助手セバスチャン旅館を開業するにあたってホームページや予約サイトに施設の写真や料金を載せるじゃないですか。その辺って何か気をつけないといけないことってありますか?



ありますよ!まさに「景品表示法」がかかわってきます。広告やウェブサイトの表示が不当だと判断されると、消費者庁から措置命令を受けたり、課徴金を課されたりするケースもありますので、しっかり理解しておきましょう



えっ、写真を載せるだけで法律に引っかかることがあるんですか?



「実際より良く見せる」「実際より得に見せる」表示が問題になります。詳しく見ていきましょう。
宿泊施設のホームページ、OTA(オンライン旅行代理店)の掲載ページ、SNSの投稿——。今や集客のほとんどをウェブ上の情報発信に頼っている宿泊事業者は多いでしょう。一方で、魅力を伝えようとするあまり「実態と少しずれた表現」を使ってしまうケースも少なくありません。
そうした表示を規制するのが景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)です。この法律は消費者保護を目的としており、宿泊業を含むあらゆる事業者が対象となります。「大手だけの話では?」と思われがちですが、小規模の旅館・民宿・ゲストハウスであっても適用されます。



この記事では、宿泊事業者が特に気をつけるべき景品表示法の規制内容を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
景品表示法とは?宿泊業とどう関係するか


景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、昭和37年に制定された消費者保護を目的とした法律です。正式名称は長いですが、実務では「景表法(けいひょうほう)」と略されることもあります。所管しているのは消費者庁で、都道府県も一部の権限を持っており、都道府県が措置命令を出すケースもあります。
この法律が規制するのは、大きく分けて2つです。
- 不当な景品類(景品規制): プレゼントや懸賞など、商品・サービスに付ける「おまけ」の上限額を定める規制
- 不当な表示(表示規制): 商品・サービスの内容や価格について、消費者が誤解するような表示を禁止する規制
宿泊業との関係で言えば、ホームページや予約サイトに掲載する「客室の写真」「景色の説明」「食事の内容」「料金の表示」「特典・プレゼント」など、あらゆる広告・告知が景品表示法の対象となります。「うちは小さい旅館だから大丈夫」という認識は危険です。消費者庁は近年、宿泊業に関する調査を強化しており、OTAへの掲載内容についても審査対象になりえます。
さらに、2023年10月からはステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)も景品表示法の規制対象として新たに指定されました。インフルエンサーに依頼した宿泊体験レポートや、報酬を支払って書いてもらった口コミに「PR」などの表記をしていない場合、不当表示として問題になりえます。SNSを活用したプロモーションを行っている事業者は特に注意が必要です。
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
不当景品類及び不当表示防止法 第5条より
不当表示の3つの類型
景品表示法が禁止する「不当表示」は、大きく3つの類型に分かれます。それぞれ宿泊業の文脈で見ていきましょう。
①優良誤認表示(5条1項1号)
「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質・内容について、実際のものよりも著しく優良であると誤解させる表示のことです。
たとえば、「全室オーシャンビュー」と記載しているのに実際には一部の客室からしか海が見えない、「天然温泉100%かけ流し」と書いているのに加水・加温をしている、「地元産こだわり食材のみ使用」と表示しているのに実際は産地不明の食材が含まれているといったケースが該当します。
重要なのは「著しく」という基準です。一般消費者が表示を見て「このような施設・サービスである」と信じてしまう程度の乖離があれば、優良誤認表示と判断されるリスクがあります。多少の表現上の工夫であっても、実態との乖離が大きい場合は許容されません。
また、景品表示法には「不実証広告規制」という仕組みがあります。消費者庁が合理的な根拠を示すよう求めた場合、事業者は15日以内にその根拠となるデータや書類を提出しなければなりません。根拠を示せない場合は、優良誤認表示とみなされます。「うちの温泉は最高品質です」と書くなら、その根拠を用意しておく必要があるということです。
②有利誤認表示(5条1項2号)
「有利誤認表示」とは、価格その他の取引条件について、実際よりも著しく有利であると消費者に誤認させる表示です。
宿泊業で最もよくある有利誤認表示のひとつが「二重価格表示」の問題です。「通常価格30,000円のところ今だけ15,000円!」のように比較価格を示す場合、その「通常価格」が実際に一定期間販売されていた実績がなければ、有利誤認表示に該当します。消費者庁のガイドラインでは、比較対象の価格は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければならないとされています。
また、「今シーズン最安値」「どこよりも安い」「最大50%OFF」といった表現も、実態と乖離している場合は問題となります。OTAのキャンペーン表示においても、事業者側が関与した表示については責任を問われる場合があります。「セール中」という表示を年間通じてほぼ外したことがない場合も、有利誤認表示とみなされるリスクがあります。
③その他指定の不当表示(5条1項3号)
内閣総理大臣(現在は消費者庁長官に権限委任)が指定する表示類型です。現在は「無果汁の清涼飲料水等についての表示」「商品の原産国に関する不当な表示」「おとり広告に関する表示」などが指定されています。
宿泊業で特に関係するのは「おとり広告」です。たとえば、予約サイトに「残り1室!」と表示しているのに実際には複数室空いている、または「この価格で泊まれます」という表示で集客したが実際には条件の異なる客室しか販売しないケースが該当しえます。また、すでに販売が終了している料金プランの表示を削除せずに残しておくケースも、おとり広告に問われるリスクがあります。予約システムと掲載情報のメンテナンスは定期的に行うことが重要です。
宿泊業でよくある「アウト」な表示例
では、実際の宿泊業の広告・ウェブサイトで問題になりやすい表示をより具体的に見ていきましょう。
施設・設備の表示
客室の写真は、集客において最も重要な要素のひとつです。しかし、以下のような表示は景品表示法上の問題になりえます。
- 「全室Wi-Fi完備」 → 実際はロビーのみ、または特定の客室では電波が届きにくい
- 「リニューアルオープン」 → 実際は客室の一部のみリフォームし、全体はリニューアルされていない
- 「絶景の露天風呂」 → 写真は特定の季節・時間帯にしか撮影できない景色
- 「○○㎡のゆったりした客室」 → バルコニーや収納を含めた面積を記載している
- 「プライベートプール付き」 → 写真に映っているのは共用プールで、個室専用ではない
これらは「優良誤認表示」に該当するリスクがあります。写真や説明文は「最もよく見える状態」で撮影・作成されがちですが、その状態が「一般的な宿泊時の状態」と大きく乖離しているとアウトです。特に開業時に用意した写真やコピーをそのまま何年も使い続けている場合、施設の実態と乖離している可能性があります。定期的に見直す習慣をつけましょう。
食事・食材の表示
宿泊業では夕食・朝食の内容も大きな集客ポイントになりますが、食材の表示には特に注意が必要です。
「地元産」「○○産」「天然」「国産」といった表示は、実態と異なれば優良誤認表示になります。景品表示法に加えて食品表示法違反にもなりえますので、二重のリスクがある点を意識してください。また、「本日の旬の食材をふんだんに使ったコース」と掲げながら、仕入れの都合で異なる食材が使われているケースも問題となりえます。料理の写真についても、実際に提供される料理と著しく異なる場合は注意が必要です。「イメージ画像です」という注記があれば免責されるわけではない点も覚えておきましょう。
料金・価格の表示
二重価格表示は宿泊業で特に多いトラブルのひとつです。「定価○○円→今だけ○○円」という表示において、その「定価」「通常価格」が実際に販売されていた実績のない価格であれば、有利誤認表示となります。消費者庁のガイドラインでは、比較基準となる価格は「当該価格で販売されていた期間が、比較対照価格として表示する直前の8週間のうち過半(4週間以上)を占めている場合」という目安が示されています。
また、「消費税別」「サービス料別途」「入湯税別途」など、最終的な支払額が表示価格よりも大幅に高くなる場合も有利誤認表示に問われるリスクがあります。観光庁の指針でも宿泊料金の総額表示が強く推奨されており、「1泊○○円〜(税・サービス料別)」という表示方法は今後さらに問題視される可能性があります。最終的な支払総額を明確に表示することを基本としましょう。
景品・特典プレゼントのルール(景品規制)


宿泊プランに「地元名産品プレゼント」「チェックアウト後の駐車場無料延長」「周辺施設の入場券付き」といった特典を付けるケースは多いと思います。これらは景品表示法の「景品規制」の対象となります。
景品規制は「景品類の最高額・総額を超えてはいけない」というルールです。景品の種類によって上限額が異なります。
| 景品の種類 | 概要 | 最高額の上限 | 総額の上限 |
|---|---|---|---|
| 総付景品 (もれなく全員に) | 宿泊者全員にプレゼント | 取引価格の20% (取引価格が1,000円未満は200円) | 制限なし |
| 一般懸賞 (抽選など) | 条件を満たした宿泊者の中から抽選などで提供 | 取引価格の20倍 (最高10万円) | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 複数の事業者が共同で実施する懸賞 | 30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
たとえば、1泊2万円の宿泊プランにもれなく地元特産品をプレゼントする場合(総付景品)、景品の価格上限は2万円×20%=4,000円となります。これを超える景品を提供することは景品表示法違反となります。
とはいえ、景品規制には「景品類に該当しないもの」も定められています。「正常な商慣習に照らして値引きと認められるもの」は景品規制の対象外です。たとえば「早割プランは10%引き」という値引きは取引条件そのものですので、景品規制は適用されません。また、「自社の宿泊施設内で利用できるスパ・レストランの割引券」など、自社サービスの利用促進のためのクーポンについても景品類に該当しないケースがあります。判断に迷う場合は、消費者庁のガイドラインや専門家への相談をおすすめします。
違反した場合はどうなるか(措置命令・課徴金)
景品表示法に違反した場合のペナルティは、2015年の法改正で大幅に強化されました。大きく「措置命令」と「課徴金」の2つがあります。
措置命令
消費者庁または都道府県は、不当表示や景品規制違反が認められた場合、事業者に対して「措置命令」を行うことができます。措置命令では主に以下の内容が命じられます。
- 違反行為の差止め(問題のある表示の修正・削除)
- 一般消費者への周知(新聞広告や自社サイトでの告知など)
- 再発防止措置の実施
- 社内への周知徹底
措置命令が出ると、消費者庁のウェブサイトに事業者名・違反内容が公表されます。これは宿泊施設にとって信頼・評判の面で大きなダメージとなりえます。一度公表されると検索エンジンにも残るため、集客への影響は長期にわたる可能性があります。
課徴金制度
2015年の景品表示法改正で「課徴金制度」が導入されました。不当表示により一般消費者に不当な不利益を与えた場合、対象期間の売上額の3%相当の課徴金を納付しなければなりません。
課徴金の算定対象は「当該表示を開始した日から、その表示が終了した日までの期間」に得た売上高です。課徴金額が150万円未満(売上高5,000万円未満に相当)の場合は免除されますが、規模の大きい旅館・ホテルチェーンでは多額の課徴金になりえます。なお、事業者が自主的に被害消費者への返金措置をとった場合、その金額分を課徴金から減額できる制度もあります。
また、措置命令に従わなかった場合には、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下の罰金)という刑事罰も定められています。
根拠法令:不当景品類及び不当表示防止法
まとめ:表示の適法チェックと日常的な管理
景品表示法は、宿泊事業者にとって「許可が必要な法律」ではなく「日々の広告・表示が適法かどうかを問われる法律」です。一度ウェブサイトに掲載したら終わりではなく、定期的な見直しと管理が求められます。
宿泊事業者として実践したい対策をまとめると、以下のようになります。
- ホームページや予約サイトの写真・説明文が現在の客室・設備の実態と一致しているか定期的に確認する
- 料金表示は最終的な支払額(消費税・サービス料・入湯税込み)で記載することを基本とする
- 「今だけ○%OFF」などの表示を使う場合は、比較対象となる価格の販売実績を記録・保存しておく
- 景品・特典を設定する際は、景品規制の上限額を事前に確認する
- インフルエンサーや口コミ投稿者への報酬提供がある場合は、必ず「PR」「広告」と明示する(ステマ規制対応)
- 疑問を感じた表示については、消費者庁や都道府県の担当窓口、または行政書士・弁護士に相談する
景品表示法に違反した場合、措置命令や課徴金の対象となるだけでなく、消費者庁のウェブサイトで事業者名が公表されるという大きなリスクがあります。 適法な広告表示を心がけることは、顧客からの信頼を守ることにもつながります。開業前・リニューアル時には掲載内容を一度点検することを強くおすすめします。



なるほど!写真や説明文が「ちょっと盛ってる」くらいのつもりでも、景品表示法違反になることがあるんですね。気をつけないと…。



そうですね。「悪意があったかどうか」ではなく、「一般消費者がどう受け取るか」が判断基準になります。意図せず違反してしまうケースも実際にありますので、定期的に自社の広告内容を見直す習慣をつけておくといいですよ。



わかりました!あ、じゃあ「助手セバスチャン、全国ナンバーワンのすごいやつ」って宣伝しても大丈夫ですか?



それ、根拠を求められても絶対出せないやつですね。優良誤認表示まっしぐらです。









