助手セバスチャンリファンド方式って、実際レジで何をどうすればいいんでしょう?お客さまへの返金って、現金で渡すんですか?



そこが今回の改正で一番悩ましいところですね。実は返金の方法は法令で決められていないんです。つまり、お店ごとに自分で設計しなければなりません。



えっ、自由なんですか。それはそれで困りますね……。



そうなんです。レジの手順、返金方法、システム対応、そして会計処理まで、順番に整理していきましょう。
2026年11月1日から始まる免税制度のリファンド方式。制度の内容は理解できても、「では明日から現場で何をどう変えるのか」という段階になると、途端に検討すべきことが増えてきます。
しかも、開始まで残り2か月半ほどという時期に差しかかっています。システムの改修にはリードタイムがかかりますし、返金方法の決定は接客手順にも会計処理にも影響します。逆算して着手しないと間に合わないのが実情です。



この記事では、制度の解説ではなく実務の設計に焦点を当てて、レジでの接客手順、返金方法の選び方、POS・免税システムの対応、会計と消費税申告への影響、そして想定されるトラブルへの備えを順に整理していきます。
あわせて読みたい:【2026年11月開始】免税制度のリファンド方式とは?変更点をわかりやすく解説
レジでの接客手順はこう変わる


まず、店頭のオペレーションがどう変わるのかを手順単位で並べてみます。
| 現行制度の手順 | リファンド方式の手順 | |
|---|---|---|
| 1 | 旅券を提示してもらう | 旅券を提示してもらう |
| 2 | 一般物品と消耗品に区分する | (区分は不要) |
| 3 | 区分ごとに5,000円以上かを判定する | 合計で税抜5,000円以上かを判定する |
| 4 | 消耗品を特殊包装・封印する | (特殊包装は不要) |
| 5 | 税抜価格で会計する | 税込価格で会計する |
| 6 | 購入記録情報を送信する | 購入記録情報を送信する |
| 7 | — | 返金の条件と方法を説明する |
| 8 | — | 返金先の情報を受け取る |
作業として消えるのが手順2〜4、新たに加わるのが手順7〜8です。包装や区分判定といった「手を動かす作業」が減り、代わりに「説明する作業」が増えるという構造の変化だと捉えてください。
問題は、この入れ替えがレジの滞留時間にどう影響するかです。特殊包装がなくなる分は明らかに短縮されますが、返金の説明と返金先情報の取得には、言語の壁もあってそれ以上に時間がかかる可能性があります。何も対策をしなければ、繁忙期のレジは今より混雑すると考えておいたほうがよいでしょう。
対策としては、次の3つが現実的です。
- 多言語の案内カードを用意する:口頭説明を最小限にし、カードを渡して読んでもらう形にします。90日以内の出国・税関確認、全点の持ち帰り、返金の方法と時期の3点を記載しておきます
- 返金先情報の入力を旅行者本人に任せる:QRコードからスマートフォンで入力してもらう形にすれば、レジのスタッフが聞き取って入力する手間と誤入力を同時に減らせます
- 説明をレジ前で完結させない:免税の条件を店内のポップやレジ待機列の掲示で先に伝えておけば、レジでの説明は確認だけで済みます
説明すべき内容のうち、必ず伝えなければならないのは「購入した商品はすべて持ち帰ること」です。同一の購入記録情報に含まれる物品を1点でも所持していないと、その記録に含まれるすべての物品について税関の確認を受けられない取扱いになっているためです。ここを伝え漏らすと、後日「返金されない」というトラブルに直結します。
返金方法をどう選ぶか|4つの選択肢を比較
リファンド方式で最も設計の自由度が高く、そして最も悩ましいのが返金方法です。国税庁も次のように示しています。
返金手続をどのように実施するかは消費税法令において何らルールを定めているものではありません。
国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」より
ルールがないということは、店舗が自ら決めなければならないということです。主な選択肢を比較すると、次のようになります。
| 返金方法 | 店側の手間 | コスト | 主なリスク | 向いている店舗 |
|---|---|---|---|---|
| クレジットカードへの返金 | 小〜中 | 決済手数料程度 | カードの有効期限切れ・解約 | カード決済比率が高い店舗 |
| 決済アプリ・電子マネー送金 | 小 | サービス利用料 | 旅行者がアプリ未導入だと使えない | 特定の国・地域の客層が中心の店舗 |
| 銀行振込(海外送金) | 中〜大 | 送金手数料が高額 | 口座情報の誤りによる不着 | 高額販売が中心の店舗 |
| 出国港での現金受け取り等 | 大(委託が前提) | 委託費用 | 旅行者の受け取り忘れ | 大規模店・委託先を使える店舗 |
選定でまず検討していただきたいのが、手数料と返金額の逆転という問題です。たとえば税抜5,000円の購入であれば、返金する消費税相当額は500円です。ここに海外送金手数料が数千円かかるとすれば、返金の実行そのものが成り立ちません。
そのため、下限額に近い少額購入が中心の店舗では、送金コストのかからない方法を選ぶ必要があります。カードへの返金や決済アプリ送金が現実的な選択肢になるのは、この理由からです。逆に高額商品を扱う店舗であれば、送金手数料の比重が小さくなるため、銀行振込も選択肢に入ります。
もう一つ決めておくべきなのが、手数料を誰が負担するかです。返金額から差し引くのか、店舗が負担するのか。差し引く場合は、購入時にその旨を明示しておかないと後々のトラブルになります。返金までに要する日数とあわせて、案内カードに明記しておきましょう。
なお、自店で返金事務を行うほかに、免税手続を承認免税手続事業者へ委託するという選択肢もあります。商業施設内のテナントなどでは、施設の免税手続カウンターに委託する形が現実的です。委託手数料はかかりますが、返金事務の負担を店舗が抱えずに済みます。
POS・免税システムの対応をどう進めるか


システム対応は、着手が遅れると最も取り返しがつかない部分です。次の順序で進めてください。
ステップ1:現行システムの棚卸し
まず、自店が現在どのような仕組みで免税販売を処理しているかを確認します。POSレジに免税機能が組み込まれているのか、別の免税システムを併用しているのか、購入記録情報の送信は誰がどう行っているのか。この整理ができていないと、ベンダーに何を相談すべきかも見えてきません。
ステップ2:ベンダーへの確認
システムの提供元に、次の点を確認します。
- リファンド方式に対応した新しい購入記録情報の項目に対応するか
- 税関確認情報を照会・取得する機能が実装されるか
- 返金処理と、その記録を保存する機能があるか
- 対応版の提供時期はいつか、追加費用はいくらか
- 現在使用している端末のまま使えるか、機器の入れ替えが必要か
このうち見落とされがちなのが、税関確認情報の照会機能です。リファンド方式では、免税店側から照会して税関確認の結果を取得する仕組みになっています。自動で通知が届くわけではないため、この機能がなければ返金の可否を判断できません。
ステップ3:自社対応か委託かを決める
システム改修の費用や手間が見合わないと判断した場合は、免税手続そのものを承認免税手続事業者に委託する道もあります。なお、現在一般型の免税店が新たに委託を始める場合には、「輸出物品販売場等変更届出書」を遅滞なく所轄税務署長に提出する必要があります。
間に合わない場合の判断
万一、11月1日までに体制が整わない場合は、免税販売を一時停止するという判断も検討に値します。準備不足のまま運用を始めて購入記録情報の送信漏れや返金トラブルを起こすほうが、リスクとしては大きいためです。免税販売をやめる場合にも届出が必要ですので、その場合は所轄税務署に相談してください。
会計・消費税申告はこう変わる
実務上、意外と影響が大きいのが会計処理です。リファンド方式では、販売した時点ではまだ免税が成立していないため、処理が二段階になります。
具体的には、商品を販売した時点では「課税売上げ」として処理します。その後、税関確認情報を保存して免税の要件を満たした時点で、「課税売上げ」から「免税売上げ」へ振り替える処理を行います。
| タイミング | 消費税区分 | 返金 |
|---|---|---|
| 販売時 | 課税売上げ | まだ行わない |
| 税関確認情報を保存した後 | 免税売上げへ振替 | 消費税相当額を返金する |
| 税関確認が得られなかった場合 | 課税売上げのまま | 返金しない |
つまり、旅行者が出国時に税関確認を受けなかった場合、その取引は通常の課税売上として扱われ、返金も発生しません。店舗としては、預かった消費税をそのまま納税することになります。損をするわけではありませんが、「返金されると思っていた」旅行者との認識のずれが生じないよう、購入時の説明が重要になります。
あわせて、記録の保存も忘れてはいけません。購入記録情報と税関確認情報を保存することが求められますので、システム上でどのように保存され、必要なときに取り出せるのかを確認しておきましょう。返金を実行した記録も、あわせて残しておくことをおすすめします。
なお、決算期末の直前に販売し、税関確認が翌期になるケースの具体的な処理や、返金手数料を店舗が負担した場合の税務上の取扱いについては、個別の事情によって判断が分かれる可能性があります。免税売上の比率が大きい店舗ほど影響も大きくなりますので、顧問税理士と早めに認識を合わせておくことを強くおすすめします。
根拠法令:消費税法
想定されるトラブルと現場の対応
制度開始直後は、現場での混乱がある程度避けられません。あらかじめ想定して備えておきましょう。
- 「返金がまだ来ない」と問い合わせが来る
税関確認から返金までにどれくらいの日数がかかるのかを、購入時に必ず伝えておきます。あわせて、税関確認情報をいつ照会するのかを業務ルールとして決めておきましょう。「週に1回まとめて照会する」といった運用にする場合、そのリードタイムも含めて案内する必要があります。
- 1点足りずに全体が対象外になる
税関で1点でも所持していないと、その購入記録に含まれる全物品が確認を受けられません。対策は事前の案内に尽きます。購入点数を記載したカードを渡す、レシートに「すべて持ち帰ってください」と多言語で印字するなど、伝わる形にしておきましょう。
- 90日の期限を過ぎてしまう
購入日から90日以内の出国が条件です。レシートや案内カードに期限の日付そのものを印字しておくと、旅行者にも分かりやすく、後の説明も楽になります。
- 返金先情報の誤りで返金が届かない
口座番号やカード情報を店舗スタッフが聞き取って入力すると、誤りが起きやすくなります。旅行者本人に入力してもらい、確認画面を経る運用にするのが安全です。返金が不着だった場合の再手続きのルールも、あらかじめ決めておきましょう。
- 繁忙時間帯にレジが混雑する
説明に時間がかかる分、ピーク時の対応が課題になります。免税対応を専任にするスタッフを置く、事前説明を掲示で済ませるなど、レジ前での所要時間を削る工夫が必要です。
開始までの準備スケジュール
2026年11月1日の開始まで、残された時間から逆算した進め方を整理します。
8月中:現状把握と方針決定
現行システムの棚卸しを行い、ベンダーに対応状況を照会します。並行して、返金方法の候補を洗い出し、自店の客単価と客層に照らして絞り込みます。この2つは他のすべての作業の前提になるため、最優先で着手してください。
9月中:発注と制作
システム改修を発注し、返金方法を正式に決定します。決定した内容をもとに、多言語の案内カード・店内ポップ・レシートの記載内容を制作します。スタッフ向けの研修資料もこの時期に作成します。
10月中:確認・研修・リハーサル
最も重要なのが、「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を提出済みかどうかの最終確認です。令和8年10月31日までにこの届出書を提出していない電子化未対応の店舗は、許可の効力を失うこととなります。ここが未対応のまま11月を迎えると、免税販売そのものができなくなります。
あわせて、システムのテスト、スタッフ研修、案内物の設置を進めます。販売から照会・返金までを一度通しで試しておくと、当日の不安が大きく減ります。
11月1日以降:稼働と検証
新方式での運用を開始します。移行期間は設けられておらず、10月31日までは現行方式、11月1日からは新方式と切り替わりますので、切替日の運用を明確にしておきましょう。稼働後は、最初の返金が完了するまでの一連の流れを実際に検証し、必要に応じて手順を修正していきます。
免税店の許可そのものについては、こちらの記事で解説しています。
あわせて読みたい:免税店になるには?輸出物品販売場許可の要件と申請方法を解説
まとめ:勝負は「返金方法の設計」と「説明の仕組み化」
リファンド方式への実務対応で、押さえるべき要点を整理します。
- レジ作業は包装・区分といった手作業が減り、説明の作業が増える
- 返金方法は法令で定められておらず、店舗が設計する。少額購入中心なら送金コストのかからない方法を選ぶ
- 手数料の負担者と返金までの日数を決め、購入時に明示する
- POS・免税システムは税関確認情報の照会機能の有無を必ず確認する
- 会計処理は販売時は課税売上げ、税関確認後に免税売上げへ振替という二段階になる
- 税関確認が得られなければ課税売上げのままとなり、返金も発生しない
- 10月31日までに購入記録情報の提供方法等の届出書を提出していないと、許可が失効する
実務対応の成否を分けるのは、突き詰めれば「返金方法をどう設計するか」と「旅行者への説明をどう仕組み化するか」の2点です。前者は資金繰りとコストに、後者はトラブルの発生率に直結します。どちらも今から検討を始めれば十分に間に合いますので、後回しにせず着手してください。
※なお、免税販売の手続を適正に行っていない場合には、許可が取り消されることがあります。購入記録情報の提供は法令上の義務ですので、確実に対応してください。



よし、まずは返金方法を決めます!うちはお土産屋さんで客単価が5,000円くらいだから……海外送金だと手数料のほうが高くなっちゃいますね。



その通りです。よく気づきましたね。返金額が500円で送金手数料が数千円では、制度として成り立ちません。カードへの返金かアプリ送金を軸に考えるのが現実的でしょう。



分かりました!あと、レジの説明時間を短くするために、案内カードも作ります。全部で30言語くらい用意しておけば完璧ですね!



30言語のカードをレジ横に並べたら、カードを探す時間のほうが長くなりませんか。






