助手セバスチャン最近、地域ごとの個性あるクラフトビールが人気ですよね。自分でも醸造所を開いてみたいんですが、何か免許って必要なんですか?



はい、お酒を製造するには「酒類製造免許」が必要です。酒税法に基づく免許で、税務署に申請します。手順を正しく踏めば取得できますので、一緒に確認していきましょう。



税務署!国税庁が関係してくるんですね。なんだか難しそう…。



ポイントさえ押さえれば大丈夫ですよ。ビールと発泡酒で免許の種類も変わりますし、製造以外にも必要な手続きがあります。順番に見ていきましょう。
近年、個性的な味わいや地域の素材を活かしたクラフトビールが注目を集めています。全国各地に小規模なブルワリー(醸造所)が増え、観光やまちおこしと組み合わせた取り組みも広がっています。「自分の店でオリジナルビールを醸造したい」「地元の農産物を使ったビールで起業したい」という方も増えているのではないでしょうか。
しかし、ビールを含むお酒の製造は、誰でも自由に始められるわけではありません。酒税法に基づく「酒類製造免許」を取得しなければ、醸造を始めることができないのです。



この記事では、クラフトビール醸造所の開業を検討している方に向けて、必要な免許の種類・取得要件・申請の流れ・その他の手続きをわかりやすく解説していきます。
クラフトビール醸造に必要な免許とは?


まず結論から言うと、クラフトビールを製造して販売するためには、酒類製造免許(酒税法第7条)の取得が必要です。この免許は品目ごと・製造場ごとに取得するものであり、たとえばビールと発泡酒を別々に製造する場合はそれぞれの免許が必要になります。
酒税法では次のように定めています。
酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない。
酒税法第7条第1項より
免許なしにお酒を製造した場合、酒税法第54条の規定により「10年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」という重い罰則が科される可能性があります。自宅での趣味の自家醸造も原則として禁止されており、ビール・ワイン・日本酒などアルコール分1度以上の酒類はすべて酒税法の対象です。
申請窓口は、醸造所(製造場)の所在地を管轄する税務署です。一般的な許認可申請が都道府県や市区町村の窓口に行くのとは異なり、国税当局が所管する点がクラフトビール開業の特徴といえます。
ビール製造免許と発泡酒製造免許の違い
クラフトビール醸造で検討する主な免許は「ビール製造免許」と「発泡酒製造免許」の2種類です。どちらを取得すべきかは、作りたいビールのスタイルと年間製造量によって異なります。
2018年の酒税法改正でビールの定義が変わった
2018年4月の酒税法改正以前は、ビールに使用できる副原料は麦芽・ホップ・水・米などの穀類に限られており、それ以外の素材を使ったものは「発泡酒」に分類されていました。そのため、フルーツや香辛料・野菜などを使ったクラフトビールは、たとえ麦芽比率が高くても「発泡酒」とされていました。
改正後は、ビールに使用できる副原料の範囲が大幅に拡大されました。果実・香辛料・野菜・コリアンダー・牡蠣など多彩な素材を使用してもビールとして認められるようになり、クラフトビールの製造・表示において大きな追い風となりました。
最低製造数量の違い
2つの免許で最も大きな違いが、年間の最低製造数量です。
| 免許の種類 | 最低製造数量 | 主な対象 |
|---|---|---|
| ビール製造免許 | 60kl(キロリットル)/年 | 中規模以上のブルワリー |
| 発泡酒製造免許 | 6kl(キロリットル)/年 | 小規模ブルワリー・スタートアップ |
60klというのは、330mlの缶ビール換算で約18万本に相当します。開業当初からこの水準を達成するのは、多くの小規模ブルワリーにとって現実的ではありません。そのため、スタートアップ段階では発泡酒製造免許から始め、事業が軌道に乗った段階でビール製造免許を追加取得するという流れをとるケースが多いです。
なお、発泡酒製造免許で製造したものは、たとえ副原料の範囲がビールの定義内に収まっていても、酒税法上は「発泡酒」として表示・課税されます。製品ラベルへの影響もあるため、ブランディングの観点からどちらの免許を目指すかを早めに検討しておくことが重要です。
免許取得のための4つの要件
酒類製造免許の審査では、大きく分けて4つの要件が確認されます。この要件のいずれかを満たさない場合、免許は交付されません。
①人的要件
申請者(個人または法人の役員)が、以下のような欠格事由に該当しないことが必要です。
- 酒税法・関税法などの違反による罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わって3年を経過していない
- 成年被後見人・被保佐人に該当する
- 破産者で復権を得ていない
- 酒類製造・販売免許を取り消されてから3年を経過していない
法人の場合は、すべての役員が欠格事由に該当しないことが求められます。
②場所的要件
醸造を行う「製造場」が適切に確保されていることが必要です。具体的には、醸造に必要な設備(仕込みタンク・発酵タンク・貯酒タンク・瓶詰め設備など)を設置できる十分なスペースと、設備が整っていることが求められます。また、場所が他の酒類の製造場や販売場と混同されないよう、区画が明確にされていることも確認されます。
建物の用途地域(建築基準法)や消防法上の問題がないかも事前に確認が必要です。工場系の用途地域(準工業地域・工業地域など)であれば醸造所を設置しやすいですが、住居系地域では制限がかかる場合があります。
③経営基礎要件
醸造事業を継続するのに十分な経営基盤があることが審査されます。具体的には、製造設備への初期投資・運転資金を賄える資金力があること、財務状況が健全であること、事業計画が現実的であることなどがポイントになります。税金の滞納がないことも確認されます。
事業計画書・資金繰り計画・貸借対照表などの書類提出が求められるため、開業前の段階から財務面の整理をしておくことが重要です。
④技術的要件
品質の高いビールを安定して製造できる技術・知識があることが求められます。醸造経験(国内外のブルワリーでの研修・勤務経験など)や、製造管理に関する知識を証明できる資料を提出します。醸造経験がない場合は、醸造技術者を雇用する計画や、他のブルワリーでの研修を経てから申請するといった対応が必要になることもあります。
申請手続きの流れ:税務署への申請から免許交付まで
要件の確認が終わったら、所轄の税務署に申請書類を提出します。申請から免許交付までの標準処理期間は約4か月です。書類の不備があると補正対応で時間が延びるため、事前に準備を整えることが重要です。
STEP1:事前相談 所轄税務署の酒類指導官(または担当部署)に事前相談を行います。製造する酒類の品目・製造場の場所・設備計画などを伝え、申請に向けた指導を受けます。この段階で要件の充足状況を確認しておくと、申請後のやり取りがスムーズになります。
STEP2:申請書類の準備 主な提出書類は以下のとおりです。
- 酒類製造免許申請書
- 製造しようとする酒類の品目・製造数量の説明書
- 醸造場の図面(平面図・設備配置図)
- 製造設備の明細書
- 申請者の履歴書・登記事項証明書(法人の場合)
- 財務諸表・事業計画書・資金繰り計画
- 製造技術を証明する書類(醸造経験証明など)
STEP3:税務署への申請 書類が整ったら、製造場の所在地を管轄する税務署へ申請書類を提出します。申請手数料は不要です(無料)。
STEP4:審査・現地調査 税務署による書類審査と、必要に応じて製造場への現地調査が行われます。設備の確認や事業計画のヒアリングが実施されることがあります。
STEP5:免許交付 審査が完了し問題がなければ、免許通知書が交付されます。交付時に登録免許税が課税されます。免許交付後、初めて醸造を開始することができます。
なお、製造数量の最低要件(ビール60kl、発泡酒6kl)は「見込み数量」として申請時に記載しますが、開業初年度から必ず達成しなければならないわけではありません。ただし、著しく下回り続ける場合は免許の取消し事由になりうるため、現実的な事業計画を立てることが大切です。
酒類製造免許以外に必要な手続き


クラフトビール醸造所の開業には、酒類製造免許の他にもいくつかの手続きが必要です。
食品衛生法に基づく営業許可
ビールの製造は食品の製造・加工に当たるため、食品衛生法に基づく保健所への届出または営業許可が必要です。醸造場の所在地を管轄する保健所に相談し、施設基準を満たした設備を整えたうえで申請を行います。
直営のタップルーム(醸造所に併設した飲食スペース)を設ける場合は、飲食店営業許可も別途必要になります。醸造とタップルームを一体で開業する場合は、保健所との事前相談を早めに行いましょう。
酒類販売業免許
製造したビールを販売するためには、酒類製造免許とは別に酒類販売業免許が必要です。販売の形態によって必要な免許の種類が異なります。
| 販売形態 | 必要な免許 | 申請先 |
|---|---|---|
| 醸造所・直営店での小売販売 | 一般酒類小売業免許 | 所轄税務署 |
| インターネット・通信販売 | 通信販売酒類小売業免許 | 所轄税務署 |
| 飲食店・小売店への卸売 | 酒類卸売業免許 | 所轄税務署 |
なお、自社で製造したビールを製造場(醸造所)から直接小売販売する場合は、製造免許に販売が付随するとして、別途の販売免許が不要となる場合もあります。ただし、製造場以外の場所で販売する場合や通信販売を行う場合は別途の免許が必要になりますので、税務署に確認しましょう。
建築基準法・消防法への対応
醸造所の建物が工場・倉庫として適切な用途地域に立地しているか、建築基準法上の用途規制に違反していないかを確認する必要があります。また、醸造過程ではボイラーやガスを使用することが多く、消防法上の危険物取扱いや防火設備の設置が求められる場合もあります。消防署への事前相談も忘れずに行いましょう。
まとめ:クラフトビール醸造所開業チェックリスト
この記事では、クラフトビール醸造を始めるための免許と手順について解説しました。開業前に確認すべきポイントをまとめると以下のとおりです。
- 酒類製造免許(酒税法)の取得が必須。申請先は所轄の税務署
- ビール製造免許(最低60kl/年)か発泡酒製造免許(最低6kl/年)かを規模に応じて選択
- 2018年の酒税法改正でビールの副原料の範囲が拡大し、クラフトビールが作りやすくなった
- 免許取得には人的・場所的・経営基礎・技術的の4要件を満たす必要がある
- 申請から免許交付まで約4か月が標準的な目安
- 食品衛生法の営業許可・酒類販売業免許・消防法対応など、製造免許以外の手続きも並行して進める
クラフトビール醸造は、許認可の観点からも準備に時間がかかる事業です。税務署への事前相談を早めに行いつつ、行政書士などの専門家のサポートも活用しながら、しっかりと開業準備を進めていただければと思います。
※なお、酒類製造免許の取得は義務です。製造開始前に必ず免許を取得してください。無免許製造は酒税法違反となり、重い罰則が科されます。



なるほど!税務署への申請が必要で、ビール免許と発泡酒免許があって、最初は発泡酒免許から始めるのが現実的なんですね。食品衛生法や販売免許もいるし、思ったより手続きが多いですね。



そうですね。製造・販売・飲食と、やりたいことによって必要な許可が変わってくるので、最初に全体像を把握してから動くことが大切ですよ。



わかりました!よし、まずは税務署に行って…あ、でも自家製ビールを試作しようと思ってたんですが、それって違法でしたか?



それが一番やってはいけないことですね…。









