助手セバスチャン古民家を簡易宿所営業で営業する場合、客室の合計が33平方メートルあれば大丈夫なんですよね?



面積の基準はその通りです。ただ、簡易宿所の許可要件は面積だけではないんです。



えっ、まだあるんですか…?



大きく分けると4つあります。しかも、そのうちの衛生措置基準は許可を取ったあともずっと続く義務です。さらに、設備を完璧に整えても許可が下りないケースもあるんですよ。順番に確認していきましょう。
古民家やゲストハウスを開業する際、多くの方が選択するのが簡易宿所営業です。旅館・ホテル営業と比べて客室面積の判定方法が緩やかで、小規模な物件でも許可を取りやすいことがその理由です。
ただ、インターネットで情報を集めていると、「客室の延床面積33平方メートル以上」という数値ばかりが目立ちます。この数字は確かに重要ですが、許可要件の一部にすぎません。実際の申請では、換気や入浴設備といった他の構造設備基準、自治体の条例による上乗せ、そして申請者自身の資格要件まで審査されます。
さらに見落とされやすいのが、構造設備基準は「許可を取るための要件」であるのに対し、衛生措置基準は「営業を続けるあいだずっと守り続ける義務」であるという違いです。前者は工事で解決できますが、後者は日々の運営体制の問題になります。



本記事では、簡易宿所営業の許可要件を4つの角度から整理し、開業準備の段階で何を押さえておくべきかを解説していきます。
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簡易宿所営業の許可要件は大きく4つに整理できる
簡易宿所営業の許可を得るには、次の4つをすべてクリアする必要があります。
| 要件 | 内容 | いつ問われるか |
|---|---|---|
| ①構造設備基準 | 客室面積、換気・入浴・洗面・便所などの設備要件 | 申請時・施設検査時 |
| ②衛生措置基準 | 清掃、寝具の管理、浴槽水の管理などの運営体制 | 営業している期間ずっと |
| ③申請者の要件 | 欠格事由に該当しないこと | 申請時 |
| ④立地・他法令 | 学校等との距離、用途地域、建築基準法、消防法 | 物件選定時・申請時 |
このうち①と②は旅館業法とその関係法令が直接定めるもので、③は申請者本人に関する要件、④は物件そのものに関する要件です。準備の順序としては、④→③→①→②の順に確認していくのが効率的です。物件が使えなければ設備の検討は無意味ですし、申請者に欠格事由があればそもそも申請できないからです。
多くの方が①の数値基準から調べ始めるのですが、実務では④で計画が止まるケースが最も多いのが実情です。用途地域の制限で旅館業の許可が取れない土地だった、建物の用途変更に多額の費用がかかることが分かった、といった事態は、物件を契約したあとに判明すると取り返しがつきません。


もう一つ強調しておきたいのが②の位置づけです。構造設備基準は一度クリアすれば当面問題になりませんが、衛生措置基準は保健所の立入検査の対象となり、違反すれば改善命令や営業停止の対象にもなり得ます。「許可がゴール」ではなく「許可はスタート」という感覚を持っておくことが大切です。それでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
構造設備基準①:客室面積と階層式寝台【数値で決まる部分】
簡易宿所営業の構造設備基準は、旅館業法施行令第1条第2項に7つの号として定められています。このうち具体的な数値が示されているのは、客室面積と階層式寝台の2つだけです。
まず客室面積については、次のように規定されています。
客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
旅館業法施行令 第1条第2項第1号より
ここでのポイントは「延床面積」という言葉です。旅館・ホテル営業が1客室ごとに面積を判定するのに対し、簡易宿所営業は客室全体を合計して判定します。小部屋が複数ある古民家でも基準を満たしやすいのは、この違いによるものです。
カッコ書きの例外も重要です。一度に宿泊させる宿泊者の数を10人未満とする場合、1人あたり3.3平方メートルで足りるとされています。定員6人なら19.8平方メートル、定員8人なら26.4平方メートルが最低ラインです。2016年の規制緩和で設けられたこの特例により、小規模物件の活用が大きく進みました。ただし、定員を10人未満に設定するということは、それ以上宿泊させられないということでもあります。将来的に定員を増やしたい場合は、はじめから33平方メートルを確保しておくかどうかを検討する必要があります。
実務で迷いやすいのが、どこまでが「客室」の面積に算入されるかという点です。一般に、宿泊者が就寝のために使用する部分が客室とされ、玄関、廊下、階段、便所、浴室、フロント、調理場などの共用部分は含まれません。押入れやクローゼットの扱い、天井の低い小屋裏部分の扱いなどは自治体によって判断が分かれることがあります。図面上で33平方メートルぎりぎりという計画は、検査で足りないと判断されると致命的です。余裕を持たせた設計にするか、事前相談で明確に確認しておきましょう。
もう一つの数値要件が階層式寝台、いわゆる2段ベッドに関するものです。
階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
旅館業法施行令 第1条第2項第2号より
ドミトリー形式のゲストハウスでは必ず関係してくる基準です。市販の2段ベッドには上下間隔が1メートルに満たない製品もあるため、家具を選ぶ段階で寸法を確認しておく必要があります。「おおむね」とあるとおり多少の幅は認められますが、明らかに低いものは指摘の対象になります。
構造設備基準②:換気・入浴・洗面・便所と、条例による上乗せ
施行令第1条第2項の残りの号は、いずれも「適当な」という抽象的な表現で書かれています。具体的には、適当な換気・採光・照明・防湿・排水の設備、適当な規模の入浴設備、宿泊者の需要を満たす適当な規模の洗面設備、適当な数の便所を有すること、という内容です。
このうち入浴設備には例外があり、施設に近接して公衆浴場があるなど入浴に支障をきたさないと認められる場合は、設置しなくてもよいとされています。温泉地の宿で共同浴場が徒歩圏にあるケースなどが該当します。ただし「近接」の判断は自治体が行うため、これを前提に計画するなら事前確認が欠かせません。
そして、この条文でもっとも重要なのが最後の号です。
その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
旅館業法施行令 第1条第2項第7号より
つまり、施行令は最低限の枠組みを示しているだけで、実際の判断基準は条例に委ねられているという構造になっています。「適当な数の便所」が何個を意味するのかは、施行令を読んでも分かりません。自治体の条例や施行細則では、宿泊定員に応じた便所や洗面所の数、客室の天井高、廊下の幅、換気設備の能力といった具体的な数値が定められているのが一般的です。同じ規模の施設でも、所在地によって求められる設備が変わってくるということです。
ここで押さえておきたいのが、玄関帳場(フロント)の扱いです。旅館業法施行令では、玄関帳場に関する規定は旅館・ホテル営業についてのみ置かれており、簡易宿所営業には施行令上の直接の規定がありません。2018年の改正で、旅館・ホテル営業についても情報通信技術を活用した本人確認設備での代替が認められるようになりました。
とはいえ、簡易宿所であればフロントが不要と断定するのは早計です。多くの自治体では条例により、宿泊者との面接に適する設備や本人確認体制について独自の基準を設けています。ビデオ通話による本人確認を認める場合も、顔と本人確認書類が鮮明に確認できること、緊急時に駆けつけられる体制があることなど、条件が細かく定められているのが通例です。無人運営を前提に計画するなら、この点こそ最初に確認すべき事項といえます。
いずれにしても、条例は自治体ごとに異なります。「他県のゲストハウスがこうしていたから」という情報は参考にとどめ、必ず営業予定地を管轄する保健所の条例・細則にあたるようにしてください。
衛生措置基準とは?許可を取ったあともずっと続く義務
構造設備基準と並ぶもう一つの柱が、衛生措置基準です。旅館業法は営業者に対し、次のような義務を課しています。
営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
旅館業法 第4条第1項より
そして、この措置の具体的な基準についても、条例に委ねられています。
前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
旅館業法 第4条第2項より
条例で定められる内容は自治体により異なりますが、厚生労働省が示している「旅館業における衛生等管理要領」が実質的な指針となっており、多くの条例がこれに沿った内容になっています。主な項目を挙げると、客室・廊下・便所などの清掃と清潔保持、寝具のシーツやカバー類を宿泊者ごとに交換すること、寝具の定期的な洗濯と日光消毒、客室の照度確保、飲用水の水質管理、ねずみや害虫の防除、そして浴槽水の衛生管理です。
とくに注意が必要なのが浴槽水の管理です。レジオネラ症の発生を防ぐため、浴槽水の消毒や換水、清掃の頻度に加えて、水質検査の実施と記録の保管が求められます。衛生等管理要領では、ろ過器を使用しておらず毎日完全に換水している浴槽水は1年に1回以上、連日使用している浴槽水は1年に2回以上(塩素消毒以外の場合は1年に4回以上)の水質検査を行い、結果を3年間保管することとされています。循環式の浴槽を設ける場合は、配管の洗浄まで含めた管理が必要になるため、設備選定の段階で維持管理のコストを見込んでおくべきでしょう。
これらは保健所の立入検査で確認される項目です。検査では、実際の清掃状況だけでなく、清掃記録や水質検査結果といった記録の有無も見られます。「きちんとやっています」という説明ではなく、記録として残しておくことが求められるわけです。開業前に清掃チェックリストや点検記録の様式を用意しておくと、日々の運営がスムーズになります。
※なお、衛生措置は法律上の義務であり、努力義務ではありません。違反があれば改善命令の対象となり、命令に従わない場合は営業停止や許可取消しに至ることもあります。宿泊者の健康に直結する部分であり、施設の評判にも影響する領域です。


見落としやすい3つの要件:欠格事由・学校等との距離制限・宿泊者名簿
最後に、設備の話に集中していると抜け落ちがちな3つの要件を確認しておきます。いずれも「知らなかった」では取り返しがつかない項目です。
1つ目が欠格事由です。 旅館業法第3条第2項は、申請者が一定の事由に該当する場合、許可を与えないことができると定めています。具体的には、拘禁刑以上の刑に処せられて執行を終えた日から3年を経過していない者、旅館業の許可を取り消されてから3年を経過していない者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者、暴力団員またはその関係者、そしてこれらに該当する役員がいる法人などが挙げられています。法人で申請する場合は役員全員が審査対象になるため、共同経営を検討しているなら早い段階で確認しておく必要があります。
2つ目が学校等との距離制限です。 これは意外に知られていない規定で、施設の設置場所が学校や児童福祉施設などの敷地の周囲おおむね100メートルの区域内にある場合、その設置によって清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認められるときは、許可を与えないことができるとされています。対象となるのは、学校教育法上の学校(大学を除く)、幼保連携型認定こども園、児童福祉法上の児童福祉施設、そのほか都道府県の条例で定める施設です。
該当する場合、都道府県知事は当該施設の設置者などの意見を聴いたうえで判断することになります。100メートル以内にあれば必ず不許可というわけではありませんが、審査に時間がかかり、結果も読みにくくなります。物件の候補地が決まったら、地図上で周辺に学校や保育所がないかを確認する習慣をつけておきましょう。
3つ目が宿泊者名簿の備付け義務です。 旅館業法第6条により、営業者は施設に宿泊者名簿を備え、宿泊者の氏名・住所・連絡先などを記載し、都道府県知事の要求があったときは提出しなければなりません。連絡先の記載は2023年の法改正で明確化された項目で、感染症発生時の連絡などを想定したものです。日本国内に住所を持たない外国人宿泊者については、国籍と旅券番号の記載に加え、旅券の写しを保存することも求められます。名簿は一定期間の保存義務があり、これも立入検査で確認される書類です。
これら3つは、いずれも工事や設備投資では解決できない要件です。だからこそ、計画の初期段階で確認しておく価値があります。
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まとめ:数値基準は入口、続く義務まで見て計画する
簡易宿所営業の許可要件は、構造設備基準・衛生措置基準・申請者の欠格事由・立地や他法令の4つに整理できます。よく知られている「客室の延床面積33平方メートル以上」(定員10人未満なら1人あたり3.3平方メートル)は、このうち構造設備基準の一部にすぎません。
構造設備基準では、面積と階層式寝台の上下間隔おおむね1メートル以上という数値要件のほかに、換気・採光・照明・防湿・排水の設備、入浴設備、洗面設備、便所が求められます。ただし条文の表現は「適当な」という抽象的なもので、実際の判断基準は都道府県の条例に委ねられています。フロントの要否や無人運営の可否も条例次第であり、ここを確認せずに計画を進めるのは危険です。
そして、許可を取ったあとに続くのが衛生措置基準です。清掃、寝具の交換と洗濯、浴槽水の管理と水質検査、そしてそれらの記録の保管が日常的な義務となります。設備投資と違って一度で終わらない部分であり、運営体制として組み立てておく必要があります。
加えて、欠格事由、学校等との距離制限、宿泊者名簿の備付けという3つの要件も忘れてはいけません。物件を契約する前に、用途地域とあわせて周辺施設を確認しておくこと。これだけで避けられるリスクが確実にあります。
構造設備の細目、衛生措置の具体的基準、申請手数料などは、いずれも自治体の条例によって運用が異なります。準備を始める際は、営業予定地を管轄する保健所への事前相談を最優先に、消防署・建築部局とあわせて最新情報を必ずご確認ください。



なるほど…!面積さえクリアすればいいと思っていましたが、フロントの扱いも条例次第だし、許可のあとも掃除の記録を残さなきゃいけないんですね。しかも近所に小学校があるかどうかまで関係するとは…。



そうなんです。設備は工事で何とかなりますが、立地と申請者の要件は後から変えられません。だからこそ、物件を決める前に保健所へ相談しておくことが何より大事なんですね。



よし、記録が大事ということなので、掃除するたびに動画を撮って全部お客様に送りつける「透明性日本一の宿」を…!



どうですかね?それはもう、記録ではなく通知の押し売りじゃないでしょうか。

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