近年Youtubeやドラマなどの影響から注目を浴びたキャンプ。特に2020年~2022年頃にかけて全国至る所にキャンプ場やグランピング場が誕生し、人気のキャンプ場は全然予約が取れない状況だったそう。
しかし、2024年には大手アウトドアメーカー「スノーピーク」が純利益99.9%減を発表したことや、リサイクルショップにはキャンプ用品が多く出回るようになったことがたびたび話題にあがり、その「ブーム」が下火となりつつあることを裏付けるニュースが取りざたされるようになりました。現在キャンプ場を運営している方、これからキャンプ場を開業したいと考えていた方にとってはショックな話題かと思います。
こうした情報を目にすると、キャンプ業界は縮小しているという結論になってしまいそうなところですが、実際のところどうなのでしょうか。そこで、キャンプ市場は現在どのような状況にあるのか、統計データなど4つの指標を元に分析し、今後キャンプ市場はどうなっていくのかの予測についてまとめました。
①キャンプ場に関心を持つ人のボリュームは減少している
まず、キャンプ場に関心を持つ人はピーク時に比べてどれくらい減っているのかを見てみましょう。
下記はGoogleトレンドで「キャンプ場」について調べたグラフです。Googleトレンドではウェブ検索数を元に人気度の推移を視覚化できます。
こちらは2004年から2025年までの人気度ですが、キャンプ場の繁閑差を綺麗に反映したグラフになっていますね。4月に1度目のピークとなり、8月に最大のピークを迎え、12月に底となり、それを毎年繰り返しているのです。
頂点となっているのは2020年8月。そこから毎年のピーク時典の人気度は1年ごとに1~2割程度減少していき、2024年にはコロナ禍よりもその人気度は低くなっているのです。2025年は更に減少する可能性が高いでしょう。
一方で、底となる12月の人気度はコロナ前よりも高い水準にあることがわかります。以上より、次の傾向が予測できます。
・コロナ禍のキャンプブームを経て、「キャンプは夏に楽しむもの」から「冬でも楽しめるもの」と捉える人が現れ、キャンプの楽しみ方が変化したこと
・GoogleトレンドはWEB検索のボリュームを元にしているため、SNS等の人気度は考慮されない。よってInstagramやTikTokなどのキャンプの情報発信と親和性の高いプラットフォームで情報を得る人が増えている可能性があること
②統計データから見ると大きな減少は見られない
ここからは、観光庁が発表している旅行・観光消費動向調査のデータを元に分析していきます。
②-1宿泊者数
まずはキャンプ場に宿泊している人の宿泊者数です。2018年~2024年まで、下図のグラフのように推移しています。

①のWEB検索の人気度とは傾向が異なり、2018年以降他業態と比べてもそこまで大きくは変動していないように見られます。
この結果から、以下の2点が特徴として挙げられるでしょう。
・他業態がコロナ禍以降人数を増やしている(コロナ前の水準に戻っている)のに対し、キャンプ場はコロナ前後で特徴的な変化は見られないこと。→相対的には減少しているという見方もできる。
・閑散期(グラフの底部分)の宿泊者数は増加していること。
②-2消費額
次にキャンプ場に宿泊した人々の旅行消費総額です。

こちらも宿泊者数と概ね同様の傾向が見て取れます。
・キャンプ旅行の消費額はブーム時の2022年よりは下がっているが、2024年は2023年を上回っているため、消費額自体は「ブームの終了」の影響を受けているとは考えづらい。
②-3消費単価
最後にキャンプ場に宿泊した人の宿泊消費単価です。

統計期間によってデータのばらつきが大きく、あまりこれといった傾向は見て取れません。しかし、キャンプ場含めたどの業態も2021年を境にやや高単価にシフトしていると言えます。これは昨今のインバウンド需要によるホテル宿泊費の高騰を受け、宿泊業界全体として宿泊費が底上げされている可能性が考えられます。
・他業態(貸別荘など)ほどの高単価を期待することは難しい
まとめ:キャンプブームは本当に終了した?
以上、いくつかの統計データを紹介しながら近年の傾向を見てきました。
もちろんこれらのデータがすべての現実を正確に反映している、とは言いませんが、おおよそ下記のことがキャンプ場業界の現状として言えるのではないでしょうか。
①2020年~2022年にかけてキャンプブームはたしかに存在した
②キャンプブームではとりわけ「キャンプをやったことないからやってみたい」といったライト層が多かった
③ライト層はYoutubeやテレビで取り上げられる人気キャンプ場に集中した
④キャンプブームによってキャンプ場は開業ラッシュとなり、供給過多になった
⑤キャンプがライト層に「趣味」として定着することはなく、ブーム前の「レジャー」としての立ち位置に落ち着いた
⑥「キャンプは夏に楽しむもの」というイメージから「冬の楽しみ方もある」というイメージに代わり、1年間の需要がやや平準化された
⑦「キャンプブームが終了した」からといって、キャンプ場業界が大きく縮小しているわけではない
よって、今後キャンプ場の経営にあたっては以下のような方針が求められると考えます。
①アクティビティや自然体験などレジャー性を取り入れ体験価値を訴求する
②これまで需要のなかった冬キャンプの楽しみ方を積極的に提案し、冬でも快適な滞在が可能な設備を導入する
③SNSでの情報発信を強化する
参考データ:旅行・観光消費動向調査
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