標準旅行業約款とは?まずは制度概要と全体像を把握しよう!

旅行業の登録申請の際にも必要になる「標準旅行業約款」。専門用語も多く登場し小難しい文章の羅列となるため、敬遠してしまう人もいるのではないでしょうか。

しかし、今後旅行業を営むにあたっては、契約の内容となる極めて重要な部分のため、きちんと理解しその内容を把握しておかなければなりません。

そこで本記事では、旅行業における「約款」の概要と全体像について解説します。

根拠法令:旅行業法

目次

約款とは

約款とは、大量の取引を画一的に処理するためにあらかじめ均一の契約内容を定めておいたものを指します。

旅行契約のように同じ取り決めで日々多くの取引を行う場合に、都度個別に契約内容を定め双方の合意を得て、契約を締結するという流れを踏む、というのはとても煩雑なため、あらかじめ定型の約款を定めておき、それを契約の内容とする旨を顧客に表示することで、サービス提供の合理化を図る役割をします。

利用者として意識していないとなかなか気づかないのですが、約款は日常生活の中でたくさん登場しています。例えばインターネットにおいて何かのサービスを申し込むときにも、「申し込み前にこちらをご確認ください」の中に約款は含まれています。読み飛ばす方が多いと思うのですが、この中にトラブルがあったときなんかの免責事項などが記載されており、知らずのうちに私たちは承諾したことになっているのです。

旅行業における「約款」

上記でわかったように、約款とは事業者があらかじめ一方的に作成する契約条項です。そのため、なんでも自由に定めてよいとなってしまうと、事業者にとって有利な内容になりかねません。

こうした事態を防ぐため、一般的には消費者契約法という法律により、消費者に不利益な不当条項は無効とされていますが、とりわけ旅行業においては、旅行業者は約款を定めて登録行政庁の認可を受けなければならないという制度が採用されています。

第十二条の二 旅行業者は、旅行者と締結する旅行業務の取扱いに関する契約に関し、旅行業約款を定め、観光庁長官の認可を受けなければならない。国土交通省令・内閣府令で定める軽微な変更をしようとする場合を除き、これを変更しようとするときも、同様とする。

旅行業法第12条の2

しかし、日々旅行業者は誕生しており、都度個別に認可しているのでは審査をする行政の負担も大きくなります。また、旅行業者にとってもいちいち約款の内容を一から起こすというは多大な労力を要することになります。そこで、観光庁長官及び消費者庁長官によりモデルとなる標準旅行業約款を公示しており、これと同じものを自社の約款として申請することで、その約款は認可されたものとみなされる、という制度を取っているのです。

第十二条の三 観光庁長官及び消費者庁長官が標準旅行業約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、旅行業者が、標準旅行業約款と同一の旅行業約款を定め、又は現に定めている旅行業約款を標準旅行業約款と同一のものに変更したときは、その旅行業約款については、前条第一項の規定による認可を受けたものとみなす。

旅行業法第12条の3

したがって、これから旅行業の登録を受けようとする事業者は、この標準旅行業約款の内容を把握しておくことがとても重要になります。

標準旅行業約款の全体像と構成

それでは標準旅行業約款の全体像について見てみましょう。標準旅行業約款は5つの部から構成されています。

標準旅行業約款①募集型企画旅行契約の部
②受注型企画旅行契約の部
 (特別補償規程)
③手配旅行契約の部
④渡航手続代行契約の部
⑤旅行相談契約の部

それぞれの部の構成は以下のようになっています。

募集型企画旅行契約の部

項目
(一)総則(一)~(四)適用範囲
用語の定義
旅行契約の内容
手配代行者
(二)契約の締結(五)~(十二)契約の申込み
電話等による予約
契約締結の拒否
契約の成立時期
契約書面の交付
確定書面
情報通信の技術を利用する方法
旅行代金
(三)契約の変更(十三)~(十五)契約内容の変更
旅行代金の額の変更
旅行者の交替
(四)契約の解除(十六)~(二十)旅行者の解除権
当社の解除権等-旅行開始前の解除
当社の解除権-旅行開始後の解除
旅行代金の払戻し
契約解除後の帰路手配
(五)団体・グループ契約(二十一)~(二十二)団体・グループ契約
契約責任者
(六)旅程管理(二十三)~(二十六)旅程管理
当社の指示
添乗員等の業務
保護措置
(七)責任(二十七)~(三十)当社の責任
特別補償
旅程保証
旅行者の責任
(八)営業保証金
 (又は弁済業務保証金)
(三十一)営業保証金(弁済業務保証金)
別表第一取消料
別表第二変更補償金

受注型企画旅行契約の部

項目
(一)総則(一)~(四)適用範囲
用語の定義
旅行契約の内容
手配代行者
(二)契約の締結(五)~(十二)企画書面の交付
契約の申込み
契約締結の拒否
契約の成立時期
契約書面の交付
確定書面
情報通信の技術を利用する方法
旅行代金
(三)契約の変更(十三)~(十五)契約内容の変更
旅行代金の額の変更
旅行者の交替
(四)契約の解除(十六)~(二十)旅行者の解除権
当社の解除権等-旅行開始前の解除
当社の解除権-旅行開始後の解除
旅行代金の払戻し
契約解除後の帰路手配
(五)団体・グループ契約(二十一)~(二十三)団体・グループ契約
契約責任者
契約成立の特則
(六)旅程管理(二十四)~(二十七)旅程管理
当社の指示
添乗員等の業務
保護措置
(七)責任(二十八)~(三十一)当社の責任
特別補償
旅程保証
旅行者の責任
(八)営業保証金
 (又は弁済業務保証金)
(三十二)営業保証金(弁済業務保証金)
別表第一取消料
別表第二変更補償金

特別補償規程

項目
(一)補償金等の支払い(一)~(二)当社の支払責任
用語の定義
(二)補償金等を支払わない場合(三)~(五)補償金等を支払わない場合-その一-
補償金等を支払わない場合-その二-
補償金等を支払わない場合-その三-
補償金等を支払わない場合-その四-
(三)契約の変更(六)~(十二)死亡補償金の支払い
後遺障害補償金の支払い
入院見舞金の支払い
通院見舞金の支払い
入院見舞金及び通院見舞金の支払いに関する特則
死亡の推定
他の身体障害又は疾病の影響
(四)事故の発生及び補償金等の請求の手続(十三)~(十五)傷害程度等に関する説明等の請求
補償金等の請求
代位
(五)携帯品損害補償(十六)~(二十三)当社の支払責任
損害補償金を支払わない場合-その一-
損害補償金を支払わない場合-その二-
補償対象品及びその範囲
損害額及び損害補償金の支払額
損害の防止等
損害補償金の請求
保険契約がある場合
代位
別表第一
別表第二
別表第三

手配旅行契約の部

項目
(一)総則(一)~(四)適用範囲
用語の定義
手配債務の終了
手配代行者
(二)契約の成立(五)~(十一)契約の申込み
契約締結の拒否
契約の成立時期
契約成立の特則
乗車券及び宿泊券等の特則
契約書面
情報通信の技術を利用する方法
(三)契約の変更及び解除(十二)~(十五)契約内容の変更
旅行者による任意解除
旅行者の責に帰すべき事由による解除
当社の責に帰すべき事由による解除
(四)旅行代金(十六)~(十七)旅行代金
旅行代金の精算
(五)団体・グループ手配(十八)~(二十二)団体・グループ手配
契約責任者
契約成立の特則
構成者の変更
添乗サービス
(六)責任(二十三)~(二十四)当社の責任
旅行者の責任
(七)営業保証金
 (又は弁済業務保証金)
(二十五)営業保証金(弁済業務保証金)

渡航手続代行契約の部

項目
(一)適用範囲
(二)渡航手続代行契約を締結する旅行者
(三)渡航手続代行契約の定義
(四)契約の成立
(五)守秘義務
(六)旅行者の義務
(七)契約の解除
(八)当社の責任

旅行相談契約の部

項目
(一)適用範囲
(二)旅行相談契約の定義
(三)契約の成立
(四)相談料金
(五)契約の解除
(六)当社の責任

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