助手セバスチャン免税店の「その場で税抜き価格で売る」やり方が、なくなるって聞いたんですが……。



はい、2026年11月1日からリファンド方式という新しい仕組みに変わります。これからはいったん税込価格で販売して、お客さまが出国された後に消費税分を返金する形になります。



返金……ということは、その場では安くならないんですか?お客さまに説明できる自信がありません。



そこが一番の変化ですね。仕組みを正しく理解しておけば説明はできますよ。今日は販売から返金までの流れを順番に見ていきましょう。
2026年11月1日から、外国人旅行者向けの消費税免税制度が大きく変わります。令和7年度税制改正によって決まったリファンド方式への移行です。
これまでの免税販売は、店頭で旅券を確認し、その場で消費税を差し引いた価格で販売する「購入時免税」でした。新しいリファンド方式では、店頭では税込価格で販売し、旅行者が出国時に税関で持ち出しの確認を受けた後に、免税店が消費税相当額を返金するという流れになります。
免税販売を行っている店舗はもちろん、これから免税店を目指す方にとっても、押さえておくべき制度変更です。



この記事では、リファンド方式の仕組みと販売から返金までの実務フロー、変更点、そして現場で注意すべきポイントを整理して解説します。
リファンド方式とは — 一言でいうと何が変わるのか


リファンド方式で最も本質的に変わるのは、免税が成立するタイミングです。
現行制度では、免税店が旅券を確認して免税販売を行った時点で免税が成立していました。物品が実際に国外へ持ち出されたかどうかは、その後の話です。これに対してリファンド方式では、旅行者が出国時に税関で持ち出しの確認を受けて、初めて免税が成立します。
この違いが、店頭のオペレーションを大きく変えます。
| 現行制度(2026年10月31日まで) | リファンド方式(2026年11月1日から) | |
|---|---|---|
| 免税が成立する時点 | 販売した時点 | 税関で持ち出しが確認された時点 |
| 店頭での販売価格 | 税抜価格(消費税を差し引く) | 税込価格(通常どおり) |
| 消費税相当額 | その場で免除 | 後日、免税店が返金 |
| 旅行者の手続き | 購入時の旅券提示のみ | 購入時の旅券提示+出国時の税関確認 |
「リファンド(refund)」とは返金という意味です。ヨーロッパをはじめとする多くの国では以前からこの方式が採られており、日本の制度が国際的に一般的な形に近づいた、と捉えることもできます。
店舗側から見ると、販売時点では通常の課税売上として処理し、税関確認を経て初めて免税売上に振り替わるという流れになります。会計処理や消費税の申告にも関わる変更ですので、税理士とも早めに認識を共有しておくことをおすすめします。
なぜ制度が変わるのか — 見直しの背景
制度が見直された背景には、大きく2つの事情があります。
1つ目は、免税で購入された物品が国外に持ち出されず、国内で転売されるケースへの対策です。現行制度では販売時点で免税が成立するため、購入者が実際に物品を持ち出したかどうかを確認する仕組みが十分ではありませんでした。免税で購入した商品を国内で転売する行為が問題として指摘されており、出国時に持ち出しを確認する方式に改めることで、制度の実効性を確保する狙いがあります。
2つ目は、免税店側の事務負担の重さです。現行制度では、免税店が「その物品は通常生活の用に供する物品か」「一般物品か消耗品か」を判断し、消耗品については開封できない特殊な包装を施す必要がありました。これらは現場にとって相応の負担であり、判断を誤れば店舗側が責任を問われるリスクもありました。
リファンド方式では、免税対象物品かどうかの判断は税関が出国時に行うことになるため、店舗側の判断責任が外れます。一般物品と消耗品の区分もなくなり、特殊包装も不要になります。この点は、現場の負担軽減として実務上のメリットが大きい変更です。
つまりこの改正は、「不正利用を防ぐために確認のタイミングを出国時へ移す」代わりに、「店舗の判断負担を軽くする」という組み合わせになっています。負担が一方的に増える改正ではない、という理解をしておくと全体像がつかみやすいと思います。
販売から返金までの実務フロー
リファンド方式では、販売から返金までが次の5つのステップで進みます。
| ステップ | 実施する人 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 販売 | 免税店 | 旅券で免税購入対象者であることを確認し、税込価格で販売する |
| ② 購入記録情報の送信 | 免税店 | 購入内容を国税庁の免税販売管理システムへ送信する |
| ③ 出国・税関確認 | 旅行者・税関 | 購入日から90日以内の出国時に、税関で物品の持ち出し確認を受ける |
| ④ 税関確認情報の取得 | 免税店 | 免税販売管理システムに照会し、税関確認の結果を取得する |
| ⑤ 返金 | 免税店 | 税関確認情報を確認したうえで、消費税相当額を旅行者に返金する |
ステップ②の購入記録情報は、現行制度でもすでに電子的に送信することが義務づけられているものです。この部分の仕組み自体は大きく変わりませんが、送信する内容や項目は新制度に合わせて変更されるため、システムの改修が必要になります。
ステップ④が新しく加わる作業です。免税店は国税庁の免税販売管理システムに対して照会(リクエスト)を送り、税関確認の結果を受け取ります。免税店側からシステムに問い合わせて取得する仕組みで、システムの応答自体は数秒から十秒程度とされています。裏を返せば、免税店が自ら照会しないと結果が分からないということですので、いつ・誰が照会作業を行うのかを業務フローに組み込んでおく必要があります。
ステップ⑤の返金方法については、法令上のルールが定められているわけではありません。
返金手続をどのように実施するかは消費税法令において何らルールを定めているものではありません。
国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」より
銀行振込、クレジットカードへの返金、決済アプリでの送金、出国港での現金受け取りなど、複数の方法が想定されています。自店の客層と規模に合った方法を選び、事前に設計しておくことが、新制度への対応で最も具体的な準備事項と言えるでしょう。海外送金の手数料負担をどうするかといった実務的な論点もありますので、早めに検討を始めてください。
根拠法令:消費税法
変更点を整理|負担が減る点・増える点
リファンド方式への移行にともなう変更点を、店舗の負担という観点から整理します。
負担が軽くなる点
| 項目 | 現行制度 | リファンド方式 |
|---|---|---|
| 物品の区分 | 一般物品と消耗品に区分して判定 | 区分を廃止し一本化 |
| 消耗品の上限額 | 50万円まで | 上限を撤廃 |
| 消耗品の包装 | 特殊包装・封印が必要 | 不要 |
| 免税対象物品の判断 | 免税店が判断 | 店側の判断は不要(税関が確認) |
現場にとって最も実感しやすいのは、消耗品の特殊包装が不要になる点でしょう。化粧品や食品をまとめて袋に入れ、封印シールを貼るという作業がなくなります。また、「これは一般物品か消耗品か」で迷う場面もなくなり、レジ対応の時間短縮につながります。50万円の上限が撤廃されるため、高額購入への対応もしやすくなります。
なお、購入下限額は税抜5,000円以上のまま維持されます。この判定は税抜価格で行い、一般物品と消耗品を区分せずに合算できるようになるため、下限額をクリアしやすくなるという実務上の効果もあります。
負担が増える点
一方で、次のような新しい負担が発生します。
- 消費税相当額の立替:販売から返金までの間、消費税相当額を店舗が預かる(実質的に立て替える)形になります
- 税関確認情報の照会作業:出国後に照会し、結果を確認する作業が新たに発生します
- 返金事務:返金方法の設計、返金の実行、記録の保存が必要になります
- 旅行者への説明:「その場で安くならない」ことの説明が必要になり、接客の難度が上がります
特に免税売上の比率が高い店舗ほど、立替による資金繰りへの影響は無視できません。月間の免税売上が大きい店舗では、消費税相当額が数十万円単位で滞留することになります。返金までのリードタイムを見込んだ資金計画を立てておきましょう。
現場で注意すべき5つのポイント


① 購入日から90日以内の出国が必要
旅行者は、購入日から90日以内に出国し、税関の確認を受ける必要があります。この期限を過ぎると免税は成立せず、返金も受けられません。長期滞在する旅行者や、複数回の入出国を予定している旅行者には、購入時に期限を明確に伝えておくことが重要です。
② 1点でも所持していないと、その記録すべてが確認を受けられない
これが最も注意すべき点です。税関の確認の際、同一の購入記録情報に含まれる物品のうち一つでも所持していなかった場合、その購入記録情報に含まれるすべての物品について確認を受けられないという取扱いになっています。
つまり、5点まとめて購入したうち1点を旅行中に使ってしまったり、人にあげてしまったりすると、残り4点も含めて全額が免税の対象外になります。旅行者にとっては影響が非常に大きく、「返金されないのはなぜか」というトラブルに直結する部分です。購入時に「購入した商品はすべて持ち帰ってください」と明確に案内しておく必要があります。
③ 返金方法を決めておく
前述のとおり返金方法は法令で定められていません。裏を返せば、店舗が自分で決めて運用を設計しなければならないということです。振込手数料や海外送金コストを誰が負担するのか、返金までにどれくらいの日数を要するのかを、あらかじめ決めて明示しておきましょう。
④ 資金繰りへの影響を見込んでおく
消費税相当額を一時的に預かる形になるため、その資金を運転資金として使ってしまうと、返金の段階で資金が不足するおそれがあります。免税販売分の消費税相当額は、返金原資として区別して管理する意識を持っておくと安全です。
⑤ 多言語での案内体制を整える
旅行者から見れば「その場で免税にならない」制度への変更です。なぜ税込で支払う必要があるのか、いつ・どのように返金されるのか、税関で何をすればよいのかを、旅行者の言語で説明できる体制が求められます。翻訳された案内文やレシートへの記載、案内カードの配布など、口頭説明に頼らない仕組みを準備しておきましょう。
2026年11月までに免税店がやるべき準備
電子化への対応(最優先)
現在すでに輸出物品販売場の許可を受けている店舗は、原則として新たな許可申請は不要です。令和8年10月31日時点で一般型または手続委託型の許可を受けている販売場は、11月1日に新制度における一般型輸出物品販売場の許可を受けたものとみなされる取扱いとされています。
ただし、重大な例外があります。免税販売手続の電子化に対応していない店舗、具体的には令和8年10月31日までに「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を提出していない場合、許可の効力を失うこととなります。これに該当すると11月1日以降は免税販売そのものができなくなりますので、まだ対応が済んでいない場合は最優先で手続きを進めてください。
なお、手続委託型として承認免税手続事業者に委託している場合は、委託関係に変更がなければ特段の手続なく継続できるとされています。逆に、一般型の免税店が新たに委託を始める場合などは、「輸出物品販売場等変更届出書」を遅滞なく所轄税務署長に提出する必要があります。
システム・POSの改修
購入記録情報の送信内容の変更と、税関確認情報の取得機能への対応が必要です。免税システムやPOSのベンダーに対応スケジュールを確認し、改修や入れ替えが必要であれば早めに手配しましょう。制度開始が近づくほどベンダー側の対応も混み合いますので、余裕を持った準備が求められます。
従業員研修と案内物の準備
制度変更の内容を従業員に周知し、旅行者に説明できるようにしておく必要があります。特に「その場では安くならない」「90日以内に出国して税関確認が必要」「購入した商品はすべて持ち帰る」の3点は、確実に伝えられるようにしておきましょう。多言語の案内カードやポップを用意しておくと、現場の負担が大きく減ります。
返金体制と資金の準備
返金方法を決定し、必要なアカウントや契約を整えます。あわせて、返金原資として滞留する資金の規模を試算し、資金繰り計画に反映させておきましょう。
あわせて読みたい:免税店になるには?輸出物品販売場許可の要件と申請方法を解説
まとめ:制度改正は「事務の再設計」の機会
リファンド方式のポイントを整理します。
- 2026年11月1日から、免税の成立時点が「販売時」から「税関確認時」へ移る
- 店頭では税込価格で販売し、出国後に消費税相当額を返金する
- 一般物品と消耗品の区分、消耗品の50万円上限、特殊包装は廃止される
- 購入下限額は税抜5,000円以上のまま維持される
- 購入日から90日以内の出国と税関確認が必要
- 同一の購入記録情報の物品を1点でも所持していないと、その記録全体が確認を受けられない
- 返金方法は法令で定められておらず、各店舗が設計する
- 電子化未対応の店舗は、許可が失効する
負担が増える面と減る面の両方がある改正ですが、店頭の作業手順・システム・接客案内・資金繰りを見直す必要があるという意味では、免税販売の事務全体を設計し直す機会と捉えるのが実際的です。制度開始まで残された時間は限られていますので、優先順位をつけて着手していきましょう。
※なお、免税販売の手続を適正に行っていない場合には、許可が取り消されることがあります。購入記録情報の提供は法令上の義務ですので、確実に対応してください。



分かりました!お客さまには「その場では安くなりませんが、出国のときに税関で確認を受けていただければ、後で返金します」って説明すればいいんですね。



その通りです。あと、「購入された商品は1つ残らず持ち帰ってください」も必ず添えてくださいね。1点でも足りないと、その買い物全部が免税の対象外になってしまいますから。



怖いですね……。じゃあ念のため、お客さまにお渡しする商品を全部ガムテープでぐるぐる巻きにして、開けられないようにしておきます!



…特殊包装が不要になったという話を、たった今したところなんですが。





