助手セバスチャン僕の家にはボードゲームが300個あるんです。これをお店の棚に並べれば、もうボードゲームカフェが開けますよね?



300個はすごいですね。ただ、私物を店に持ち込むことと、店の備品として揃えることは別の話です。物件の床がその重さに耐えられるか、どの卓から棚に手が届くか、遊ばれて傷んだゲームをどう補充するか。開業の準備はそこからです。



床の重さ…考えたこともなかったです。ゲームって箱だけだと軽いのに。



1箱は軽くても、数百箱になると話が変わります。今回は物件、レイアウト、仕入れの順で、開業準備の実務を確認していきましょう。
ボードゲームカフェの開業を考え始めると、まず許認可と収支の見通しが気になると思います。飲食店営業許可や深夜営業の扱い、時間料金を中心にした収益の組み立て方については、このサイトでも別の記事で解説してきました。
ところが実際に動き出すと、もっと具体的な疑問が次々に出てきます。どんな物件を借りればよいのか。30席の店に棚と卓をどう置けばよいのか。ゲームはどこから、いくらで、何タイトル仕入れればよいのか。こうした準備の段取りは、一般的な飲食店の開業本にはほとんど書かれていません。



この記事では、物件選び・店内レイアウト・ゲームの仕入れという3つの実務を中心に、開店時のタイトル数の目安、ゲームの管理方法、開業までのスケジュールまでを整理します。金額や広さは一般的な目安で、地域や店のコンセプトによって変わります。
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物件選び|空中階・広さ・設備の条件


ボードゲームカフェの物件探しは、一般的なカフェとは優先順位が違います。人通りや看板の目立ちやすさより、広さ・床・音・水回りといった建物の条件のほうが、開業後の営業に大きく効いてきます。
1階の路面店にこだわらなくてよい理由
ボードゲームカフェのお客様の多くは、SNSや地図アプリで店を調べ、目的を持って来店します。通りがかりに入ってくるお客様は多くありません。そのため、家賃の高い1階の路面店にこだわる必要はなく、駅から歩ける距離にある2階以上の空中階テナントが有力な候補になります。
空中階は家賃が1階の6〜7割程度に収まることも多く、同じ予算でより広い面積を借りられます。広さがそのまま席数と棚の量になる業態なので、この差は小さくありません。ただし、エレベーターのない3階以上の物件は、ゲームの搬入やお年寄り・子ども連れの来店に不便が出ます。階段の幅や、建物の営業時間(夜間に入口が閉まらないか)もあわせて確認しておきましょう。
30席なら25〜35坪が目安
ボードゲームは広げるとテーブルの面積をかなり使うため、一般的なカフェより1席あたりの面積を広く取る必要があります。客席・ゲーム棚・受付・厨房・トイレを合わせて、30席でおおむね25〜35坪が一つの目安です。
20坪を下回ると、30席を詰め込もうとして卓と卓の間が狭くなり、隣のグループの声やゲームの部品が気になる店になってしまいます。逆に50坪を超えると家賃負担が重くなるうえ、スタッフ1人で全卓に目を配るのが難しくなります。最初の店は、2〜3人のスタッフで回せる広さに収めておくと安心です。
床の荷重・防音・トイレの数を確認する
数百タイトルのボードゲームを棚に並べると、棚1本あたりの重さは想像以上になります。古い雑居ビルの場合、重い本棚を一か所に集中して置くことを想定していない床もあるため、管理会社に用途を伝え、棚の配置が問題ないか確認しておくと安心です。
もう一つ見落としやすいのが音です。ボードゲームは盛り上がると笑い声や歓声が上がり、サイコロを振る音も意外と響きます。下の階が住居や静かなオフィスの場合、苦情の原因になることがあります。床にカーペットやマットを敷く、卓の下に防音材を貼るといった対策の余地があるかも見ておきましょう。トイレは、長時間滞在する業態のため、30席規模なら2つあると混雑を避けられます。
飲食店営業許可が取れる物件か
ボードゲームカフェでドリンクや軽食を出すには、保健所の飲食店営業許可が必要です。許可を受けるには、手洗い設備やシンクの数、床や壁の材質、厨房と客席の区画など、自治体ごとに定められた施設基準を満たす必要があります。
居抜き物件でない場合、水回りの配管工事に大きな費用がかかることがあります。物件を契約する前に、図面を持って管轄の保健所に事前相談するのが確実です。施設基準の詳細は、冒頭で紹介した許認可の記事で解説しています。
根拠法令:食品衛生法(e-Gov法令検索)
店内レイアウト|卓・棚・受付の配置
ボードゲームカフェのレイアウトは、お客様が遊びやすいことと、少ないスタッフで店全体を見渡せることの両立が目標です。並列する検討点を、順に見ていきます。
卓は2人席・4人席・6人席を組み合わせる
ボードゲームカフェのお客様は、カップルや友人同士の2人組から、6人以上のグループまで幅があります。4人席だけで揃えると、2人組が4人席を使ってしまい、席数のわりに入れる人数が伸びません。2人席・4人席・6人席を組み合わせ、さらに卓をつなげて大人数に対応できるようにしておくと、空席が出にくくなります。
| 卓の種類 | 天板サイズの目安 | 30席の構成例 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 2人席 | 75cm × 75cm 以上 | 3卓(6席) | カップル・2人用ゲーム |
| 4人席 | 120cm × 80cm 程度 | 3卓(12席) | 最も利用が多い標準卓 |
| 6人席 | 180cm × 90cm 程度 | 2卓(12席) | 大人数・盤面の大きいゲーム |
卓の広さは一般的なカフェより大きく取る
一般的なカフェの2人席は60cm角ほどですが、ボードゲームカフェではこの広さでは足りません。ゲームの盤面にカード、得点表、飲み物まで置くと、一般的なカフェの卓はすぐにいっぱいになります。
飲み物をこぼしてゲームが傷むのは、この業態で最も多いトラブルの一つです。卓の横に飲み物を置く小さなサイドテーブルや、カップを置く専用の台を用意する店もあります。椅子も、長時間座っても疲れにくいものを選びましょう。3時間座る前提の椅子と、1時間で立つ前提の椅子は、同じ値段でも満足度がまったく違います。
ゲーム棚は「見せる棚」と「バックヤード」に分ける
すべてのゲームを客席側の棚に並べる必要はありません。お客様が自由に選べる「見せる棚」には、初心者向けの定番や人気作、新作を中心に並べます。一方、ルールが複雑で説明が必要なゲームや、部品が細かく紛失しやすいゲームは、スタッフが管理するバックヤードの棚に置いておきます。
見せる棚は、箱の背ではなく表面が見えるように並べる「面陳列」の区画を一部につくると、手に取ってもらいやすくなります。人数やプレイ時間、難易度ごとに棚を分けて表示しておくと、お客様が自分たちで選びやすくなり、スタッフの案内の手間も減ります。
受付から全卓が見える位置にカウンターを置く
少人数のスタッフで運営するには、受付カウンターから客席全体が見渡せることが重要です。ボードゲームカフェのスタッフは、会計やドリンクづくりに加えて、ルール説明やゲーム選びの相談にも応じます。どの卓が困っているかが一目で分かる配置にしておけば、呼ばれる前に声をかけられます。
柱や棚で死角ができる物件の場合は、背の高い棚を壁際に寄せ、客席の中央には低めの棚やワゴンを置くといった工夫で見通しを確保します。受付の近くには、利用時間を管理するための伝票や端末、貸し出し中のゲームを確認できる記録の置き場も用意しておきましょう。
ゲームの仕入れ方|問屋・メーカー直取引・輸入・中古


ボードゲームの仕入れ先は、大きく4つに分かれます。それぞれ価格・手間・品揃えが違うため、1つに絞るのではなく、目的に応じて使い分けるのが一般的です。
| 仕入れ先 | 価格の目安 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 国内の問屋・卸 | 定価の6〜7割程度 | 複数メーカーをまとめて注文できる | 取引開始に審査や最低発注額がある |
| メーカー・輸入代理店 | 取引条件による | 新作の情報が早い、物販にも使いやすい | メーカーごとに個別の契約が必要 |
| 海外からの輸入 | 為替と送料しだい | 国内未発売のタイトルを揃えられる | 税金・送料・日本語ルールの問題 |
| 中古品 | 定価の3〜6割程度 | 絶版品を安く揃えられる | 部品の欠品、販売するなら古物商許可 |
国内の問屋・卸から仕入れる
開業時の仕入れで中心になるのが、ボードゲームを扱う国内の問屋(卸売業者)です。複数のメーカーの商品をまとめて注文でき、店舗向けの価格で仕入れられます。取引を始めるには、店舗の所在地や開業予定日、販売も行うかどうかなどを伝えて審査を受けるのが一般的です。
開業前の段階では取引を断られることもあるため、物件が決まった時点で早めに問い合わせておきましょう。店で遊ぶためのゲームだけでなく、店頭で販売する在庫も同じ問屋から仕入れられると、発注と支払いの管理がシンプルになります。
メーカーや輸入代理店と直接取引する
国内のボードゲームメーカーや、海外ゲームの日本語版を扱う輸入代理店の中には、ボードゲームカフェとの直接取引に応じているところがあります。直接取引の利点は、新作の発売情報が早く入ることや、試遊会・体験会といった販促企画に協力してもらえることです。
メーカーにとってもボードゲームカフェは、ゲームを実際に遊んでもらえる貴重な場所です。店で遊んだお客様がその場で購入する流れをつくれれば、メーカーとの関係も深まります。開業後、取り扱いの多いメーカーから順に直接取引を相談していく進め方が現実的です。
海外ゲームを輸入するときの注意
国内で手に入らない海外のゲームを揃えたい場合は、海外の通販サイトや卸から輸入する方法があります。この場合、商品代金のほかに、国際送料と輸入時の消費税、品目によっては関税がかかります。個人で使う目的の輸入には課税額を軽くする特例がありますが、店の備品や販売用として輸入する場合は、この特例の対象外として扱われる点に注意が必要です。税率や課税の扱いは、最新の情報を税関に確認してください。
もう一つの問題は言語です。海外版のゲームはルールブックもカードの文字も外国語のため、多くのお客様にはそのままでは遊んでいただけません。日本語のルール要約を店で用意する、文字の少ないゲームを中心に選ぶといった工夫が必要になります。翻訳したルールを配布・掲示する場合は、著作権の扱いにも配慮しましょう。
中古を仕入れるなら古物商許可を確認する
絶版になった名作や、価格の高い大型ゲームを揃えるには、中古品も有力な選択肢です。ただし、中古品の扱い方によっては古物商許可が必要になります。
前条第二項第一号に掲げる営業を営もうとする者は、営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。以下同じ。)が所在する都道府県ごとに、当該都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。
古物営業法第3条より
店で遊ぶための備品として中古品を買うだけであれば、一般に古物商許可は不要とされます。一方、中古のゲームを仕入れて店頭で販売する場合や、お客様からゲームを買い取る場合は、許可が必要になります。傷んだ備品を中古品として販売するつもりがあるなど、判断に迷う場合は、管轄の警察署に相談しておくと確実です。
根拠法令:古物営業法(e-Gov法令検索)
開店時のタイトル数と揃え方
開店時に揃えるゲームの数は、200〜300タイトルが一つの目安です。1タイトルの平均を4,000〜5,000円とすると、ゲームの購入費だけで100万〜150万円程度になります。
数より「初めての人が遊べるか」を優先する
ボードゲームカフェのお客様の多くは、ボードゲームに詳しい愛好者ではありません。友人に誘われて初めて来た人や、子ども連れの家族も多く訪れます。そうしたお客様が棚の前で迷ってしまうと、満足度は大きく下がります。
開店時は、マニアックな重量級(ルールが複雑で長時間かかるゲーム)を揃えるより、ルール説明が10分以内で終わり、30分前後で遊べる軽めのゲームを厚く揃えるほうが効果的です。愛好者向けの重量級は、常連がつき始めてから、お客様のリクエストを聞きながら増やしていけば十分間に合います。
人数・時間・難易度のバランスで選ぶ
タイトルを選ぶときは、次の3つの軸で偏りがないかを確認します。
- 人数: 2人専用、3〜4人向け、5人以上で遊べるものをそれぞれ用意する
- 時間: 15分程度の短時間ゲームから、2時間以上の長時間ゲームまで幅を持たせる
- 難易度: 初心者向け・中級者向け・上級者向けの割合を、おおよそ5:3:2程度にする
5人以上で遊べるゲームや2人専用のゲームは、思っている以上に不足しがちです。大人数のグループや2人組のお客様に「遊べるゲームが少ない」と感じさせないよう、意識して揃えておきましょう。
人気作は複数個そろえる
定番の人気作は、同時に複数の卓から希望が出ます。1つしかないと、遊びたいお客様を待たせることになるため、特に人気の高いタイトルは2〜3個用意しておくと安心です。複数個の在庫は、そのうち1つが傷んだときの予備にもなります。
ゲームの管理と入れ替え
ボードゲームカフェのゲームは、毎日多くのお客様の手を経る消耗品でもあります。管理の仕組みを開店前に決めておかないと、半年ほどで「部品の足りないゲーム」が棚に増えていきます。
部品の欠品チェックとスリーブ
遊んだ後のゲームは、できるだけスタッフが部品の数を確認してから棚に戻すのが理想です。すべてを確認するのが難しければ、部品の多いゲームだけでも、内容物の一覧表を箱に入れておき、返却時にお客様と一緒に確認する方法があります。カードには透明の保護袋(スリーブ)をかけておくと、汚れや折れを大幅に防げます。紛失した部品は、メーカーの部品請求の窓口で取り寄せられる場合もあります。
遊ばれた回数を記録する
どのゲームがどれくらい遊ばれているかを記録しておくと、仕入れの判断に役立ちます。よく遊ばれるゲームは追加で仕入れ、ほとんど遊ばれないゲームはバックヤードに下げる。記録は手書きの台帳でも表計算ソフトでも構いません。
傷んだゲームは入れ替える
傷みが目立つようになったゲームは、店頭から下げて、新しい在庫と入れ替えます。下げたゲームを中古品として販売する場合は、先ほどの古物商許可の扱いを確認してください。入れ替えにかかる費用は、開業後も毎月の仕入れ予算として確保しておくと、棚の鮮度を保ちやすくなります。
開業までのスケジュール
物件探しから開店までは、おおむね半年を見ておくと余裕を持って準備できます。主な流れは次のとおりです。
STEP1:コンセプトと事業計画を固める(開店の6か月前) 客層、席数、料金体系、飲食の範囲を決め、資金計画を立てます。融資を受ける場合は、この段階で金融機関に相談します。
STEP2:物件を探して契約する(5〜4か月前) 候補の物件について、保健所・消防署に事前相談したうえで契約します。問屋への取引の問い合わせも、物件が決まり次第始めます。
STEP3:内装工事と什器の手配(4〜2か月前) 卓・椅子・ゲーム棚・厨房設備を手配し、内装工事を進めます。防火管理者の選任が必要な規模かどうかも確認しておきます。
STEP4:営業許可の申請と検査(2〜1か月前) 工事の完了に合わせて保健所に飲食店営業許可を申請し、施設の検査を受けます。
STEP5:ゲームの仕入れと登録(2か月前〜開店前) ゲームを仕入れ、部品の確認、スリーブがけ、棚の配置、管理台帳への登録を行います。数百タイトル分の作業には想像以上に時間がかかります。
STEP6:スタッフ研修とプレオープン(1か月前〜開店) スタッフが主要なゲームのルールを説明できるよう研修し、知人を招いたプレオープンで接客や動線を確認します。
ゲームの仕入れと登録作業は、内装工事と並行して進めるのがポイントです。工事が終わってから仕入れを始めると、開店日に棚が埋まらないという事態になりかねません。
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まとめ:準備の質が開店後の運営を楽にする
ボードゲームカフェの開業準備は、一般的なカフェとは違う部分がたくさんあります。物件は路面店にこだわらず、広さ・床・音・水回りを優先して選ぶ。レイアウトは、卓の大きさと種類、棚の分け方、受付からの見通しを意識して組み立てる。ゲームは、問屋・メーカー・輸入・中古という仕入れ先を使い分け、初めての人でも遊べるタイトルを中心に200〜300タイトルを揃える。
いずれも、開店後に直そうとすると大きな手間と費用がかかるものばかりです。特に物件の設備と仕入れ先の確保は、契約や取引開始に時間がかかるため、早めに動き出しましょう。開業準備の段取りをきちんと整えておけば、開店後はスタッフがお客様とゲームを楽しむ時間に集中できます。
※なお、中古のゲームを仕入れて販売したり、お客様から買い取ったりする場合の古物商許可は、営業を始める前に取得しておく必要があります。



なるほど…物件は広さと床、レイアウトは卓の大きさと見通し、仕入れは問屋と中古を使い分ける。僕のコレクション300個は、そのまま並べればいいわけじゃなかったんですね。



コレクションを活かすこと自体は悪くありません。ただ、店に出すなら部品の確認とスリーブがけ、それに管理台帳への登録まで済ませる必要があります。300個分となると、それだけで数週間の作業ですよ。



分かりました!では仕入れの研究のために、まずは毎週末ボードゲーム会を開いて、全部のゲームを遊び直すところから始めます!



それは開業準備ではなく、いつもの週末ですね。









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