観光業で起業するときに知っておきたい産業構造と各業種が担う役割について

一口に観光業界と言っても、含まれる業種は多岐にわたります。皆さんは「観光業」と言われたときに、どんな仕事を想像しますか?

実は業種分類の基本となる日本標準産業分類には、観光業という業種は存在しません。テーマパークスタッフや旅行代理店のカウンターセールスなど接客業のイメージも強いことから、一般的にはサービス業として認識されることが多いですが、観光業界には旅行業やレジャー業・娯楽業を始めとして、宿泊業、飲食業、運輸業、更には土産品などの製造業まで包含され、極めて複合的な産業形態であると言えます。

このように複数の業種が含まれる一方で、事業者にとっては自社の売上を伸ばし事業を拡大することが第一の目的ですから、「観光業界」という大枠をすっ飛ばして各々の立ち位置や視点のみで事業計画や意思決定を行ってしまうこともあります。

しかしながら、改めて自分の事業を観光産業の一部として俯瞰的に捉えてみると、関連業種を包括した事業計画の立案地域との連携は、観光業のどの業種においても必要不可欠な施策となります。

目次

観光業界の重要性

観光業を単に「お客さんを楽しませる」という一消費者的な考え方をしていると気づきにくいのですが、観光業は地方誘客や国外からの訪問客の増加による経済波及効果は高いため、国や行政機関によって観光業を重要な産業として位置づけていることは多いです。特に地域外から人を呼び込み、利益を得て地域を支えるという経済構造は、他の産業と異なった利点と言えるでしょう。

出典:観光庁観光地域振興課「我が国観光産業の現状と今後の展望」より

行政単位で考えると、ホテルや交通、飲食店や観光施設が連携して事業を行う方が、地域内で消費が高まると共に地域の観光地としての利便性やブランド価値は向上するため、事業者同士の連携が望まれるのはもちろんですが、これは個々の事業者にとってもメリットが大きいのです。

例えばいくらロケーションがいいからといって、全く交通機関が整備されていない場所に宿泊施設や飲食店を開業したところで集客は難しいのが現実です。しかし事業者同士の連携でこうした場所にも複数の施設を誘致し交通利便性が高まれば、それぞれの利益増大にもつながります。

したがって、観光業界において事業計画を考える際には、そもそも観光業にはどんな業種が関連してくるのか、自社の事業のどんな場面で関わりが出てくるかといったことを意識することが大切です。

観光業に含まれる業種とは

では観光業にはどんな業種があるのか、整理して見ていきましょう。

交通・運輸業

遠方との移動手段となる飛行機や船・電車やバスといった公共交通機関、そして公共交通機関が整備されていない場所への移動手段となるタクシーなど、地域へのアプローチ地域内の移動といった役割を担っており、観光業においてもインフラ的な重要な存在となっています。

宿泊業

旅先での滞在拠点となるホテル・旅館・民泊・貸別荘などが該当し、観光客が安心して休息し、地域の魅力に触れるための拠点としての役割を担っています。滞在時間が長い分、地域のホスピタリティを最も体感しやすい業種であり、サービス品質は観光地全体の満足度に大きく影響します。また、宿泊を伴うことで観光消費が地域に広く波及するため、観光経済を支える中核的存在となっています。

飲食業

レストラン・食堂・カフェや居酒屋・専門店など、地域の食文化を提供する業種で、観光体験の中でも特に記憶に残りやすい「味の魅力」を担います。旅行者にとっては食事そのものが目的となることも多く、地産食材や伝統料理、地域ならではのサービスは観光地のブランド形成にも直結します。観光消費額への寄与度が高く、地域の一次産業とも密接に連動する重要な分野です。

観光施設業

テーマパーク・美術館や博物館・動植物園・温泉施設・展望施設など、観光客が「目的地として訪れる場所を提供」する業種です。観光地の主要な魅力を形成し、集客力の核といえる存在で、地域の歴史・文化・自然・娯楽をわかりやすく提示します。また、季節イベントや展示企画などによって再訪を促し、観光地としての持続的な集客力向上にも寄与します。

体験プログラム提供事業者

アクティビティ事業者・ガイドツアー運営者・農漁業体験施設・クラフト体験工房などが含まれ、参加型の観光価値を提供します。地域の自然・文化・産業を主体的に体験できるプログラムは、観光動機を高めるとともに、滞在時間の延長と消費機会の拡大に大きく貢献します。多様化する旅行ニーズに応じ、観光地の魅力を深く伝える役割を持つ成長分野でもあります。

観光土産品業

土産物店・特産品販売店、・道の駅の物産コーナー・加工品製造業者など、旅の記念や地域の魅力を「モノ」として提供する業種です。観光の思い出を形に残すとともに、地域産品の販路拡大やブランド発信に寄与します。また、土産品購入は観光消費の重要な構成要素であり、地域経済への波及効果も大きい分野です。

KC行政書士事務所
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