助手セバスチャン収支を計算していて気づいたんですが、清掃費ってけっこう大きいですね。これ、自分でやれば浮きますよね?



計算上はそうなりますね。ただ、その計算に自分の時間の値段は入っていますか?



えっ…自分の時間はタダじゃないんですか?



こが落とし穴です。自分でやれば現金は出ていきませんが、その時間で集客や物件の改善ができたかもしれません。しかも直前予約が入った日に他の用事があったら、どうしますか?



…うっ、考えていませんでした。



判断の基準は「安いかどうか」ではなく「続けられるかどうか」です。順番に整理していきましょう。
宿泊事業の収支において、清掃費は変動費の中心を占めます。宿泊者が入れ替わるたびに発生し、稼働率が上がれば上がるほど増えていく費用です。だからこそ「自分でやればコストを削れるのでは」と考える方は多く、実際に開業当初は自分で清掃している事業者も少なくありません。
しかし清掃は、単なるコスト項目ではありません。宿泊者の評価に最も直結する要素であり、レビュー評価は稼働率と単価に跳ね返ります。安く済ませたつもりが、評価の低下によって売上を落としていた、ということも起こり得ます。



この記事では、清掃とリネンの費用相場を整理したうえで、外注と内製をどう判断するか、そして外注する場合にどのような体制を組むべきかを実務的に見ていきます。
清掃・リネンは「コスト」ではなく「稼働率への投資」


まず前提として押さえておきたいのが、清掃には法令上の最低ラインがあるということです。
旅館業法は、営業者に対して次のように定めています。
営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
旅館業法 第4条第1項
そして具体的な基準は、都道府県の条例で定められます。多くの自治体の基準では、敷布(シーツ)、布団カバー、枕カバー、寝衣など直接人に接触するものは、宿泊者1人ごとに洗濯したものと取り替えることとされています。連泊であっても、宿泊者が入れ替われば交換が必要です。「見た目がきれいだから」という判断は通用しません。
民泊についても同様の考え方があります。住宅宿泊事業法第5条は、届出住宅について定期的な清掃その他の衛生の確保に必要な措置を講じることを事業者に義務づけています。
これらは守るべき最低ラインですが、実務上の目標はもっと上にあります。宿泊施設のレビューで最も厳しく見られるのが清潔さだからです。髪の毛が一本落ちていた、水回りに水垢があった。こうした指摘は評価点に直接響き、評価が下がれば予約が減り、価格も下げざるを得なくなります。
つまり清掃費は、削るほど利益が増える単純な費用ではありません。一定水準を下回った瞬間に売上側を毀損する性質の支出です。この理解を出発点に、体制を設計していきましょう。
清掃を外注した場合の費用相場
清掃を専門業者に委託した場合の費用は、施設の規模と地域によって変わります。おおまかな目安は次のとおりです。
| 施設の種類・規模 | 1回あたりの費用目安 |
|---|---|
| 民泊・ワンルーム(35㎡以下) | 5,000〜6,000円 |
| 民泊・1LDK〜2LDK程度 | 7,000〜9,000円 |
| 民泊・一棟貸し(96㎡以上) | 11,000円〜 |
| ホテル・小規模宿の客室(1室) | 2,000〜3,500円 |
※地域・時期・作業範囲によって大きく変動します。必ず複数社から見積もりを取ってください。
民泊とホテルで単価が大きく違うことに気づかれたと思います。これは作業範囲の差によるものです。民泊の清掃は、客室だけでなくキッチン、浴室、洗濯機、共用部までを1組の宿泊ごとに一括で行うため、時間がかかります。一方、ホテルの客室清掃は作業が定型化されており、1室あたりの時間が短く済みます。
ここで必ず確認したいのが、リネン代が料金に含まれているかどうかです。見積書に「基本清掃費5,500円」と書かれていても、実際にはこれとは別に「リネン費600円×人数分」が加算される契約になっていることがあります。4名利用なら2,400円が上乗せされ、実質は8,000円近くになります。
見積もりを比較するときは、単価ではなく「1回あたりの総額」で並べてください。あわせて、追加料金が発生する条件(ゴミの量が多い場合、汚損がひどい場合、深夜早朝の作業、当日依頼など)も確認しておきましょう。
リネンはどうする?購入・レンタル・清掃込みの3択
リネンの調達方法は大きく3つあります。それぞれ性質が異なるので、比較して選んでください。
| 方式 | 費用の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 自前で購入して洗濯 | 初期費用と洗剤・光熱費。1セット数千円で購入し繰り返し使用 | 小規模で稼働が少ない、自分で運営している、施設に洗濯設備がある |
| リネンサプライ(レンタル) | 6点セット600円程度〜、シングル1台660円程度。1室あたり月6,000〜10,000円が目安 | 稼働が読める、品質を安定させたい、洗濯の手間を省きたい |
| 清掃会社にリネン込みで委託 | 清掃費に組み込み(人数分加算のことが多い) | 窓口を一本化したい、複数物件を持っている |
自前購入は、単価だけ見れば最も安く済みます。ただし洗濯の時間がボトルネックになります。チェックアウトからチェックインまでの数時間で、洗って乾かして畳むところまで終わらせるのは、家庭用の設備では現実的ではありません。予備のセットを複数用意して回すことになり、その分の初期投資と保管場所が必要になります。
リネンサプライは、常に洗濯済みのものが届き、使用済みは回収してもらえる方式です。品質が安定し、繁忙期でも枚数を確保できるのが利点です。費用は単価だけ見れば割高ですが、洗濯にかかる時間と設備を考えれば妥当な水準といえます。
清掃込みでの委託は、管理の手間が最も少ない方式です。清掃業者がリネンの手配まで行うため、事業者側は在庫を意識せずに済みます。その代わり、内訳が見えにくくなり、コストの最適化がしづらいという面があります。
判断のポイントは、洗濯という作業を誰の時間で処理するかです。自分の時間が余っているなら自前購入、時間を売上につながる作業に使いたいならレンタル、というのが基本的な考え方になります。
あわせて読みたい:民泊は儲かる?収支シミュレーションと利回りの考え方を解説
外注か内製か—判断の分岐点は「回数」と「距離」
結論から言うと、判断を決めるのは月あたりの清掃回数と、施設までの距離の2つです。
まず、数字で比較してみましょう。民泊のワンルームで、1回の清掃に2時間かかると想定します。
| 方式 | 1回あたりのコスト | 内訳 |
|---|---|---|
| 外注(リネン込み) | 約7,000円 | 清掃費+リネン費 |
| 自分で行う | 約3,800円相当 | 洗濯・消耗品800円+自分の時間2時間(時給1,200円換算)+移動30分 |
| パートを雇用 | 約3,700円 | 時給1,300円×2時間+交通費+社会保険等の間接費 |
数字だけ見れば、内製が圧倒的に有利です。年間150泊稼働で1回あたり3,300円の差なら、年間で約50万円になります。
しかし、ここに落とし穴があります。月15回の清掃では、人を雇っても成立しないのです。月15回×2時間は月30時間、パートの月収にすると4万円程度です。この条件で安定して働いてくれる人を見つけ、定着させるのは容易ではありません。急に来られなくなったときの代替要員もいません。
そして自分でやる場合の本当のリスクは、変動への対応力です。直前予約が入った日に別の用事がある、体調を崩した、繁忙期に連日チェックアウトが重なる。こうした場面で代わりがいないと、予約を断るか、清掃品質を落とすかの二択になります。どちらも売上を毀損します。
判断の目安を整理すると、次のようになります。
- 月の清掃回数が30回未満:外注が合理的。人を雇っても稼働が足りず、自分でやるには変動リスクが大きい
- 月の清掃回数が30〜60回程度:外注を基本としつつ、閑散期のみ自分で対応するなどの併用も選択肢
- 月の清掃回数が60回以上:内製化の経済合理性が出てくる。専属のスタッフを安定して回せる水準
たとえば10室規模の小規模ホテルで稼働率70%なら、月におよそ210室分の清掃が発生します。1室1時間として月210時間、パート1.3人分の仕事量です。この規模になると、外注との差額は月30万円前後に達し、内製化を検討する意味が出てきます。
もう一つの軸が距離です。施設が自宅から遠い場合、内製という選択肢は事実上ありません。移動時間が乗るため採算が合いませんし、緊急時にも対応できません。遠隔地の物件を運営するなら、清掃も含めて現地の業者に委託する前提で収支を組んでください。
運営体制の作り方—外注しても丸投げにはできない


外注を選んだとしても、体制づくりが不要になるわけではありません。品質を保つための仕組みは、事業者側で用意する必要があります。
第一に、チェックリストの整備です。何をどこまでやるのかを明文化し、業者と共有してください。水回りの仕上げ方、アメニティの補充位置、備品の配置、家電の初期状態。これが曖昧だと、担当者が変わるたびに仕上がりがぶれます。写真付きの完成状態の見本を用意しておくと、認識のずれを大きく減らせます。
第二に、報告の仕組みです。清掃完了後に室内の写真を送ってもらう運用にしておくと、遠隔でも状態を把握できます。破損や忘れ物があった場合の連絡ルートも決めておきましょう。
第三に、ルールの事前設定です。連泊時の清掃をどうするか、追加料金が発生する条件は何か、当日依頼はどこまで受けてもらえるか。トラブルの多くは、この取り決めがないまま運用を始めることから生じます。
第四に、業者の二重化です。1社にしか依頼できない状態は、繁忙期や急な欠員のときにリスクになります。メインの委託先とは別に、いざというときに頼めるもう1社を確保しておくと安心です。あわせて、繁忙期は早めに枠を押さえておきましょう。清掃業者も同じ時期に忙しくなります。
第五に、モニタリングです。清掃品質の劣化は、事業者が気づくより先にレビューに表れます。清潔さに関する評価点や口コミの文言を定期的に確認し、変化があれば早めに業者と話し合ってください。放置すると評価の回復に時間がかかります。
備品やアメニティの在庫管理についても、誰が発注し誰が補充するのかを決めておく必要があります。「気づいた人が補充する」という運用では、いずれ必ず切らします。
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まとめ:清掃体制は開業前に決めておく
清掃とリネンについて、押さえるべき点を整理します。
第一に、清掃は削れば削るほど得をする費用ではないこと。シーツ類を宿泊者ごとに交換することは法令上の要請であり、それ以上に清潔さは評価と稼働率に直結します。
第二に、外注か内製かは「回数」と「距離」で決まること。月30回未満なら外注、60回以上なら内製化を検討。遠隔地なら外注一択です。そして内製を検討する際は、自分の時間を必ず時給に換算して計算してください。
第三に、外注しても丸投げにはできないこと。チェックリスト、報告の仕組み、ルールの事前設定、業者の二重化、レビューによるモニタリング。この5つを整えて初めて、外注は機能します。
そして最も重要なのが、これらを開業前に決めておくことです。稼働が始まってから業者を探すと、繁忙期に枠が取れない、条件を比較する時間がないといった状況に追い込まれます。物件が決まった段階で複数社に見積もりを依頼し、料金だけでなく対応範囲と連絡体制を比較しておきましょう。
なお、費用相場は地域や時期によって大きく変動し、衛生基準の詳細は都道府県の条例によって異なります。この記事は一般的な考え方を整理したものですので、実際の基準については管轄の保健所に、費用については地域の業者にご確認ください。清掃体制が固まれば、運営の不安はかなり小さくなります。



なるほど、自分の時間もコストなんですね。しかも急な予約に対応できないリスクまで考えると、最初は外注が無難ということか。



そうですね。規模が大きくなって回数が積み上がってきたら、そのときに内製化を検討すればいいんです。順番が大事ですよ。



分かりました!では清掃を完全に不要にするため、宿泊者にチェックアウト前の清掃をお願いする「セルフ清掃プラン」を作ります。1泊500円引きでどうでしょう



シーツの交換は事業者の義務ですし、次のお客様がその仕上がりを見て評価するんですよ。








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