旅行業法に定める旅行業務にあたる事業を行う場合、旅行業者の登録が必要です。
旅行業はその取り扱う業務の範囲に応じて、第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業、旅行業者代理業に分かれます。(このほか旅行サービス手配業という区分もあります)
これらのどの旅行業種を営むかによって、登録するための条件(要件)は異なります。そこで、旅行業登録を検討するに当たっては、まず4つの基本的な要件を満たすことができるか、欠格要件に該当しないかを確認することが必要です。
登録申請の要件
登録申請において必要とされる主な要件を紹介していきます。なお、基本はこれから記載する4点ですが、申請先の行政機関によって満たすべき要件が若干異なる場合があるので、事前の確認が必要です。(例えば東京都では既存旅行業者との類似商号を避ける必要があります。)
①財産的基礎
旅行業の登録においては、「基準資産額」という指標を用いて申請者の財産状況を把握します。
基準資産額は、以下の計算式により算出します。申請の直近の事業年度の確定決算書から算出します。
基準資産額=
【(資産の総額)-(創業費その他の繰延資産) -(営業権)-(不良債権)】
-(負債の総額)
-(所要の営業保証金又は弁済業務保証金分担金)
ざっくりいうと、現状の会社(個人)の資産や負債を清算したときに手元に残る金額と考えるとわかりやすいと思います。この金額が、これが旅行業の種別に応じて下記である必要があります。
旅行業の種別 | 基準資産額 |
---|---|
第1種旅行業 | 3,000万円 |
第2種旅行業 | 700万円 |
第3種旅行業 | 300万円 |
地域限定旅行業 | 100万円 |
旅行業者代理業 | なし |
旅行サービス手配業 | なし |
②営業保証金
旅行業法では、旅行者(消費者)の保護を目的として、旅行業者に一定の金額を営業保証金として供託することを義務付けています。この制度により、債務不履行により旅行者に弁済する必要が発生した際にも、旅行者は供託された保証金から弁済を受けることができるのです。
しかし、旅行業法上定められた営業保証金(供託金)は決して安くはなく、事業者にとって高いハードルとなります。そこで、旅行業協会の正会員となり、分担金という形で納付して旅行業協会が会員の保証金を一元に供託することで、一事業者当たりの納付額が少額になることで負担を軽減させることが可能になっています。
旅行業の種別 | 営業保証金(最低額) | 弁済業務保証金分担金(最低額) |
---|---|---|
第1種旅行業 | 7,000万円 | 1,400万円 |
第2種旅行業 | 1,100万円 | 220万円 |
第3種旅行業 | 300万円 | 60万円 |
地域限定旅行業 | 15万円 | 3万円 |
旅行業者代理業 | 不要 | 不要 |
旅行サービス手配業 | 不要 | 不要 |
③総合又は国内の旅行業務取扱管理者の選任
国家資格である総合旅行業務取扱管理者または国内旅行業務取扱管理者を選任し、常勤専任で就業させる必要があります。
この際、複数営業所を設ける場合は、1営業所につき1人以上必要となります(従業員が10名以上の場合は複数の取扱管理者の選任が必要)。海外旅行を取り扱う営業所では総合旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
④(法人の場合)定款と登記事項証明書の記載
法人の場合、旅行業の登録申請において定款と登記事項証明書の添付が必要ですが、目的欄に「旅行業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業」と記載する必要があります。
欠格要件
旅行業法で定める登録拒否事項(欠格要件)に該当する場合は、その登録することはできません。
旅行業・旅行業者代理業の登録拒否要件
⑴ 旅行業法第19条の規定により旅行業若しくは旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第37条の規定により旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)
旅行業法第6条
⑵ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
⑶ 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)
⑷ 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
⑸ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記⑴から⑷のいずれかに該当するもの
⑹ 心身の故障により旅行業若しくは旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
⑺ 法人であって、その役員のうちに上記⑴から⑷又は⑹のいずれかに該当するもの
⑻ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
⑼ 営業所ごとに旅行業法第11条の2の規定による旅行業務取扱管理者を確実に選任すると認められない者
⑽ 旅行業を営もうとする者であって、当該事業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しないもの
⑾ 旅行業者代理業を営もうとする者であってその代理する旅行業を営む者が2以上であるもの
旅行サービス手配業の登録拒否要件
⑴ 旅行業法第19条の規定により旅行業若しくは旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第37条の規定により
旅行業法第26条
旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(当該登録を取り消された
者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していない者を含む。)
⑵ 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
⑶ 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。第8号において同じ。)
⑷ 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
⑸ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記⑴から⑷又は⑺のいずれかに該当するもの
⑹ 心身の故障により旅行サービス手配業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
⑺ 法人であって、その役員のうちに上記⑴から⑷又は⑹のいずれかに該当する者があるもの
⑻ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
⑼ 営業所ごとに旅行業法第28条の規定による旅行サービス手配業務取扱管理者を確実に選任すると認められないもの