新規の事業企画や開業準備段階・日々の運営においても、最新のトレンドや顧客動向を追うことはとても大切です。
現代は膨大な情報に溢れているため、自社に適切な情報を洗い出し整理するのは簡単ではありません。また、新規の開業にあたってはこれらのマーケティング活動にそこまで投資費用をかけられないという現状にある事業者も多いことと思います。
そこで、経済産業省が提供しており誰でも無料で利用できるマーケティングツール「RESAS」について、観光業ではどのような使い方ができるのかを紹介したいと思います。
RESASとは?
RESAS(リーサス)は、内閣官房および経済産業省が提供する地域経済分析システムです。会員登録など不要で、誰でも無料で使えます。
各行政機関からは日々様々な統計情報が発表されていますが、多くは数値ベースのデータとして提供されており、このような数値の羅列から自分が知りたい情報を取り出すのは一苦労です。また、そもそもこうしたデータから一体何がわかるのかが不明という方も多くいることと思います。
RESASではこれらの各種統計データを、日本地図上へわかりやすく表示することで、より多くの人が統計情報を元にした客観的な地域の状況を把握することができるようになると共に、これらの情報を日々の事業活動へと活かすことで、地域経済の発達を促進することを目的としています。
RESASを利用してわかること
2025年7月現在、RESASでは「マーケティング」「観光」「人口」「産業構造」「地域経済循環」「農林業漁業」「医療・介護」の7つのカテゴリから地域の経済状況を分析できるようになっており、観光業界に限らず幅広い業種で参考となるデータが提供されています。
メニューが多いからこそ、「何ができるのかよくわからない…」で終わってしまいがちですが、観光業界では「観光」メニューを見るだけでも十分事業活動へ活かすことができると思います。
具体的には、
- 自社の施設やサービスが所在する地域にどんな顧客層が訪れているのか
- 関連施設や競合施設がどれだけ存在しているのか
がわかります。
RESASの使い方
ここからは簡単にRESASの使い方を紹介します。
①観光→観光地分析を選択

基本的にはこの「観光地分析」で色々なことがわかります。
②地域の指定

「表示する地域を指定する」のメニューで自分が調べたい地域を市区町村まで指定します。ここでは千葉県鴨川市を選んでみました。
③観光地の表示

「観光地の条件を指定する」のメニューで「観光地表示」をONにすると、表示したエリア内の観光地がマップ上へ表示されます。アイコンにカーソルを合わせると詳細表示も可能です。

このような季節イベントも表示されるようになっています。例えばこの地域で飲食店を開業する場合には、このような季節イベントに合わせたメニュー開発などの集客施策が考えられますね。
すべての観光地タブから、テーマパークや自然スポットなど特定のジャンルの施設だけに表示を絞ることも可能です。
④飲食店やコンビニの表示

このエリアに存在する飲食店やコンビニといった生活関連施設は、「事業所の条件を指定する」メニューから表示ができます。

飲食店を表示させてみました。駅周辺に集中していますが、海沿いに店舗があることがわかります。観光案内にも役立ちますね。
⑤ターゲット層が訪れているエリアを調べる

「滞留人口メッシュの条件を指定する」メニューから、期間、性別、年代、推定居住地を選択しメッシュ表示をONにすると、マップ上に透過マスが出せます。
例えば、「20代~40代の女性向けの体験スポットを開設する」という事業を企画する場合、赤やオレンジの近くを開業場所として検討することで、効率よく集客ができそうです。
⑥特定エリアのデータを確認する

マップを拡大し、特定のメッシュをクリックすると「このメッシュのグラフをみる」と出てくるのでクリックしてみましょう。するとこのエリアの各種データが確認できます。




例えばこの地域で飲食店を開業する場合、同一市町村以外の滞留人口が8割以上を占めるので、鴨川市名物のものを提供すればウケがいいかもしれません。一方で、滞留人口の時間帯推移を見ると昼時がごっそり減っているので、ランチタイムの営業をしても集客が見込めない可能性が高い、などと仮説を立てるのに役立ちます。
RESASの注意点(使いづらいところ)
ここまで使い方を紹介してきた通り、RESASは直感的に操作ができるツールでありながら、様々な情報が得られるとても便利なツールです。
一方で、利用時には少し使いづらいところもあります。
広域分析に向いていない
RESASのマップ表示ではある程度拡大した状態でなければ有効になりません。また、施設やメッシュ表示できるのは
の操作をしたときに表示されている画面内に限られます。
したがって、ある程度調べたい地域が特定されてから使うのに向いているツールであり、例えば「千葉県で女性観光客が多い地域は?」といった広域的な分析はできません。
既に営業を開始している方や、これから新規に開業する方でもある程度開業地の目途がついている人向けのツールとなっています。
データが最新でない場合がある
観光業界ではトレンド情報を追うことも重要であるため、直近のデータが知りたいと思うことも多いと思いますが、RESASは政府統計が発表されてからシステムに随時反映される為、参照できるデータが古い場合があります。
観光データは2025年時点で2024年のものを表示できるため、比較的鮮度のいい情報ですが、他のデータでは2023年など少し時間が経っているものしか表示できないメニューもあります。システム利用時にはまずはいつのデータかを確認するとよいでしょう。