助手セバスチャン公庫に相談に行ったら「創業計画書を書いてきてください」って言われて様式をもらったんですが…これ、A3の紙1枚だけなんです。こんなに小さい欄に、何を書けばいいんでしょう?



意外とコンパクトでしょう。でもあの1枚が融資審査の中心になる書類です。書ける量が限られているぶん、どこに何を書くかで差がつきます。



じゃあ、この事業にかける熱い思いをびっしり書き込めばいいんですね!余白がなくなるくらい!



気持ちは分かりますが、方向がちょっと違いますね。融資の審査担当者が知りたいのは、熱意そのものではなく「貸したお金が返ってくるか」です。書くべきことの優先順位を、一緒に整理していきましょう。
日本政策金融公庫の創業融資を申し込むとき、必ず提出を求められるのが創業計画書です。決算書のない創業者にとって、この1枚が「自分の事業が成り立つ」ことを証明する唯一の材料になります。逆に言えば、ここが弱いと、どれだけ良いアイデアでも融資には結びつきません。
ところが実際に様式を前にすると、多くの方の手が止まります。欄は小さく、項目名は抽象的で、どこまで細かく書くべきかの基準が示されていないからです。結果として、「創業の動機」に思い入れを長々と書き、肝心の数字の欄は空欄に近い――そんな計画書が出来上がってしまいます。



この記事では、創業計画書の各欄に何を書くべきかを項目別に整理し、宿泊業・飲食業・キャンプ場・旅行業といった観光事業者が押さえるべき書き方のポイントを解説します。あわせて、審査で落とされやすい書き方のパターンも具体的に紹介します。
創業計画書とは?補助金の事業計画書とは審査軸がまったく違う
創業計画書は「事業が計画どおりに回り、借りたお金を返済できることを数字で示す書類」です。日本政策金融公庫が用意しているA3・1枚の所定様式で、公庫の各支店の窓口のほか、公式サイトの書式ダウンロードのコーナーから入手できます。
ここで最初に押さえていただきたいのが、補助金の事業計画書とはまったく別物だということです。同じ「計画書」という名前がついていても、審査する側の関心が根本的に違います。
| 補助金の事業計画書 | 公庫の創業計画書 | |
|---|---|---|
| 審査の軸 | 国や自治体の政策目的に合致するか | 貸した資金が返済されるか |
| 競争の性質 | 他の申請者との相対評価(採択枠がある) | 絶対評価(基準を満たせば通る) |
| 評価されること | 新規性・波及効果・社会的意義 | 収支の実現性・返済原資の確保 |
| 数字の役割 | 取り組みの成果目標を示す | 返済可能性を検算する材料 |
補助金では「この取り組みは地域にどんな波及効果をもたらすか」を熱く語ることに意味があります。しかし融資では、その熱量は評価の中心になりません。審査担当者が創業計画書を手に取ってまず確かめるのは、毎月の返済額を上回る利益が、無理のない前提で生まれるかどうかです。夢の大きさではなく、算数の確かさが問われる書類だと理解してください。
もっとも、動機や思いを書く必要がないという意味ではありません。様式にはきちんと「創業の動機」の欄があり、そこには相応の役割があります。ただしその役割も、「情熱を伝えること」ではなく「この人は準備を積み上げてきた人だ」と納得してもらうことにあります。この違いを意識するだけで、書く内容は大きく変わってきます。
なお、公庫の公式サイトでは業種別の記入例が公開されています。洋風居酒屋、美容業、中古自動車販売業、婦人服・子供服小売業、ソフトウェア開発業、内装工事業、学習塾、歯科診療所などの例があり、飲食業で開業する方には洋風居酒屋の例がそのまま参考になります。あわせて「創業計画書セルフチェックリスト」も用意されているので、書き上げたあとの点検に活用しましょう。
参考:各種書式ダウンロード(国民生活事業)|日本政策金融公庫
あわせて読みたい:日本政策金融公庫の創業融資とは?観光事業者向けに制度と使い方を解説
創業計画書の全体像|A3・1枚に収める8項目と自由記述欄
創業計画書は、8つの記入項目と自由記述欄で構成されています。まずは全体像と、各欄で審査担当者が何を見ているのかを押さえましょう。
| 記入欄 | 審査担当者が見ていること |
|---|---|
| 1. 創業の動機 | 思いつきではなく、準備を積み上げてきたか |
| 2. 経営者の略歴等 | この事業を回せる経験と実績があるか |
| 3. 取扱商品・サービス | 何で売上を立てるのか。強みと価格帯が具体的か |
| 4. 取引先・取引関係等 | 売上の当てと仕入ルートが確保されているか。回収・支払条件 |
| 5. 従業員 | 人員体制が売上規模と釣り合っているか。人件費の裏付け |
| 6. お借入の状況 | 個人の借入(住宅ローン・カードローン等)。返済負担の重さ |
| 7. 必要な資金と調達方法 | 資金使途が明確か。左右の合計が一致しているか |
| 8. 事業の見通し | 売上・利益の算出根拠。返済原資が確保できるか |
| 自由記述欄 | 上記で書ききれない補強材料 |
この中で審査の比重が圧倒的に大きいのが「7. 必要な資金と調達方法」と「8. 事業の見通し」です。この2つは、そのまま「いくら貸すか」「返せるか」の判断材料になります。時間をかけるべき配分を間違えないでください。
ひとつ注意が必要なのが、「6. お借入の状況」を軽く扱わないことです。ここは事業の借入ではなく、代表者個人の借入を書く欄です。住宅ローン、自動車ローン、カードローン、奨学金などが対象になります。「書かなければ分からないだろう」と考えるのは禁物で、公庫は信用情報を照会できます。申告漏れが後から判明すると、金額の多寡以上に「隠した」という事実そのものが信頼を大きく損ないます。住宅ローンがあるから融資が下りないということは通常ありませんので、正直に記載してください。
また、様式はできるだけ空欄を作らないことを意識しましょう。「該当なし」であればそう書けばよいのですが、埋まっていない欄が並ぶと、それだけで準備不足の印象を与えます。従業員を雇わない一人開業なら「当面は本人1名。売上が月○万円を超えた時点でアルバイト1名を採用予定」といったように、現状と今後の方針をセットで書けば欄が生きてきます。
「創業の動機」「経営者の略歴等」―熱意ではなく”再現性”を書く
この2つの欄はセットで読まれます。審査担当者は、動機欄で「なぜ始めるのか」を確認し、略歴欄で「この人にできるのか」を裏取りするからです。両方を通じて示すべきは熱意ではなく、再現性――つまり「この人が言っていることは、実際に起きそうだ」という感触です。
創業の動機は「なぜ今、この場所で、この業態か」で書く
創業の動機の欄で書くべきことは、大きく2つです。ひとつはそのビジネスを始めるに至った経緯、もうひとつは開業に向けてどこまで準備が進んでいるかです。
よくないのは、思い入れだけで欄が埋まってしまうパターンです。「昔から旅が好きで、いつか自分の宿を持ちたいと思っていました」という一文は、動機としては自然ですが、それだけでは審査の材料になりません。
説得力が出るのは、次の3点が入っているときです。
- 経験との接続:これまでの仕事の中で何を見て、何が課題だと感じたのか
- 立地・タイミングの必然性:なぜその地域なのか、なぜ今なのか
- 準備の進捗:物件、許認可の事前相談、資格取得、資金の積立、仕入先との交渉など
たとえば宿泊業なら、「ホテルのフロントで8年勤務する中で、外国人のお客様から○○という要望を繰り返し受けてきた。しかしこの地域には対応できる小規模宿がない。○年前から開業資金の積立を開始し、昨年から物件を探して△△町の物件を確保、保健所にも旅館業許可について事前相談済み」といった形です。ここまで書ければ、「思いつきではない」ことが数行で伝わります。
経営者の略歴等は「勤務先名」ではなく「実績の数字」を書く
略歴欄で最も多い失敗が、勤務先と在籍期間を並べただけで終わってしまうことです。「株式会社○○ホテル 2016年4月〜2025年3月」と書かれていても、そこから読み取れる情報はほとんどありません。
書くべきは、次のような内容です。
- 担当していた業務の中身(フロント/調理/仕入/集客/シフト管理など)
- 役職と、マネジメントした人数
- 担当していた店舗・施設の規模(客室数、席数、年商など)
- 数字で示せる実績(売上を前年比○%伸ばした、原価率を○%改善した、稼働率を○%まで引き上げた)
観光業は、同業種での実務経験が特に重く見られる分野です。飲食店なら調理と仕入の経験、宿泊施設ならオペレーションと集客の経験があるかどうかで、計画の信頼度は大きく変わります。逆に言えば、経験があるのにそれを書かないのは、持っている札を出さずに勝負するようなものです。
では未経験からの参入は不利かというと、不可能ではありません。ただしその場合は、経験不足を補う具体的な材料を計画書に盛り込む必要があります。
- 開業前に同業種で研修・勤務する予定があること(期間と受入先を明記)
- 経験のある人材を採用する目処が立っていること(できれば氏名・経歴・内諾の有無まで)
- フランチャイズ本部や運営受託会社の支援を受けること
- 前職で培ったスキルが転用できること(例:営業職としての法人開拓経験を、団体客の獲得に活かす)
大切なのは、「未経験ですが頑張ります」で終わらせないことです。足りないものを自覚したうえで、それをどう埋めるかまで書いてある計画書は、経験者の計画書より高く評価されることさえあります。
「必要な資金と調達方法」――左右の合計が一致しない計画書は読まれない
この欄は、左側に「必要な資金」(設備資金・運転資金)、右側に「調達の方法」(自己資金・親族等からの借入・公庫からの借入など)を書き、左右の合計額を一致させるという構造になっています。
まず大前提として、左右の合計が合っていない計画書は、その時点で中身を見てもらえません。単純なミスに見えますが、実際にかなりの頻度で起きます。数字を扱う書類の基本的な整合性が取れていないと、その先の売上予測の数字も信用されなくなってしまいます。提出前に必ず検算してください。
設備資金は見積書と1円単位で合わせる
設備資金の欄には、内装工事、厨房設備、家具・什器、車両、システム導入費などを書きます。ここで書いた金額は、提出する見積書や工事請負契約書の金額と一致していなければなりません。
「だいたい500万円くらい」という丸めた数字は避けてください。見積書が487万3,000円なのに計画書に500万円と書いてあると、差額の12万7,000円は何なのかという話になります。逆に、見積書のとおり正確に書いてあれば、それだけで「この人は数字を丁寧に扱う」という印象を与えられます。
相見積もりを取っている場合は、採用予定の見積書の金額で記載し、なぜその業者を選んだのかを面談で説明できるようにしておきましょう。
運転資金は「赤字期間の資金繰り」から逆算する
設備資金以上に説明が難しいのが運転資金です。ここで「運転資金 300万円」とだけ書かれていると、根拠のない数字と見なされます。
運転資金の適切な考え方は、開業から収支が黒字化するまでの期間、毎月いくら不足するかを積み上げるというものです。たとえば黒字化まで6か月かかると見込み、その間の月次の資金不足が平均40万円なら、240万円が必要な運転資金ということになります。この計算を示せば、金額に根拠が生まれます。
観光業の場合、開業時期と繁忙期の関係も運転資金の額を左右します。閑散期に開業して繁忙期を待つ形になるなら、その分だけ長く資金が必要です。ここを織り込んだ計画になっていると、業界を理解している人だと評価されます。
観光業で見落とされやすい費目
必要な資金の欄で計上漏れが起きやすいのが、次のような費目です。開業直前に「そういえばこれも必要だった」と気づくと、資金が足りなくなります。
- 物件の保証金・敷金・礼金・仲介手数料(賃料の6〜12か月分になることもある)
- 開業前の家賃(工事期間中も賃料は発生する)
- 許認可の申請手数料と、行政書士などへの依頼費用
- 消防設備の設置・改修費用(用途変更に伴って想定外の工事が必要になることがある)
- 寝具・リネン・食器・アメニティなどの初期購入分
- 予約システム・POSレジ・PMSなどの初期導入費と月額利用料
- 開業前の広告宣伝費(ウェブサイト制作、写真撮影、OTAへの登録準備)
- 開業前に採用した従業員の人件費と研修費
特に消防設備と用途変更は、宿泊施設やキャンプ場の開業で予算が大きくぶれる要因です。事前に消防署と建築部局へ相談し、必要な工事の見込みを把握したうえで計上してください。
業態ごとにどの費目が重くなるのか、総額としてどれくらいの規模になるのかは、次の記事で一覧にまとめています。積算の出発点として活用してください。
あわせて読みたい:観光ビジネスの開業資金はいくら?業態別・必要資金の目安一覧
あわせて読みたい:旅館業の許可申請の流れと必要書類|取得までの期間と費用の目安
「事業の見通し」―観光業の売上根拠はこう組み立てる
創業計画書の最重要項目が、この「事業の見通し」です。創業当初と軌道に乗った後の2つの時点について、売上高・売上原価(仕入高)・経費・利益を記入し、右側の欄にその算出根拠を書く構成になっています。
多くの人が売上高の数字だけを埋めて根拠欄を薄く済ませてしまいますが、審査で読まれているのは圧倒的に根拠欄のほうです。ここが本丸だと考えてください。
売上高は「分解式」で示す
売上高は、必ず掛け算の形に分解して書きます。業態ごとの基本形は次のとおりです。
- 宿泊施設:客室数 × 客室稼働率 × 平均客室単価(ADR)× 営業日数
- 飲食店:客席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数
- キャンプ場・グランピング:サイト数 × 稼働率 × サイト単価 × 営業日数
- 旅行業:催行本数 × 1本あたり参加人数 × 参加費 × 取扱手数料率
- 物販・土産店:1日あたり客数 × 客単価 × 営業日数
大事なのは、この式に入れるそれぞれの数値にも根拠を添えることです。「稼働率60%」と書くだけでは、なぜ60%なのかが分かりません。近隣の同規模施設の稼働状況、観光庁や自治体が公表している宿泊統計、前職で担当していた施設の実績――こうした外部の数字を引くと、一気に説得力が増します。
客単価についても同じです。飲食店なら、想定するメニュー構成と価格帯から算出した平均単価を示し、実際のメニュー案を別紙で添えると理解が早くなります。
創業当初と軌道に乗った後は「差の理由」で説明する
この2列は、なぜ数字が変わるのかを説明できることが本質です。創業当初は認知度が低く稼働率も上がりませんが、軌道に乗った後は数字が改善する。その改善が「なんとなく増える」ではなく、具体的な要因に紐づいている必要があります。
たとえば宿泊施設なら、「創業当初は自社サイトのみの販売で稼働率35%。3か月目からOTA(宿泊予約サイト)2社への掲載を開始し、レビューが蓄積する6か月目以降は稼働率55%を見込む」といった書き方です。時期・打ち手・数値の3点セットで書けば、絵に描いた餅ではなくなります。
軌道に乗る時期は、業態によりますがおおむね6か月〜1年程度で設定するのが一般的です。あまりに急激な右肩上がりは、かえって計画の甘さと受け取られます。
原価率・人件費率は業界の相場感から外れないように
売上原価と経費についても、比率の妥当性が見られます。飲食店であれば、食材原価率30%前後、人件費率30%前後、この2つを合わせたFLコストが60%を超えると利益が出にくくなる、といった業界水準があります。宿泊業なら、人件費率は飲食を併設するかどうかで大きく変わります。
計画書の数字がこの相場から大きく外れている場合―たとえば原価率20%、人件費率15%といった数字を並べている場合―は、根拠を求められます。実現できる理由(仕入ルートの優位性、家族経営で人件費を抑えられる等)があるなら明記し、単に利益を大きく見せるために低く置いているだけなら、現実的な数字に直してください。利益を大きく見せた計画書ほど、疑われます。
観光業の最大の論点は「季節変動」
そして観光業で必ず押さえたいのが、季節変動を年間で均さないことです。
12か月すべて同じ稼働率で計算した計画書は、それだけで実態を理解していないと判断されかねません。海沿いのキャンプ場なら夏に集中し、スキー場周辺の宿なら冬が繁忙期、桜や紅葉の名所なら特定の数週間に需要が跳ねます。この山と谷を月別に織り込んだうえで、谷の月でも資金繰りが回ることを示せるかどうかが、観光業の計画書の分かれ目です。
具体的には、繁忙期・通常期・閑散期の3区分で稼働率を分けて設定し、月別の売上を積み上げます。そのうえで、閑散期の月次収支がマイナスになるなら、その赤字を埋める運転資金を確保している――ここまで示せれば、計画の解像度が高いと評価されます。閑散期対策(平日プラン、地元向け企画、長期滞在割引など)を自由記述欄に添えておくのも有効です。
あわせて読みたい:飲食店の収支シミュレーション|席数・回転率・客単価から損益分岐点を計算する
別紙と面談で差をつける|落とされやすいNG例


創業計画書はA3・1枚です。ここまで解説してきた内容をすべて書き込むことは、物理的に不可能です。そこで重要になるのが、別紙の活用です。
添付すると効果が高い別紙3種
① 月別12か月収支計画 様式の「事業の見通し」は月平均の数字を書く欄ですが、季節変動のある観光業では月平均だけでは実態が伝わりません。表計算ソフトで12か月分の売上・原価・経費・営業利益・借入返済額・現預金残高を並べた表を作り、添付します。現預金残高がどの月もマイナスにならないことが一目で分かる資料は、審査担当者にとって非常に読みやすい材料です。
② 売上根拠の詳細資料 分解式の各数値をどう置いたのかを説明する資料です。近隣競合の価格帯調査、参照した統計データ、想定するメニュー表や宿泊プラン表などを添えます。
③ 商圏・競合の調査資料 立地周辺の観光入込客数、競合施設の一覧と価格帯・稼働状況、自施設のポジショニングを整理したものです。「なぜこの立地なのか」への回答になります。
別紙は多ければよいというものではありません。A4で3〜5枚程度、要点が整理されたものが実用的です。
よくあるNG例
最後に、審査で評価を落としやすい書き方を挙げます。心当たりがないか確認してください。
- 数字が丸すぎる:売上300万円、経費100万円のように切りのいい数字ばかり並ぶと、積み上げていない印象を与える
- 稼働率が年間一律:観光業で季節変動を無視した計画は、業界理解を疑われる
- 自己資金の出所が説明できない:申込直前の大口入金は必ず確認される。通帳の履歴と説明の整合性が必要(詳しくは開業に自己資金はいくら必要?で解説しています)
- 借入の返済が損益に反映されていない:利益が出ていても、返済額を引いたら手元資金が回らない計画は通らない
- 創業の動機ばかり長く、数字の欄が薄い:配分の逆転はもっとも多い失敗
- 「6. お借入の状況」の記載漏れ:個人の借入は信用情報で確認される。隠すと信頼を失う
- 様式を自作する:所定様式があるので、独自フォーマットにする必要はない。補足は別紙で
- 専門家に丸投げして中身を把握していない:面談で説明できなければ意味がない
最後の点は特に重要です。面談では、計画書に書いた数字を自分の言葉で説明できるかが見られます。「なぜ稼働率を55%と置いたのですか」と聞かれて答えられなければ、その計画書は本人のものとして扱われません。作成を専門家に手伝ってもらうこと自体は問題ありませんが、提出前に必ず全項目を自分で説明できる状態にしてから面談に臨んでください。
あわせて読みたい:補助金申請書類の書き方完全ガイド|観光事業者のための事業計画書作成のコツ
まとめ:創業計画書は「説得する書類」ではなく「検算される書類」
創業計画書の書き方について、要点を整理します。
- 創業計画書は返済可能性を数字で示す書類。補助金の事業計画書とは審査軸が違う
- 8項目のうち、比重が大きいのは「必要な資金と調達方法」と「事業の見通し」。時間の配分を間違えない
- 創業の動機と略歴は、熱意ではなく再現性(経験・準備の進捗・数字の実績)を書く
- 必要な資金は左右の合計を一致させ、設備資金は見積書と正確に合わせる
- 運転資金は黒字化までの資金不足の積み上げで根拠を作る
- 売上高は分解式で示し、各数値に外部データなどの根拠を添える
- 観光業では季節変動を月別に織り込み、閑散期でも資金が回ることを示す
- A3に収まらない根拠は別紙で補い、面談では自分の言葉で説明できる状態にしておく
創業計画書は、読み手を感動させる書類ではありません。検算される書類です。審査担当者は電卓を片手に、書かれた数字が積み上がるか、返済額を引いても手元が回るかを確かめています。だからこそ、目指すべきゴールは「立派に見える計画書」ではなく、「第三者が検算しても破綻しない計画書」です。
そして、この作業は融資のためだけのものではありません。売上を分解し、原価率を置き、閑散期の資金繰りを月別に見通す――これは開業後に毎月向き合うことになる経営そのものです。創業計画書を丁寧に作り込んだ経験は、開業したその日から役に立ちます。
まずは公庫の様式と業種別記入例を手元にダウンロードして、書けるところから埋めてみてください。一度書いてみると、自分の計画のどこが曖昧なのかが見えてきます。その曖昧さを一つずつ潰していく作業が、そのまま審査への準備になります。
開業資金の準備は、次の順番で進めると迷いません。
- STEP1 いくらかかるか:観光ビジネスの開業資金はいくら?業態別・必要資金の目安一覧
- STEP2 いくら自分で用意するか:開業に自己資金はいくら必要?観光ビジネスの資金調達の考え方
- STEP3 公庫から借りる:日本政策金融公庫の創業融資とは?観光事業者向けに制度と使い方を解説
- STEP4 自治体の制度で借りる:制度融資と信用保証協会の仕組みとは?公庫融資との違いと使い分け
- STEP5 審査書類を作る:創業計画書の書き方ガイド|融資審査に通る事業計画のポイント(本記事)
※本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいています。様式や記入項目は改定されることがあるため、作成にあたっては日本政策金融公庫の公式サイトで最新の様式をご確認ください。



熱い思いを書き込む欄じゃなかったんですね…。売上を掛け算に分解して、閑散期でもお金が回るかまで見せる。なんだか思っていたより理系の作業でした。



いい整理ですね。感情ではなく算数で語る書類です。ただ、動機の欄が不要というわけではありませんよ。「準備を積み上げてきた人だ」と伝わる書き方をすれば、それも立派な判断材料になります。



よし、じゃあ稼働率は控えめに30%で出しておきます!あとで実際は80%でした、ってなったら担当の方も喜んでくれますよね。サプライズです!



サプライズは要りません。低すぎる計画は「それでは返済できませんね」と判断されて終わりですよ。控えめと過小はまったく別物です。






