店営業許可を取得する際の要件になっています。営業許可申請の段階で食品衛生責任者の資格を証明する書類の提出を求められるため、資格がないまま物件を契約して工事を進めても、営業を始められないという事態になりかねません。
食品衛生責任者の役割は、単なる名義上のものではありません。2021年6月からHACCPに沿った衛生管理がすべての食品等事業者に義務づけられ、飲食店にも衛生管理計画の作成と実施状況の記録が求められるようになりました。この衛生管理の実務を担うのが食品衛生責任者です。保健所の立入検査でも、計画と記録の有無は確認されるポイントになります。
取得方法はシンプルで、都道府県の食品衛生協会などが実施する養成講習会を受講します。内容は衛生法規・公衆衛生学・食品衛生学の計6時間程度で、受講料は1万円前後(地域によって異なります)です。近年は会場での集合型に加えてeラーニング方式を選べる地域も増えており、働きながらでも受けやすくなっています。難しい試験に合格する必要はなく、受講と簡単な確認テストで取得できます。
なお、調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士、船舶料理士、食鳥処理衛生管理者などの資格を持っている方は、この講習会の受講が免除されます。すでにこれらの資格をお持ちなら、改めて講習を受ける必要はありません。
実務上の注意点は2つあります。1つは、養成講習会は人気があり、時期によっては数か月先まで予約が埋まることです。物件を探し始めた段階で申し込んでおくくらいが安全です。もう1つは、食品衛生責任者は営業施設ごとに置く必要があるため、2店舗目を出すときには別の人材を確保しなければならないという点です。多店舗展開を考えるなら、店長候補に早めに取得させておく発想が欠かせません。
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調理師免許 ― 必須ではないが、転職でも独立でも効いてくる国家資格
開業の必須要件ではないとはいえ、調理師免許は飲食業界でもっとも汎用性の高い国家資格です。取得しておく価値は十分にあります。
取得ルートは2つあります。1つは、調理師養成施設(調理師専門学校など)で1年以上学んで卒業する方法で、この場合は試験を受けずに免許を申請できます。もう1つが、実務経験を積んで調理師試験を受験する方法です。受験資格は中学校卒業以上で、飲食店や給食施設などで2年以上の調理業務経験があること。正社員である必要はなく、パートやアルバイトでも週4日以上かつ1日6時間以上といった一定の勤務実態があれば実務経験として認められるのが一般的です。すでに飲食店で働いている方にとっては、現実的なルートといえます。
試験は各都道府県で原則として年1回、多くは秋頃に実施されます。科目は公衆衛生学・食品学・栄養学・食品衛生学・調理理論・食文化概論の6科目で、合格率はおおむね60〜70%前後です。実務経験者を前提とした出題内容のため、働きながら独学で合格する方も多く、難関資格というほどではありません。ただし試験日程や申込期間は都道府県ごとに異なるため、勤務先または居住地の自治体の案内を早めに確認しておきましょう。
取得のメリットは、大きく分けて次のとおりです。第一に、食品衛生責任者の養成講習が免除されるため、独立時の手間が1つ減ります。第二に、転職市場では衛生や栄養の基礎知識を体系的に学んでいることの客観的な証明になり、特に給食施設やホテル、病院関連の求人では応募条件そのものになっている場合があります。第三に、専門調理師やふぐ処理者といった上位・専門資格への足がかりになります。
独立を考えている方にとっては、対外的な信用という側面も見逃せません。融資の相談や取引先との商談、求人を出したときの応募者の安心感など、「調理の専門家である」ことを一言で示せる場面は意外と多くあります。なお、試験に合格しただけでは免許は交付されず、都道府県知事への免許申請が別途必要になる点にはご注意ください。
忘れられがちな「もう一つの必置資格」防火管理者
開業準備で見落とされやすいのが防火管理者です。これは消防法に基づく資格で、飲食店の場合、収容人員が30人以上になると選任が義務づけられます。
ここでいう収容人員には、客席の数だけでなく従業員も含まれます。「席数は25席だから関係ない」と考えていても、従業員を加えると30人を超えるケースがあります。さらに、テナントビルに入居する場合は建物全体で収容人員を判定することがあり、自店舗が小規模でも義務が生じる場合があります。判断に迷うときは、内装工事の前に管轄の消防署へ相談しておくのが確実です。
資格には甲種と乙種があり、建物の延べ面積が300平方メートル以上なら甲種、300平方メートル未満なら乙種が必要になります。講習は日本防火・防災協会などが実施しており、甲種はおおむね2日間で計10時間程度、乙種は1日で取得できます。受講のみで取得できるため難易度は高くありませんが、こちらも日程が限られており、開業直前に駆け込むと間に合わないことがあります。
防火管理者の仕事は、資格を取って終わりではありません。消防計画を作成して消防署に届け出て、消火・避難訓練を実施し、消防用設備の点検や避難経路の管理を継続的に行う役割を担います。選任したときには「防火管理者選任(解任)届出書」の提出も必要です。
※なお、防火管理者の選任と届出は法律上の義務であり、努力義務ではありません。違反した場合には罰則の対象となるほか、万一火災が発生した際の責任問題にも直結します。飲食店の開業時には、防火対象物使用開始届など消防関係の届出とあわせて、必ずスケジュールに組み込んでおきましょう。


業態別に効く上乗せ資格と、目的別の優先順位


必須資格を押さえたら、次は業態に合わせた上乗せです。上乗せ資格は「取れるものから取る」のではなく、自分の業態で使うものだけを選ぶのが効率的です。主なものを整理します。
ふぐを提供するなら、ふぐ処理者(ふぐ調理師など名称は自治体により異なります)の資格が必須です。都道府県ごとの制度であり、要件や試験内容も地域差があるため、営業予定地の基準を確認する必要があります。菓子やパンの製造販売を行うなら製菓衛生師が有力で、こちらも食品衛生責任者の講習免除の対象になります。調理の実務経験が長い方であれば、専門調理師・調理技能士に挑戦すると、技能を公的に証明でき、店舗のブランディングにも活用できます。
ドリンクで差別化するなら、ソムリエや日本酒のきき酒師といった民間資格が接客の説得力を高めてくれます。また、店内提供だけでなく酒類を未開栓のまま販売する場合には、資格ではなく酒類販売業免許が別途必要になり、その営業所には酒類販売管理者を置くことになります。物販を併設する予定があるなら、早い段階で確認しておきましょう。加えて、独立するなら簿記3級程度の知識があると、日々の記帳や資金繰りの把握、金融機関との会話がぐっと楽になります。
そのうえで、目的別の優先順位を整理しておきます。転職を目指す場合は、調理師免許が第一候補です。実務経験2年という条件はありますが、今の職場で経験を積みながら準備でき、キャリアの選択肢が確実に広がります。すでに食品衛生責任者を持っていれば、店長候補としての採用でも評価されます。
独立開業を目指す場合の順番は明確で、まず食品衛生責任者、次に規模に応じて防火管理者、そして業態別の資格という流れになります。営業許可と消防の手続きに直結する2つを先に片づけ、そのあとで自分の店の売りをつくる資格に取り組む、と考えるとスケジュールが立てやすくなります。
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まとめ:必須資格を押さえてから、腕を示す資格を重ねる
飲食店の開業に調理師免許は必要ありません。法律上必ず必要なのは、営業施設ごとに置く食品衛生責任者と、収容人員30人以上の店舗における防火管理者の2つです。どちらも講習の受講で取得でき、難易度は高くありませんが、講習の日程が限られているため、物件探しと並行して早めに動くことが何よりのポイントになります。
そのうえで、調理師免許は転職でも独立でも汎用性が高く、食品衛生責任者の講習免除という実利もあります。ふぐ処理者や製菓衛生師、ソムリエなどは、自分がやろうとしている業態に合致する場合にのみ検討すれば十分です。資格の数を増やすことが目的ではなく、「どんな店をやりたいか」から逆算して選ぶという姿勢が、遠回りを防いでくれます。
なお、資格を取得しても、それだけで営業を始められるわけではありません。飲食店には保健所の営業許可が必要であり、施設基準を満たした内装であることが前提になります。深夜0時以降に酒類を提供するなら警察署への届出、店内で音楽イベントを行うなら別の規制と、業態によって手続きは変わってきます。資格・許可・届出はセットで考えましょう。
講習の内容や受講料、試験日程、収容人員の判定などは自治体によって運用が異なります。準備を始める際は、管轄の保健所・消防署、そして各都道府県の食品衛生協会の最新情報を必ずご確認ください。



なるほど…!調理師免許がなくてもお店は開ける。でも食品衛生責任者は絶対で、席数によっては防火管理者も要る。名前が似ている食品衛生管理者は、飲食店には関係ないんですね。



そのとおりです。特に講習は予約が埋まりやすいので、物件が決まってから慌てて探すのではなく、開業を決めた時点で申し込んでおくくらいがちょうどいいですね。



よし、まず食品衛生責任者を取ります!そして衛生管理を徹底しすぎて、お客様にも入店前に6時間の講習を受けていただく「日本一きれいなカフェ」を…!



どうですかね?誰も入店できないお店になってしまいますよ。









