旅行業の登録が必要なのはどんな事業?【旅行業の許認可基礎知識】

レジャー観光業と許認可

観光やレジャー系の事業を始める際、その業態によって必要となる許認可は様々です。

宿泊するには旅館業の許可、タクシーや観光バスで人を乗せて走るなら一般旅客運送事業の許可、飲食物の提供をするなら飲食営業許可などなど…事業と必要な許可が明確に結びつきやすいものもありますが、とりわけ事業に対して許可が必要かどうかがわかりにくいのが「旅行業の登録」です。

そこで、本記事では「旅行業」とはつまり一体どんな事業を指すのか、どんなことを事業として行う際に旅行業の登録が必要になるのかを解説していきます。

根拠法令:旅行業法

旅行業とは

まず結論から言いますと、旅行業はホテルや交通機関を手配してパッケージツアーなどを販売するいわゆる旅行会社旅行代理店をイメージしてもらえればわかりやすいかと思います。

みなさんも一度は商業施設や駅ビルに入っている旅行パンフレットなんかを手に取ったことがあると思いますが、これらの会社が「旅行業の登録」を受けている事業者です。逆に言うと、旅行業の登録を受けた事業者でなければこうした商品を販売することはできません。

ここからはもう少し具体的にその定義と範囲を見ていくことにしましょう。

法律的な定義

旅行業の登録については、旅行業法という法律で定められています。旅行業法は旅行者の安全や利便の増進といったことを目的として、旅行業の登録制度を実施し旅行業者の適正な運営を確保するために制定された法律です。

そんな旅行業法では、旅行業務を以下のように定義しています。

第二条 この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
二 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
四 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
六 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
七 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
八 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
九 旅行に関する相談に応ずる行為

旅行業法第2条より

はい、読むのも嫌になりますね(笑)。…ここで大事なことは3つです。「報酬を得て」「事業として(反復継続して)」「一定の行為(旅行業務)を行う」ことということです。

では一定の行為とは何を指すのでしょうか。法律の条文を見ると(一)~(九)に列挙されていますが、おおむね基本的旅行業務・付随的旅行業務・相談業務の3つに集約されます。(参考:観光庁「旅行業の定義」

①基本的旅行業務

〇運送・宿泊のサービス提供契約を締結すること
 →要するにパッケージツアーなどを販売することです

〇運送・宿泊のサービスに関して、代理・媒介・取次をすること
 →例えば航空券の販売旅館やホテルの紹介貸し切りバスを利用したツアーの販売を行うことです

②付随的旅行業務

〇基本的旅行業務に付随してレストランや観光施設の旅行サービス提供契約を締結すること
 →要するにパッケージツアーにテーマパークの入場チケットをくっつけたり、ホテルの予約の媒介ついでに飲食店も手配することなどです。

〇基本的旅行業務に付随して渡航手続き(旅券・査証取得)の代行、添乗業務を行うこと

③相談業務

旅行日程の作成、旅行費用の見積もり等の旅行の相談に応じる行為

旅行業に該当しない行為

以下のような行為は旅行業に該当しないため、旅行業の登録は不要です。

運送機関の代理行為のみ(切符や乗船券の販売のみを行う販売所、航空運送の代理店)

旅行者と直接取引しない場合(添乗員派遣会社、ランドオペレーター)

運送・宿泊以外のサービスのみを手配する場合(遊園地やイベント・スポーツ観戦など入場券のみを販売するプレイガイド、レストランの手配のみ行うなど)

運送事業者・宿泊事業者が自らの事業として行う場合(バス会社の行う日帰りツアー、旅館の行うゴルフパック)
→例えばバス会社が他者の経営する旅館の宿泊を手配した場合は旅行業に該当します。