【旅行業】営業保証金制度・弁済業務保証金制度の概要と違い

レジャー観光業と許認可

旅行業者の登録を受ける際は、旅行業法に基づき営業保証金を供託しなければなりません。

しかし、必要な供託額は高額なため、旅行業協会に加入し弁済業務保証金を分担金として納付することにより、営業保証金の供託の代わりとすることができます。

したがって、登録を受けようとする事業者はあらかじめ営業保証金を供託するのか、旅行業協会に加入するのかを決めておかなければなりません。また、旅行業協会に加入する場合は2つの協会(日本旅行業協会・全国旅行業協会)のいずれにするかを選択する必要があるので、その検討も必要です。

本記事では、営業保証金制度と弁済業務保証金制度の概要やその違いについてまとめています。

なぜ保証金が必要なのか

まず、そもそもなぜ保証金の供託が必要なのでしょうか。

これは、旅行業務の性質上、高額な商品を取り扱うことがあり、また、出発前に旅行者から旅行代金を収受し、旅行終了後に宿泊等旅行サービスの提供者との間でその決済をすることが一般的な取引形態となっています。

もし旅行業者が倒産などしてしまい、旅行の実施ができなくなってしまった場合、旅行者は旅行代金を前払いしているにも関わらずサービスを受けられなくなってしまいます。このような事態が起きた際に供託していた保証金から旅行者に弁済を行うことで、旅行者の利益を保護することが目的です。

営業保証金制度の概要

(旅行業協会に加入していない)旅行業者と旅行業務の取引をした旅行者が、その取引によって生じた債権について、旅行業者が国に供託した営業保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度です。

営業保証金の供託~旅行者に弁済が行われるまでの流れは以下の通りです。

①旅行業者が供託所に保証金を供託する
②旅行者が旅行業者に代金を支払う
③旅行業者が倒産などの理由により旅行者に対する債務不履行が発生する
④旅行者が登録行政庁に還付の申し立てを行う
⑤登録行政庁が旅行者に還付の権利と金額の証明を行う
⑥旅行者が供託所に還付請求を行う
⑦供託所が旅行者に弁済を行う

供託する営業保証金の最低金額は以下です。なお、この金額は前事業年度の旅行業務に関する旅行者との取引の額によって変わり、登録時は初年度の取引見込み額を基に計算します。(したがって毎年必要な供託額は変わるという事です)

旅行業の種別営業保証金(最低額)
第1種旅行業7,000万円
第2種旅行業1,100万円
第3種旅行業300万円
地域限定旅行業15万円

弁済業務保証金制度の概要

旅行業協会の正会員である旅行業者と旅行業務の取引をした旅行者が、その取引によって生じた債権について、旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度です。

旅行業協会に保証金を納付~旅行者に弁済が行われるまでの流れは以下の通りです。

①旅行業者が旅行業協会に弁済業務保証金分担金を納付する
②旅行業協会が供託所に弁済業務保証金の供託をする
③旅行者が旅行業者に代金を支払う
④旅行業者が倒産などの理由により旅行者に対する債務不履行が発生する
⑤旅行者が旅行業協会に認証を申し出る
⑥旅行業協会が旅行者に認証を行う
⑦旅行者が供託所に還付請求を行う
⑧供託所が旅行者に弁済を行う

納付する弁済業務保証金分担金の最低金額は以下です。営業保証金の1/5の金額となっています。この金額も営業保証金同様に取引実績に応じて毎年変わります。

旅行業の種別弁済業務保証金分担金(最低額)
第1種旅行業1,400万円
第2種旅行業220万円
第3種旅行業60万円
地域限定旅行業3万円

営業保証金制度と弁済業務保証金の違い

以上のようにこれらの制度は旅行業者にとっても、その旅行業者と取引する旅行者にとっても大きな違いのある制度であることがわかりました。旅行業者にとっては供託(納付)先が、旅行者にとっては債務不履行を被った際の申出先が異なります。

なお、旅行業協会の加入には入会金だけでなく年会費もかかってきます。自社が営業しようとしている旅行業の種別によって受けられる恩恵の程度が変わってくるため、旅行業協会への加入はこれらの制度の違いを理解した上で自社にとって適切な選択を取る必要があります。

旅行業者が旅行代理業者の場合

旅行代理業者の場合には保証金制度はありません。これは、旅行代理業者はあくまで契約の代理であり、契約の当事者ではないためです。そのため、債務不履行が発生した際には旅行者は代理している旅行業者の営業保証金(弁済業務分担金)から弁済を受けることになります。